「優勝と日本一に向けて彼の力は必要となる。期待は大きい」 「キャンプで競争した中で、ポジション、打順を決める。力を見…

「優勝と日本一に向けて彼の力は必要となる。期待は大きい」

「キャンプで競争した中で、ポジション、打順を決める。力を見せてくれる選手を優先して使う」

 広島の緒方孝市監督が長野久義について語った。人間性の高さから、引退した新井貴浩のような精神的主柱を期待する声が多い。しかし現場レベルでは戦力として、チームのために実力を出してくれるものと確信があるようだ。



1月23日にマツダスタジアムで入団会見を行なった長野久義

 リーグ4連覇、そして悲願の日本一へ。広島の2019年、勝負のシーズンが始まった。生え抜きの主力だった丸佳浩のFA移籍などもあり、オフの話題も独り占めした感がある広島。キャンプインを前に行なわれた合同自主トレ。人的補償で入団決定した長野の姿はなかったが、ドラフトで4球団競合の末に入団した小園海斗など若手を中心に多くの選手が汗を流していた。

 小園以外にも潜在能力の高い選手が多く、緒方監督を筆頭にコーチ陣が集結し、春季キャンプでの一、二軍メンバーの振り分けなど、まずは第一段階に取り掛かっていた。

 まさに横一線。緒方監督の言葉ではないが、競争を勝ち抜いたものに試合に出る資格がある。そして、その選手が結果を出すことに期待する。

 長野といえども例外ではない。チームリーダーとしての役割も任せたいのだろうが、選手としてのパフォーマンスにも大きな期待がかかる。キャンプインを目前に控えた大野練習場でカープ首脳陣に長野について話を聞いた。

「何年か前に宮崎のフェニックスリーグで、日本シリーズ前に巨人が調整で来ていて、その時に打撃練習をしている長野を見ました。やっぱりレベルが全然違う。とくに少しギアを上げて打ち始めると打球が違う。鋭さや(ボールを)捉える正確さ、飛距離……すべてにおいてトップレベルでした。本人や巨人関係者に断って、打撃ゲージのうしろで広島の若手選手に見学させてもらったのを覚えている」

 浅井樹三軍統括コーチは、実際に目の前で見た長野の打撃練習が忘れられないと言う。

「長野の印象は昔から変わらないけど、本当に打撃センスの塊という感じ。もちろん才能というか、持って生まれたものもあるんだろうけど、リストの強さなんて球界でも飛び抜けているんじゃないかな。こればかりは真似できるものではないですからね。

 ベテランの域に達して、衰え始めている部分はあるかもしれない。でも、それを補うだけのものがあると思う。技術だったり、経験だったり……。それに巨人のいいものを広島に持ってきてくれると思っている。なんといっても球界一の伝統を誇る強いチームで、そこでずっとやってきた選手ですから、大きな化学反応を起こすのは間違いないと思います」

 山田和利一軍内野守備・走塁コーチは、自身の専門となる守備、走塁の分野から語ってくれた。

「近年は二軍コーチをやっていたから、直接見る機会は少なかったけど、映像などで見ると以前と変わらず、すばらしい選手だと思います。シートノックなどを見ていても、肩は全盛期と変わらないほど強いし、足もしっかり使えている。

 打撃に関してはここ数年、春先が悪かった。でもチームが変わればそういうのは過去のことで、まったく関係でしょう。キャンプ、オープン戦とやっていくなかで、チームの状況がある程度わかってくると思います。丸が抜けたとはいえ、広島には三拍子揃った外野手がたくさんいるので、最初は左投手の時だけ出ることも考えられる。とはいえ、長野を獲得したのは戦力として期待しているからで、決してチームのまとめ役としての役割を期待しているわけではないと思います」

 現役時代はNPB通算138勝106セーブを挙げ、投手の最高栄誉である沢村賞も獲得した佐々岡真司一軍投手コーチは、ピッチャー目線で長野について語ってくれた。

「誰が見てみすばらしい選手であることに間違いはない。確実性もあるし、右方向にも打てて、足もあるから盗塁もできる。とくに『ここぞ』という場面で結果を残している印象があります。これは投手として本当にイヤな選手ですね。

 あとは、狙い球を絞って、決め打ちするイメージがある。だけど、状況に応じて打ち方を変える時もあるというか、追い込まれてからうまく拾ったり……そういう意味で、センスの塊ですね。戦力としても大きいし、そういう選手と一緒にプレーできるのは、投手、野手とも大きい。すべてにおいてプラスに働くと思いますよ」

 倉義和二軍バッテリーコーチは、現役時代に捕手として対戦経験があり、最も間近で長野のバッティングを見てきたひとりだ。

「きっとみんな同じ印象を持っているんだろうけど、本当にイヤな打者。バットコントロールがすばらしく、右方向にも長打が打てる。とくにチャンスの時に回ってくると、いつも打たれるような気がして、細心の注意を払っていたのを覚えています。

 ケース打撃がうまいというか、状況判断や対応力に優れている。捕手としていつも気にしていたのは打席での立ち位置。ホーム寄りに立ったり、下がったり、投手寄りに立ったと思えば、捕手側に寄ったり……打席ごとというか、時には1球ごとに変えてくる。それを必ず確認する必要がありました。臨機応変さはすごかったですね」

 迎祐一郎一軍打撃コーチは、長野を知るのはこれからだと強調する。

「正直、試合中にそこまで長野をしっかり見たことはないですね。だから、これからしっかりと見て、コミュニケーションをとって、長野という選手をもっと知らないといけない。先発だけでなく、代打での出場もあるでしょう。適材適所を見極めるもの我々の仕事ですから。

 でも、まったく心配はしていません。実力者であり、人間性もすばらしいことは十分わかっている。対戦相手に巨人がひとつ増えるだけで、他球団の投手へのアプローチは変わらない。コンディションを含め、自分のペースで実力を出してほしいですね」

 コーチ陣の話を聞くと、”まとめ役”というよりは”選手”として期待値が高いのがわかる。本当の長野を知るのはこれからという感じではあるが、揺るぎない信頼感があるのは伝わってくる。長野の技術力、経験力、そして人間力。広島サイドからするとそれだけでも大きな戦力を手に入れたのは間違いない。

 広島と巨人は3月29日の開幕戦でぶつかる。2019年はいつも以上に熱いシーズンとなりそうだ。