1月19日に行なわれたウルバーハンプトン・ワンダラーズとのプレミアリーグ第23節で、レスター・シティのFW岡崎慎司は2試合連続となるベンチ外となった。 レスターとの契約期間が残り半年となった岡崎が、今冬の移籍期間で退団を希望しているのは、…
1月19日に行なわれたウルバーハンプトン・ワンダラーズとのプレミアリーグ第23節で、レスター・シティのFW岡崎慎司は2試合連続となるベンチ外となった。
レスターとの契約期間が残り半年となった岡崎が、今冬の移籍期間で退団を希望しているのは、報道で広く伝えられているとおり。ここまで、リーグ最下位に沈むハダースフィールド・タウンからオファーを受けたが、所属先のレスターはこれを拒否した。英メディアによると、カーディフ・シティとフラムからも関心を示され、残留を争うクラブを中心に複数のクラブから打診がある状況だ。
移籍を希望している岡崎慎司はまたもベンチ外となった
そんな岡崎を2試合連続となるメンバー外とした理由について、クロード・ピュエル監督は次のように話した。
「シンジ? この前の試合でメンバー外となったのは、選手間の競争によるもの。しかし、今回はケガを抱えていた。小さなケガで、股関節を痛めた。重症ではない」
今回は股関節のケガを理由にベンチ外にしたというが、状況が状況だけに、どうしても言葉どおり受け止めることはできない。はたして、本当に負傷しているのか? そんな疑念すら湧いてしまった。
事実、試合前の定例会見で、岡崎の去就について質問を受けた指揮官は、「シンジに満足している。彼はチームの一員だ」とコメント。重要なメンバーと強調する一方で、ケガに関する言及はなかった。
その真偽のほどはさておき、レスターが岡崎の放出を渋るのには理由がある。ひとつは、レスターのシビアなマネジメントだ。戦力外の選手であっても安価で売却しないポリシーを貫いており、実際、今季リーグ戦で2試合しか出番のないポルトガル代表MFアドリエン・シウバは飼い殺しが続いている。つい先日も、A・シウバの父親がレスターの姿勢に激怒し、遺憾の意を表明したばかりだ。
フランス発の報道によれば、ようやく今冬の市場でフランスのボルドーへレンタルに出される模様だが、古巣のスポルティング・リスボン(ポルトガル)やフェネルバフチェ(トルコ)のほか、イタリアやスペインからも打診を受けていた。複数のオファーがありながら「レンタル」で放出が決まりそうなのは、おそらくレスターが設定する移籍金額にオファー額が届いていないからだろう。
もうひとつの理由は、岡崎が「奇跡のリーグ優勝」を成し遂げたメンバーであること。
英ブックメーカーが「レスター優勝」に5001倍という超高倍率をつけながら、奇跡のリーグ優勝を成し遂げたのは3年前。そのなかで、岡崎は中心選手として戴冠に貢献した。しかし、レスターは優勝メンバーであることを理由に、安易には手放したくないのだという。岡崎は明かす。
「レスターとしては、(自分が)優勝メンバーということが一番にあるのかもしれない。(チームには)簡単に出さないという考えがある。優勝したメンバーはなかなか(難しい)」
繰り返しになるが、岡崎とレスターの契約は今シーズン終了時まで。今夏にはフリーでクラブを移ることができる。しかも、今季リーグ戦の先発数はたったの1試合だ。
また、レスターは今冬、イングランド2部で9ゴール&7アシストを記録したイングランドU-21代表ハーヴェイ・バーンズをレンタル先のWBAから呼び戻した。バーンズはトップ下やセカンドストライカー、左FWとしてプレーできるアタッカーで、前線の駒数は十分に揃った。
それゆえ個人的には、優勝を成し遂げた功労者である岡崎の退団を認めるべきだと思うが、ここまでのところレスターは首を縦に振っていない。おそらくレスターとしては、優勝に導いた貴重な戦力であるからこそ、安価で譲渡したくないのだろう。そんな意向が透けて見える。
振り返れば、優勝メンバーのひとりであるFWレオナルド・ウジョア(現メキシコ・パチューカ)も、レスターを退団する際に揉めに揉めた。
リーグ優勝を果たした翌シーズンの開幕前、ウジョアは「新たなFWを獲得しない」と当時の指揮官であるクラウディオ・ラニエリ監督と約束を交わしていた。しかし、フタを開けてみれば、アルジェリア代表FWのイスラム・スリマニ(現フェネルバフチェ)を獲得。クラブ史上最高額となる2900万ポンド(約41億円)の移籍金を記録し、ウジョアは出番を失った。
そこで、ウジョアは冬の移籍期間で退団希望を明らかにし、サンダーランド(イングランド)やアラベス(スペイン)からオファーも受け取った。しかし、レスターはいずれも拒否。強制的に残留させられたウジョアは、「ラニエリ監督に裏切られたし、クラブに失望している。2度とレスターのためにプレーしない」と、ツイッターで怒りをぶちまける事態に発展した。ウジョアが移籍したのは、それから1年半後のことだ。
厳しい状況に置かれたのはウジョアだけではない。同じく優勝メンバーであるMFアンディ・キングも、昨夏に戦力外通告を受けながら、いまだに移籍先が見つかっていない。サポーターの人気も高い優勝メンバーだからこそ、納得のいくオファー額が届かないかぎり手放すつもりはないのだろう。
それゆえ、岡崎のケースも市場閉幕日までもつれる可能性が高い。ベンチ入りさせていることを理由に”戦力”と見なし、放出を認めないシナリオもありえる。
岡崎は言う。
「いろいろこういう時期は難しいですね。この1月が終わるまでの時期は、ちょっと自分も難しいメンタル(=精神状態)でやらなきゃいけないなという感じです。レスター側に『頼むよ』って言う立場で今はいるしかない。思いを伝えながらやっていきます」
市場閉幕日は1月31日。果たして、ここから事態はどう進展していくか。