写真:水谷隼(木下グループ)/撮影:ラリーズ編集部<天皇杯・皇后杯 平成30年度全日本卓球選手権大会(一般・ジュニアの部)丸善インテックアリーナ大阪>20日、全日本卓球選手権大会の男子シングルス決勝で水谷隼(木下グループ)が大島祐哉(木下グ…

写真:水谷隼(木下グループ)/撮影:ラリーズ編集部
<天皇杯・皇后杯 平成30年度全日本卓球選手権大会(一般・ジュニアの部)丸善インテックアリーナ大阪>

20日、全日本卓球選手権大会の男子シングルス決勝で水谷隼(木下グループ)が大島祐哉(木下グループ)をゲームカウント4-2で破り、2年ぶり10回目の優勝を果たした。

Tリーグで同じチームに所属し、今大会でもダブルスを組んでいる水谷と大島は、日本一を決める全日本決勝にふさわしい好ゲームを展開し、集まった5,000人を超える大観衆からの拍手喝采を浴びた。

各ゲームの詳細と、試合後の両選手のコメントを紹介する。

全日本卓球2019 男子シングルス決勝 水谷隼vs大島祐哉 各ゲーム詳細




写真:大島祐哉(木下グループ)/撮影:ラリーズ編集部

第1ゲーム、水谷は大島得意のチキータを狙い打ち、3球目攻撃を仕掛ける。対する大島はバックサイドに来るボールに対して積極的に回り込み、威力あるフォアハンドで決めに行く戦術を選ぶ。

水谷、大島は共に台から下がってラリーをするのが得意なプレーヤーであるが、大島はパワータイプ、水谷は攻守ともにバランスの良いオールラウンダーである。水谷の多彩で、変幻自在なプレーに多くのプレーヤーがハマってきた。水谷が足を使ってフォアハンドで攻める大島をどう攻略するのかに注目が集まった。

序盤、大島の威力あるフォアハンドを防ぎきれない水谷に対し、大島がリードを広げていく。水谷は台の近くでは大島のボールを止められないと判断したか、台から離れて大島のボールを拾い、点差を詰めていく。大島の痛恨のサーブミスもあり、1ゲーム目からデュースに突入した。

その後お互いにサーブからのポイントを取り合うも、大島が最後にバックハンドドライブを決め、ゲームを先取した。

第2ゲーム、大島のフォアハンドが火を吹き、水谷は引き続き劣勢に。大島は張本を倒した勢いもあってか、動きのキレが抜群に良い。しかし、水谷も得意のストップで大島の強打を防ぎ、空いたコースに意表を突くバックハンドで得点するなど、水谷らしいゲーム運びでこのゲームを取り返した。

第3ゲーム、水谷は大島のタイミングで外すような緩急をつけたバックハンドドライブで得点を重ねる。しかし3-3で水谷が珍しくサーブミスをすると、気持ちを切り替えた水谷が台の近くでカウンターを決める。劣勢になりそうなここぞという場面で戦術転換を見事に決める水谷に、大島も表情が歪む。

その後も水谷は大島のチキータを狙ってフォア前(フォアサイドの浅めのコース)にサーブを集め、そのチキータを狙ってバックサイドのボールをフォアハンドで回り込んで攻撃する。水谷が一気に攻めに回ってこのゲームを取り、ゲームカウント2-1と優勢に立つ。

第4ゲーム、水谷はレシーブではストップ(台の上で2バウンドする短いレシーブ)、サーブでは大島にチキータをさせるフォア前へのサーブを徹底し、大島の思い切った攻撃を封じ込める。大島の回転量の多いサーブをストップするのはトップ選手でも至難の業だが、台上処理に長ける水谷は当たり前のように決めてしまう。このゲームも11-6で取った水谷が優勝まであと1ゲームと迫った。

第5ゲーム、大島は水谷のバック側にボールを集めていたが、フォアサイドやミドル(相手の懐付近)にもボールを散らし、水谷の鉄壁の守りを崩そうとする。再びフットワークを活かした攻撃が決まり出した大島は5-1と点差をつける。大島は徐々に水谷のブロックのコースを予測し、厳しい攻撃が決まるようになる。

8-4と大島がリードするも、水谷が見事な回り込みフォアハンドなどで8-7と追い上げたところで大島がタイムアウト。お互いに木下グループ所属であるため、ベンチコーチはおらず両選手とも静かに作戦を練る。

タイムアウト明けのポイントは、大島が水谷の甘くなったサーブに対し、大島がフォアハンドでストレートに攻撃し9-7とする。水谷も粘るが、最後は不運なネットインのボールを大島にスマッシュされ、大島がゲームを取り返した。

第6ゲーム、水谷が大島のフォアハンドドライブが来る場所を予測し、わずかな時間で回り込んでフォアハンドでカウンターを見せ4-0とリードする。その後はロングサーブを中心に試合を組み立て、大島のバックに徹底してブロックしてチャンスを作ったり、低く短いストップから大島のミドルを攻め、ワンサイドゲームとなる。

9-3から2本を取られ、9-5となったところで、水谷が流れを断ち切るべくタイムアウトを取る。大事なタイムアウト直後のポイントを水谷が取り10-5とすると、最後は水谷の短いストップが大島のミスを誘い、水谷が優勝を決めた。

水谷と大島の決勝直後のコメント




写真:水谷隼(木下グループ)/撮影:ラリーズ編集部

水谷は「去年決勝で敗れて、次は勝ってみせてくれと多くの人から言われていた。だから勝つために練習した1年だった。1回優勝するだけでも大変だが、積み重ねて10回優勝することが出来た自分を褒めたい。今年30歳になる年だが、同期の選手たちと『若手の壁になろう』と話している。若手も成長してきているが『張本だけじゃなくて水谷も倒そう』となると思うので壁でいられるようにしたい」と日本卓球界を代表する水谷らしい自覚あるコメントを残した。また「今年で最後の全日本にしたい。来年は出場しない」とも明言した。

一方の敗れた大島は「自分の台上が崩れてしまい、すごく悔しい一戦。長いボールを警戒してストップ処理の際に台に入って行けなかった。(水谷は)回り込んだ時のコースの厳しさ、打たれた時の待ち方がすごかった」と悔しさをにじませると、水谷が来年出場しないことについては「出ないと聞いたのは初めて。水谷さんが頑張ってきたのを見ていたので、自分も来年頑張って上に上がりたい」と力強くコメントした。

全日本卓球2019 男子シングルス決勝(スコア)




写真:水谷隼、大島祐哉(木下グループ)/撮影:ラリーズ編集部

大島祐哉(木下グループ)2-4 水谷隼(木下グループ)
13-11/6-11/7-11/6-11/11-9/5-11

文:ラリーズ編集部