絶好調とはいかないまでも、粘り強く戦った錦織圭 昨年は、右手首のけがの回復が間に合わずに全豪オープンの欠場を余儀なくされた錦織圭だったが、29歳になって迎えた2019年シーズンのツアー開幕戦、ATPブリスベン大会で初優勝して最高のスター…



絶好調とはいかないまでも、粘り強く戦った錦織圭

 昨年は、右手首のけがの回復が間に合わずに全豪オープンの欠場を余儀なくされた錦織圭だったが、29歳になって迎えた2019年シーズンのツアー開幕戦、ATPブリスベン大会で初優勝して最高のスタートを切った。

「(ブリスベンで)すごくいいテニスができていました。それが一番自信になるので。優勝したこともよかったですけど、それよりも、やっぱり内容がすごくよかったというのが、今週(オーストラリアンオープンの週)さらに戦っていくうえで、とても大きな自信になってくれると思う。その自分のテニスの調子を落とさないように、準備して1回戦に臨みたいですね」

 こう語っていた錦織は、メルボルン入りしてからも調子のよさを見せていて、錦織のツアーに帯同するマイケル・チャンコーチとダンテ・ボッティーニコーチも、いいテニスができていると語っていた。

「圭はいいプレーをしていますね。今年もブリスベンでいいスタートが切れました。(昨年12月の)ハワイ(でのエキシビションマッチ)でもいいプレーができていました。いいスタートが切れたので、その過程で自信を深めることができています。いい形で試合に臨めると思います」(チャンコーチ)

「いいスタートを切れて、とてもうれしいです。彼のメンタルもフィジカルもとてもいいですし、いいテニスをしています。オフシーズンもいい時間を過ごすことができていた」(ボッティーニコーチ)

 おそらく多くの人が、全豪オープンで錦織圭がいいスタートを切ると期待していただろう。もちろん錦織本人も、そう考えていたはずだ。だが、初戦は予想に反して思いがけず苦戦を強いられた。

 今回、錦織はフアン・マルティン・デル・ポトロ(5位、アルゼンチン)が右ひざのけがによって欠場したため、第8シードに繰り上がった。

 迎えた1回戦では、カミル・マイクシャク(176位・ポーランド)と初対決。予選を勝ち上がったマイクシャクは、初めてグランドスラム本戦の舞台に立った選手だ。

「錦織のようないい選手とプレーするのは初めてでした。グランドスラムデビューで、自分にとっては悪いドローで、タフな試合になることはわかっていました。圭はトップ10にいて、ツアーで優れた選手のひとりです」

 こう試合後に語ったマイクシャクは、試合開始から果敢に打っていき、時速200kmを超えるファーストサーブやフラット系のバックハンドストロークの威力がすばらしく、錦織を大いに苦しめた。

「自分のプレーが合っていたのかなと感じていたので、あれだけのプレーをしてきたのはすごいなと思いますね。あのフラットのボールは、持ち上げるのが大変でした。バックのダウンザラインとかディフェンスもよかった」(錦織)

 もちろん錦織にもたびたびチャンスがあったが、それを逃がすシーンが多かった。第1セット第5ゲームに2本、第2セット第1ゲームに2本、第6ゲームに2本、ブレークポイントがあったが、いずれもブレークには至らなかった。さらに、第2セットタイブレークでは、錦織にセットポイントが1回あったものの、リターンミスでチャンスを逃し、錦織の2セットダウンとなった。

「チャンスを取りきれなかった。自分が先に、ワンブレーク、ツーブレークできていたら、展開は変わっていたと思いますけど……」(錦織)

 その後、第3セットの序盤から、マイクシャクの両足や右腕にけいれんが起こり始めた。第1セットも第2セットも、自分より格上の錦織に対して120%のプレーで挑んでいき、感情的にも高ぶっていたという。錦織との試合のなかで、レベルの高いテニスに慣れていない体がけいれんを起こすのは当然の成り行きだった。

 一方、「絶対ポイントをあげないよう意識していた」という錦織は、集中を切らさずにプレーし続けた。2セットオールになり、第4セットで錦織が、2回のブレークに成功して3-0となった時点で、マイクシャクがリタイア。

 結局、3-6、6-7(8)、6-0、6-2、3-0、相手の途中棄権によって、錦織は辛くも初戦を突破した。

 1回戦の前にチャンコーチは、いつもどおりの厳しい目で錦織を見守る姿勢を崩さずに、慎重な言葉を選んでいた。

「(圭に)期待をあまりかけ過ぎないで、1試合1試合できることをやらせていくことです。今の圭のプレーを見守るべきだと思っています。ドローのあまり先を見過ぎることは、リスクが高い。どんどん変化していますからね。だからこそ、1試合ずつ戦っていくべきなのです。チームとしてもハードに取り組んで、試合に向けて調整していきたいです」

 いくら錦織が好調であっても、対戦相手あってのテニスであり、グランドスラムの初戦、初めての対戦相手などの条件が重なれば、厳しい試合になることは十分にある。1回戦で勝利を手にすることができたことを、まずはよしとすべきなのだろう。

 2回戦で錦織は、イボ・カロビッチ(69位、クロアチア)と対戦する。カロビッチとの対戦成績は錦織の3勝2敗で、2016年USオープン4回戦で錦織がストレートで勝利した時以来の対戦となり、現在錦織の3連勝中だ。

「久しぶりの対戦にはなる。あまり好きな対戦ではないですけど、彼も調子がよさそうなので、ワンチャンスで負ける可能性はある。リターンだったり、自分のサービスゲームでしっかりプレーできるよう意識したい」

 こう話す錦織は、これまでグランドスラム4大会では全豪オープンで一番安定した成績を残しており、マッチ24勝8敗、ベスト8に3回(2012、2015、2016年)進出している。今回こそ、全豪オープン初のベスト4以上の進出を狙いたい錦織にとって、2回戦でどれだけ修正をして、好調なテニスを再び披露できるか注目したい。