日本学生氷上競技選手権(インカレ)最終日。男子7、8級フリースケーティング(FS)にはインカレ初出場の石塚玲雄(スポ1=東京・駒場学園)が登場。女子7、8級FSでは中塩美悠(人通4=広島・ノートルダム清心)がインカレ最後の演技を披露した。…

 日本学生氷上競技選手権(インカレ)最終日。男子7、8級フリースケーティング(FS)にはインカレ初出場の石塚玲雄(スポ1=東京・駒場学園)が登場。女子7、8級FSでは中塩美悠(人通4=広島・ノートルダム清心)がインカレ最後の演技を披露した。女子7、8級ショートプログラム(SP)10位の永井優香(社2=東京・駒場学園)は体調不良のため棄権した。

 2週間前の全日本では披露できなかったFS、『ポエタ』。冒頭のトリプルルッツがシングルになるも、その後、トリプルサルコー―シングルオイラー―ダブルサルコーのコンビネーションを着氷。石塚の武器のひとつである美しいフライングキャメルスピン、そして情熱的なコレオシークエンスでプログラムを盛り上げる。しかし、イナバウアーからのダブルアクセル―トリプルトーループで転倒、その後のループ、フリップでも転倒が続き、悔しいインカレデビューとなった。それでも、表現面には着実な進化が見られる。終盤のステップシークエンスで見せた、テンポの速い曲に合わせてひとつひとつ正確に音を拾うターン、指先や目線にまで神経が行き届いた踊り。これまでも評価されてきたスケーティングの伸びやかさに加え、激しくもしっかりコントロールされた表現は、石塚の武器になっていくだろう。ミスはあれど、「今までで一番集中」し、最後まで「絶対諦めないぞ」という気持ちで臨んだという今回の演技。自分ではこの雰囲気はとても好きなので、今回は良い演技ができなかったんですけど、来年はもっと良い演技をして表彰台に乗りたいと思います。インカレについては、「自分ではこの雰囲気はとても好きなので、今回は良い演技ができなかったんですけど、来年はもっと良い演技をして表彰台に乗りたいと思います」と語る。さらなる成長に注目だ。


声援に応える石塚

 「美悠ちゃんがんばー!」共に戦ってきた仲間達に見送られ、リンクインした中塩。早稲田大学代表として挑む最後のFSが始まった。冒頭、前日のSPではミスが出たトリプルトーループ―トリプルトーループの連続ジャンプを見事着氷。その後、フリップとループに乱れが出るも、中盤のトリプルサルコーを成功させ、「次のステップへの出港」を表現する、明るく力強い曲に合わせてのステップシークエンスへと繋ぐ。続くダブルアクセルからの3連続ジャンプも着氷。トリプルサルコーは惜しくも転倒し、同一ジャンプの繰り返しとなってしまったが、終盤のダブルアクセルは成功させる意地を見せた。いくつかジャンプのミスがあったものの、それ以上に「滑りとか表現の面でも全然不完全燃焼な演技になってしまった」と振り返った。最後のインカレという独特の緊張感もあったのだろう、「SPもFSももう一回やり直したいなって思っちゃう後悔の残る演技だったのでそこはすごく悔しい」「空振ってたな」と悔しさを口にした。しかし、例え納得のいく出来ではなくとも、今シーズンの中塩の演技には胸を打つものがある。「踊れば踊るほど楽しい」と語った鈴木明子さんの振付、そのひとつひとつを噛みしめるような丁寧かつ感情のこもった表現。曲調の変化に合わせ切ない表情と柔らかい動きで見せるコレオシークエンス、そして最後の美しいレイバックスピン。涙を流す観客の姿もあった。「フィギュアで学ばせてもらったことはたくさんあるし、今後の人生も含めてフィギュアをやってきて良かったとはもちろん思うし、一筋縄ではいかなかったからこそ、習得したいという、簡単に習得できない分、努力もするし考えるし、その分根性もついて知恵もついたかなと思います」と語るスケートへの思いが演技に表れているのだろう。次の試合に向けては、「点とかジャンプとか関係なく私の色が出せないと本当に悔しい、今回の大会で本当に思ったので、悔いの残らないように前向きに練習したいと思います」と意気込んだ。刻々と近づく集大成の舞台で、中塩はどんな景色を見せてくれるだろうか。


表情豊かに表現する中塩

(記事 小出萌々香、写真 尾崎彩)

結果

▽男子7、8級

石塚玲雄 14位 150.48点(FS 16位 95.02点)

▽女子7、8級

中塩美悠 13位 139.80点(FS 13位 91.26点)

コメント

石塚玲雄(スポ1=東京・駒場学園)

――きょうの演技を振り返っていかがでしたか

一見すごくボロボロで、悪い演技って見られてしまいますし、自分でもそう思います。でも自分の中では今までで一番集中して、失敗はしたんですけど、トリプルジャンプに対して一番自信をもって挑めたプログラムでした。

――転倒があって後半疲れが出ることはありましたか

いや、今までの試合よりは全然疲れていなくて、むしろ粘れたと思います。それは多分今までの中で一番自信を持ってジャンプを跳びにいけたから、体力の消耗も少なかったんだろうなと思います。

――スピンについてはいかがでしたか

最後のスピンはもうちょっと速く回りたかったんですけど、全体的にSPも含めてレベルを結構落としているので、その改善に努めたいと思います。

――最後まで気迫のこもった演技でした

アスリートとして最後まで諦めないというのは当然なので、絶対諦めないぞという気持ちでやりました。

――初インカレを終えて、いかがでしたか

インカレの雰囲気は少し国体と似ているんですけど、自分ではこの雰囲気はとても好きなので、今回は良い演技ができなかったんですけど、来年はもっと良い演技をして表彰台に乗りたいと思います。

――リンクサイドでの応援はいかがでしたか

早稲田大学の人だけではなくて、色々関わりのある人が全員応援してくれていたので、本当に嬉しかったです。

――来週の早慶戦に向けて一言お願いします

実は早慶戦では今のプログラムを滑らせていただこうと思っています。リベンジという言い方はあえてしないですけど、全日本を終えてから新しい自分へ向けてのスタートはきっているので、どんどん3(回転)-3(回転)を入れていったりとか、どんどん高みを目指してそれを当然にできるようにしていきたいと思います。

中塩美悠(人通4=広島・ノートルダム清心)

――きょうの演技を振り返っていかがでしたか

きょうは自分の強みというか、自分が全然出せなくて、ジャンプとか要素とかではなくて滑りとか表現の面でも全然不完全燃焼な演技になってしまったかなと思います。

――全日本選手権からの調整はどうでしたか

全日本が終わったあとに本当は靴を変えようと思ってたんですけど、タイミングがちょっと合わなくて変える機会を逃してしまってでもまだいける範囲だったので大丈夫と思って、1回全日本終わって実家に帰ってお正月は西宮で1人で過ごして、インカレに向けて調整していて、ちゃんと調整はできてたと思うんですけど、どうしてこうなっちゃったのか今ちょっと悩み中です。

――早大の看板を背負っての大会は今回が最後でしたがその点はいかがでしたか

英未ちゃん(山野井、国教4=千葉・渋谷教育幕張)が2年半ぶりに出たり、優香ちゃんも体調が悪い中SPできれいなルッツを跳んだりとか玲雄くんも頑張ってて、そういうのを見てて私も頑張らなきゃと思ってたんですけど、早稲田の4年生として皆に良い所を見せたかったんですけど、それができなくって情けないなって思います。

――3人で臨めたとについては

それぞれ良い面もあったし、悔しい思いもしたと思うんですけど、大学で3人で出ることってなかなかできないことで、それが3人が揃ったということだけでも私はすごく嬉しくって、英未ちゃんの挑戦とか、優香ちゃんもきっと挑戦だったと思うし、そういうのがあった分、自分もちゃんとやらなきゃなと思ったんですけど、色んな面で空振ってたなと思いました。

――きのうのSPを振り返っていかがでしたか

それこそSPは気合が入りすぎちゃってほとんどステッピングアウトとかになっちゃって3-3も練習できれいに降りてたはずなのに入らなくってSPの時からなんで本番で決まらないんだろうという疑問があった分、FSにもずっとそれを引きずってたかなと思います。

――緊張はありましたか

そうですね、学生の試合だから周りの空気というか、わーっと盛り上がっているところに私も一緒になって盛り上がっちゃって興奮しちゃってなんか空振ってたかなというのはあります。

――FSのジャンプを振り返っていかがですか

きょうは6分(練習)の時から全体的に焦ってるってコーチに言われてて、全然締まらなくって、でも焦ってるって言われてどうしたらいいんだろうって、落ち着かなきゃいけないんだけど跳べない分さらに焦っちゃってプログラムも全体的に下を向いて滑っていた感じでジャンプとかは置いておいてそういう面で悔しいですね。

――演技後早大の選手で集まっていましたが、どんな話をしましたか

玲雄くんになんで練習通りできないんだろうって言って、なんでですかねーっていう話を二人でしてましたね。

――インカレに向かってきた時の気持ちと、インカレを終えての気持ちを教えてください

インカレに来る時は、それこそ3人で出られる試合だし、宿泊施設も皆一緒でなんか大学の試合っぽいなってすごく楽しみだなという感じで来たんですけど、行きは帰省ラッシュと被っちゃって色々大変だったんですけど、すごく前向きにポジティブな感じで3人揃うし、頑張ろうという気持ちで来たんですけど、今ふりかえったら最後のインカレなのにSPもFSももう一回やり直したいなって思っちゃう後悔の残る演技だったのでそこはすごく悔しいです。

――大学生活4年間を振り返るといかがですか

大学1年生のときにアメリカに行って新しい環境でそこでも英語の環境とかジェイソン(ブラウン)との出会いとかジェイソンのコーチとの出会いとかたくさん学ぶことはあって、2年生になってコーチが変わって拠点も変わってそこから学ぶことも沢山あって、大学4年間は正直上手くいかないことがすごく多くて試合できちんとジャンプも決まらなかったり怪我で棄権しちゃったりすごく試合の面では上手くいかないことが多かった4年間だったんですけど、その分毎試合学ぶことは多くて、できなくなった分そこからどうしようって考えるようになったし、コーチともよく話すようになったし、成長できたかなと思います。

――早大に入って良かったことは

早稲田は他の大学と違って部練とかそんなになくて、部で集まってやることも全然ない、それぞれ頑張って試合で集まってみんなで高めていこうっていう、そういうフリーなところがすごく良くて、皆さんそれぞれ大人で、今回も体調不良の子もいたし、色々ハプニングはあったけど、それも一人一人こなしていける、自立してるなって、変なことで揉めたりしないから、そこの面で人として皆尊敬できるなというか、自立してるなって、そういうチームに入れて良かったなって思います。

――会場に来ていたファンの方も、どうしても来れなかったファンの方も皆さんすごく応援していたと思うのですが、そういう方の存在はどのように感じていますか

今季引退シーズンになって余計に全日本の花の数とか手紙の数とか物凄い量で、今まで伝えられなかったけど最後だからお手紙を書きましたとか、そういうお手紙も多くて、私の知らないところで私を応援してくださる方がこんなにもいるんだなって思って、それを体感したシーズンだったので、一人の人間がこんなに大勢の人から応援されるなんてことなかなかないじゃないですか。だからそういう機会をいただけたことにすごく感謝してるし、それを実感出来たことがすごく幸せでした。

――フィギュア人生を振り返ると

フィギュアスケートは最初は遊びだったんですよ、最初はただ楽しくてジャンプが跳べて嬉しくて、試合に出てメダルがもらえて嬉しいな、みたいな、最初はすごくいい思い出ばっかりだったんですけど、予選落ちたこともあるし、上手くいかなかったときもあるし、チーム内でも一つのリンクで何人も滑るチームの中でも色んなこともあって辞めたいと思ったことは正直何回もあるし、なんでやってるんだろうって思った時も正直あるし、お母さんに当たっちゃったりとかコーチにあたったりとか、後輩達にも迷惑をかけた時もあったけど、フィギュアをしていなかったら今の自分はないし、今思うとフィギュアのない人生は考えられないんですけど、すごく難しい競技だと思うんですよ、簡単には習得することのできない競技だと思うので、難しい分すごく華やかで、すごく華やかで綺麗に見えるんだけど本当は靴擦れとか、ドロドロしているというかぐちゃぐちゃなんですけど、それを隠して皆きれいな衣装で笑顔で滑ってるのが根性がついたというか、フィギュアで学ばせてもらったことはたくさんあるし、今後の人生も含めてフィギュアをやってきて良かったとはもちろん思うし、一筋縄ではいかなかったからこそ、習得したいという、簡単に習得できない分、努力もするし考えるし、その分根性もついて知恵もついたかなと思います。

――将来に生かされることは

4年間大学最後まで続けてアスリートがどれだけ苦しいのかそれが身を持ってじっかんできたので、そんじょそこらの根性じゃやってられないなと思います。一つの競技を続けるって本当にしんどいことで、でもしんどい分いいこともたくさんあるし、良い経験もできるんですけど、アスリートをすごく尊敬します、わたしは。

――最後に国体に向けての意気込みをお願いします

ちょっといまは気分も落ちてるんですけど、いつまでもくよくよ悩んでてもしょうがないので、次に向けて本当にエキシビみたいに点とかジャンプとか関係なく私の色が出せないと本当に悔しい、今回の大会で本当に思ったので、悔いの残らないように前向きに練習したいと思います。