Perfecta Naviをご覧の皆様、後閑信一です。少し遅くなってしまいましたけれども、新年あけましておめでとうござい…

Perfecta Naviをご覧の皆様、後閑信一です。
少し遅くなってしまいましたけれども、新年あけましておめでとうございます!今年もどうか宜しくお願い致します。

今回は昨年末のKEIRINグランプリ2018(静岡競輪場)を振り返ってみたいと思います。
戦前から近畿4車の鉄壁ラインを、関東2車と単騎の3人がどう攻略するか?が焦点となっていましたが、考えられたのは至ってシンプルな展開。平原康多(埼玉87期)選手や清水祐友(山口105期)選手が近畿ラインを分断するのか?果たして脇本雄太(福井94期)選手のスピードに飛びつけるのか?そんな想像を膨らませていたのではないでしょうか?
グランプリの前夜祭も欠席して、ナショナルチームの合宿に参加していた新田祐大(福島90期)選手と脇本選手がさらにパワーアップしているのではないか?日本の寒い冬に対して、アメリカのマイアミは気温25〜27℃と、温暖で身体を作るには最高の環境。それを考えると、新田選手と脇本選手はどれだけパワーアップしているのだろうか?と、私は恐ろしさにも似た気持ちになっていました。それは昨年の新田選手が同じ時期に、マイアミ合宿後に日本の競輪を走った時の桁外れ、次元の違うスピードを見ていたからです。一昨年〜昨年の年明け間もない頃は“新田一強時代”とまで言われ、四日市G1全日本選抜競輪を優勝しました。そのことを思い出すと今回も?と、そのイメージは拭い去ることは難しいもの。そして、新田選手と共に、合宿をしていた脇本選手は普通に追走しているだけでも離れてしまう先行力。その後ろを平原選手が取り合う展開になれば、完全に後ろは離れてしまい、単騎の3選手が浮上してくるというように考えられた競輪ファンも多かったのではないでしょうか?


前回も書きましたが、私はKEIRINグランプリ2018の記者会見場(前夜祭)に足を運び、直接、選手の表情を見て、生の声(コメント)を聞きました。その中で清水選手の「見せ場を作ります!」という言葉からは、今回はあくまでも自力での見せ場だというように感じました。ただ、グランプリ初出走の清水選手があの大舞台で、取り乱さずに仕掛けることができるかどうかが鍵。となると、私の中では脇本選手の2番手を狙いに行く可能性があるのは平原選手。全てが研ぎ澄まされている浅井康太(三重90期)選手はそれが崩れた間に隙を突いて、しなやかで鋭い決め脚で決着というシーンも思い浮かびました。
いわき平G1オールスター競輪、8月から実戦(競輪)を離れている新田選手は展開に関係なく、とにかく一発に懸ける世界基準の走破壊力!
近畿ラインは鉄壁!脇本選手が主導権を取り、三谷竜生(奈良101期)選手、村上義弘(京都73期)選手、村上博幸(京都86期)選手が出切ってしまったら、他のラインは簡単に太刀打ちすることはできない。
そんなことを考えながら、どのようなドラマが生まれるかという期待も抱いて、私はKERINグランプリ2018の号砲を待っていたのであります。

KEIRINグランプリ2018の号砲が鳴りました。大歓声の中、まずは単騎の4番車・新田選手がスタートで前を取りました。続いて7番車・平原選手を8番車・武田豊樹(茨城88期)選手がマークで、関東2車を形成。その後ろに単騎の2番車・浅井選手。その後ろには同じく単騎の6番車・清水選手が続いています。そして、後方で待機するのは3番車・脇本雄太選手率いる近畿4車の鉄壁ライン。脇本選手の後ろには1番車・三谷選手、その後ろには見守るように9番車・村上義選手、最後尾には兄の背中を目で追う5番車・村上博選手という並び。


記者会見で近畿4車の並びが発表されてから、数多くの競輪ファンの方々はあらゆる展開の推理をしたことだと思います。三谷選手が内枠の1番車ということは近畿4車が前受けになるだろうというのが大方の展開予想。そこでレースを崩しに行くのは誰なのか?平原選手なのか?清水選手なのか?あるいは浅井選手なのか?その際、脇本選手は引くのか?突っ張るのか?三谷選手が1番車を選択したことで、展開予想はさらに盛り上がったことは間違いありません。

少し話しはレースから離れますが。
競輪はスタートからゴールまで何が起こるか分からないドラマが展開され、ギャンブルの最後は競輪だ!と、昔から競馬、競艇、オートレースを楽しんだファンの方はそうおっしゃられます。そう、最後は人間!人間が自分の身体で自転車を走らせて操作し、そこに感情や思いも入ることで生き様も映し出されるところはまさに人生の縮図。競輪を知っていれば、人生を楽しみながら学ぶことができると、かつてはよく言われたものでした。
ただ、最近の風潮としては先頭で風を切り、後ろの人を勝たせるのは損!なんでそんな事をするの?度々、ファンの方々からそのような質問を受けます。それは先行する選手が自分の戦い方として最も得意なことをしているから。そして、強烈な向かい風の中、先頭で頑張ってくれている先行選手がいるからこそ後ろについたラインの選手は援護に回っているのです。私はそのように答えるようにしています。だけど、中には得意でもなさそうな選手が捨て身で先行する事もありますよね?という質問には、日本人でいう“粋”という言葉が当てはまるのではないかと説明。それは稀なことなので、たくさんのレースを観戦しているコアなファンの方々はそこまでも推理してしまう。競輪とは奥の深い人間の気持ちまで読み抜くゲーム。ですから、車券が当たった時は日常生活ではなかなか味わえない快感を得られるし、配当金もついてくる!そのように語り尽くせないくらい競輪の魅力を知っているファンの方々が数多くいらっしゃることに、現役選手を引退してからも感謝の気持ちでもいっぱいであります。

さて、話題をレース戻します。
周回を重ね、残り2周でウズウズしていたように6番車・清水選手が動きました。これによって他に動きがないかを確認しながら前受けの4番車・新田選手の横に並びます。グランプリ初出場で、清水選手のあの落ち着き、本当にこの先が末恐ろしいくらい楽しみな選手です。


新田選手は清水選手に抑えられたので後方へユックリ自転車を下げていきます。平原選手は脇本選手のスパートに合わせて猛アタック!スピードの合った位置を捌こうとしているようでした。しかし、打鐘で清水選手が先頭にいて、飛びつくと思いきや自転車を下げて4番手に入ろうとしたのです。平原選手は自転車を下げてきた清水選手が邪魔となり、飛びつくことができませんでした。この打鐘のタイミング、清水選手をかわして平原選手が先頭にいられなかったことが関東2車の敗因だと、私は思っています。また、その結果、最終第2センターで無理に内側に車輪を差して、落車という結果も招いてしまった。でも、自転車も壊れ、最後まで痛みに耐えてボロボロになりながらもゴールを目指した平原選手の姿からは感動と力を貰えました。


2着の浅井選手も後方8番手から落車を避けてよく伸びていました。あの浅井選手がバランスを崩しながらゴールしたことから、自分自身の力を出し切ったことが存分に伝わってきました。
3着の新田選手も8月以来の日本での競輪となる中、巧みに最後方から落車を避けながら捲り上げました。ゴール後に浅井選手がバランスを崩して、新田選手に接触した際も微動だにせず浅井選手を跳ね返したシーンから体幹の力が上がっていることも感じました。


村上義選手は不運の落車に終わりましたが、あの走りを見ると2019年もまだまだ活躍が期待できますし、弟の村上博選手も追い込み型が不遇の時代でも結果を出してくるところはさすがの一言です。


脇本選手の番手から優勝した三谷選手の年間獲得賞金額は2億5,000万円を超え、史上最高額となりました。本当におめでとうございます!はい、遂に登り詰めました、デビューからガムシャラに近畿勢を引っ張ってきた攻めるレースの積み重ねが実りましたね。


先行すれば「安全に!」・「力がつき!」・「恩が売れる!」、この成功の三拍子は私も現役中はやってきたことでもありますので、是非、若手選手には採り入れてもらいたいものです。
そして、最後に私から言えることは……今回のグランプリメンバーのみんなのことはデビュー当時からから見てきましたが、最初から強い選手なんて誰もいませんでした。ただ、レースを走る中で悔しさだったり、楽しさだったりを積み重ね、自分自身の糧にしてきたのです。そして、競輪に魅せられ、人生と魂の込め方が変わって来たことで強くなったのだと。

さぁ、今年の競輪界はどのようなドラマが生まれるのでしょうか?だいぶ気が早いですが、年末のKEIRINグランプリ2019(立川競輪場)も今から楽しみで仕方がありません。

【略歴】


後閑信一(ごかん・しんいち)

1970年5月2日生 群馬県前橋市出身
前橋育英高在学時から自転車競技で全国に名を轟かせる
京都国体においてスプリントで優勝するなどの実績を持つ
技能免除で競輪学校65期生入学
1990年4月に小倉競輪場でデビュー
G2共同通信社杯は2回(1996年・2001年)の優勝
2005年の競輪祭で悲願のG1タイトルを獲得
2006年には地元・前橋でのG1レース・寛仁親王牌も制した
その後、群馬から東京へ移籍
43歳にして2013年のオールスター競輪で7年ぶりのG1優勝
長きに渡り、トップレーサーとして競輪界に君臨
また、ボスの愛称で数多くの競輪ファンから愛された
最後の出走は2017年11月10日のいわき平F1
年末の12月27日に引退を発表
2018年1月に京王閣、立川、前橋でそれぞれ引退セレモニーが行われた
現役通算2158走551勝
引退後は競輪評論家やタレントとして活躍中
長女・百合亜は元ガールズケイリン選手(102期)である