2019年に入り、ウィンターブレイク中のドイツの各クラブは、それぞれのキャンプ地に入った。中東に行くクラブもあれば、アフリカに行くクラブもあるなか、ドルトムントは恒例となっているスペインの避寒地・マルベージャでトレーニングを開始してい…

 2019年に入り、ウィンターブレイク中のドイツの各クラブは、それぞれのキャンプ地に入った。中東に行くクラブもあれば、アフリカに行くクラブもあるなか、ドルトムントは恒例となっているスペインの避寒地・マルベージャでトレーニングを開始している。スペインリーグへの移籍願望を表明している香川真司も、ひとまずドルトムントでキャンプインしている。

 香川にとって、スペインでプレーするというのは特別なことのようだ。年始には、改めてこんな話をしている。



スペインで行われているドルトムントのキャンプに合流した香川真司

「ほんとに小さい頃からの夢ですし、それは常々変わりはないので、成し遂げないといけないと思っています。そこでどう活躍するかは、僕はもうイメージがすでにできています。それを具体化して、ピッチで表現できるために頑張りたいです」

 確かに香川には、セレッソ大阪時代など、夢はバルセロナであるとか、アンドレス・イニエスタが好きであるとか、無邪気に話していた時期がある。トッププレーヤーとしてプレーできる期間はそう長いものではないのだから、どうしても夢を叶えたいという気持ちはあるだろう。だが、一方でこうも語っている。

「代理人など、携わってくれている人たちを信じて、僕は自分に集中したいです。いろいろな雑音だったり、不安な気持ち……もちろん、移籍先が決まるのかっていうのもあると思うんですけど、自分はもう確実に決まると信じていますし、その準備をして、日頃からイメージを抱いて生活しています」

 目標はあるが、それが叶うかどうかはわからない。それによって不安な気持ちになるというのは誰でも同じだろう。香川もそんな気持ちと戦いながら、成功をイメージして日々を過ごしている。そして移籍ができたとして、ピッチに立つまでにはまだまだハードルがあるだろうということも理解している。

「やはり3カ月試合に出られていないところもあるので、そこは非常に苦労することもあると思います。仮に移籍したら、すぐ試合がある状況なので、その準備はするなかで、試合に出られてない3カ月というものがあるんだぞということを、想定していないといけない。想定しておけばある程度、問題ないですし、プラスアルファ、トレーニングとケアをしっかりとやれれば、すぐに対応できると思います」

 今季の前半戦で出場がなかったのに加えて、長くウィンターブレイクを取るドイツとは違い、スペインでは1月上旬から試合が行なわれていることで苦労するだろう、という意味だ。

 とはいえ、香川のスペイン移籍に関して、ドイツの主要メディアは悲観的だ。もともと昨年11月に香川がスペインへの移籍願望を吐露したあたりから、冷ややかな見方をしていた。

 ドルトムントのGMミヒャエル・ツォルクが語ったとされるビルト紙の記事によれば、昨年夏にセビージャへの移籍話がなくなったのは、推定600万ユーロ(約7億5000万円)とされる香川のサラリーが払えなかったからだという。その金額を払えるのはトップクラブしかないし、セビージャには払う用意がなかった。たとえシュツットガルトに行くにしても、大幅にサラリーを削らなければならないだろう、というのが記事の趣旨だった。

 昨年夏、日本で大きな話題となったベシクタシュ移籍の話が、ドイツではあまりリアリティをもって捉えられなかったのも、トルコリラの大暴落で、とうてい香川のサラリーは払えないだろうという見方があったからだといわれる。どの移籍にも多かれ少なかれあることだろうが、金銭面をクラブと香川の両サイドがクリアすることは、今回の移籍実現の最重要ファクトのようだ。

 過去に、ここまではっきりと移籍願望を口にした日本人選手はあまりいないし、ドルトムントへの移籍前や、マンチェスター・ユナイテッドへの移籍前を振り返っても、香川自身がここまで具体的に移籍先について言及したことはなかったはずだ。それだけに切迫感が伝わってくる。

 行けるところに行くのではなく、望んだところに行くことが許されるのは実力者の証と言っていいだろう。これからの3週間、香川の動向から目が離せない。