MHPSを初の2位に導く走りをした井上大仁

 1月1日に行なわれた全日本実業団対抗駅伝(ニューイヤー駅伝)には、今年9月の東京五輪出場選考会となるMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)の出場権を獲得している15名が出場。そのなかで強さを見せつけたのが、最長22.4kmのエース区間4区を走った井上大仁(ひろと/MHPS)だ。

 昨年8月のアジア大会のマラソンで優勝した井上は、溜まった疲労を考慮して、9月いっぱいは軽めの練習をして過ごしていた。そこから本格的に練習を再開させて、九州実業団駅伝ではエース区間の5区を走って区間賞を獲得。11月末には1万mで27分56秒27の自己ベストを記録していた。

 トップのSUBARUに1分1秒差の9位でタスキを受けた井上は、「とりあえず前を追いかけて走って、もし先頭に立ったら引き離す。それだけ考えて走りました」と言う。

 MHPSの黒木純監督はその走りをこう評価する。

「前半は動きが悪いのかなと思ったけど、あとで本人に聞いたら楽に行っていたと。それで(最初の5kmを)13分59秒で通過は力がついたなと思いました。うちの場合は駅伝に向けてもスピード練習はほとんどしないで、普通に40kmなどもやるマラソン練習をしている。スピードというより押していく力がついたのかなという感じです」

 井上自身は、先頭に追いつくのは15km過ぎになると考えていた。ところが9.1km地点で先頭に立っていた旭化成に10秒差まで迫ると、10.6kmあたりで中村匠吾(富士通)とともに市田孝(旭化成)の前に出て先頭を奪った。さらに中間点を過ぎてからは、そのふたりを引き離して15kmを43分06秒で通過した。

 その後も崩れることなく、2位の中村(富士通)に35秒差、3位の市田(旭化成)には43秒差をつけてタスキを渡し、チームは5区も先頭を走った。6区と7区は旭化成と秒差で競り合って、チームは過去最高順位である4秒差の2位に入った。

「去年の東京マラソンを見ても、ここで区間賞を取った設楽悠太さんが2時間06分11秒の日本記録を出したように、ここで勝っておくことは重要だと思っている。ただ、それだけに固執するのではなく、あくまでひとつのステップとして試して、そこで出た課題を抱えていく意味では、(ニューイヤー駅伝は)重要な位置づけのレースではないかなと思います」(井上)

 井上は9月のMGCレースの前に一度マラソン大会に出る予定だが、まだどの大会に出場するかは明らかにしていない。

 黒木監督は「もちろん日本記録への挑戦も考えたが、これからMGCや東京五輪へ向かっていくためには、もう一回ここで力を溜めなければいけないなとふたりで話した。五輪までにはしっかり力を溜めて勝負できるようにしていきたい」と話す。

 井上も「大事なレースにしっかり焦点を当て、そこでしっかりピークを迎えられるようにしたい」と語ったが、同時にこんな考えも持っている。

「東京五輪の先にも自分の目指しているところはある。アジア大会で一緒に走ったエルハサン・エルアバシ選手(バーレーン)が12月のバレンシアのレースで2間04分43秒を出しました。自分もそのくらいまでいけるんじゃないかという気持ちになれるし、同じくらいのレベルに到達しないと、彼に勝った身としては失礼でもあると思う。そういう高みを目指していきたいと思います。だから今一番気をつけなければいけないのは、MGCロスとか五輪ロスになって自分の目標を見失うことだと思っています」

 井上は、ニューイヤー駅伝の結果を次につなげる意識を持ってレースとトレーニングに取り組んでいる。こうした積み重ねこそが、実業団の駅伝の本質と言えるだろう。