箱根駅伝ではタスキをつなぐ競走部の選手らの活躍が注目されるが、テレビには映らない、現地でのもう一つの華をご存じだろうか。各大学の応援部による駅伝応援である。早大応援部は、箱根駅伝での応援が代替り後初の応援披露であり、熱がこもった応援が往路…

 箱根駅伝ではタスキをつなぐ競走部の選手らの活躍が注目されるが、テレビには映らない、現地でのもう一つの華をご存じだろうか。各大学の応援部による駅伝応援である。早大応援部は、箱根駅伝での応援が代替り後初の応援披露であり、熱がこもった応援が往路の1、5区と復路の6、10区で見られる。下田隆博代表委員主将(政経3=東京・早大学院)率いる応援部の2日間に密着した。

 1月2日午前6時。大手町のファーストスクエア前には応援部の姿があった。国学院大、明大の応援部と隣接した応援スペースには徐々に観客が集まり、7時の応援開始とともに池原瞭太旗手(商3=埼玉・川越)によって校旗掲揚が行われると、沿道からは拍手が巻き起こった。主将による校歌斉唱と挨拶ののち、明治神宮球場でもおなじみの応援歌、応援曲を含むメドレーが披露される。応援歌の歌詞は箱根駅伝バージョンに一部変更されており、今回の応援のテーマである「かける」がダイレクトに伝わる内容となっている。リーダー2年生が中心となった企画では鍛えられたトーク力が光り、応援部のキャラクターであるわーおくんも宮司姿で出演して愛嬌を振りまいた。人気曲『シンデレラガール』に合わせたチアリーダーズのダンス、スタンツと笑顔はひときわ目を引き、思わず足を止める観客も多く、一旦応援をストップして部員が通行整理を行うというハプニングも起こった。『紺碧の空』で早大の第1走者中谷雄飛(スポ1=長野・佐久長聖)を力強く送り出して1区での応援が終わると、応援の勢いが選手にも伝わったのか、走者は区間4位でゴール。部員たちはバスに乗り込み往路最終区間である5区の応援に向かう。次の応援場所である箱根駅伝記念碑前は往路のゴールから200メートルの位置にある。応援場所に到着し、手際よく場所取りや音出しを行った後、13時前から応援が開始された。他大学の応援団と隣接した応援スペースは横幅がわずか7メートルという狭さであるが、部員は場所取りを工夫して迫力のある応援を見せた。箱根駅伝のために作詞、作曲された応援歌である『大地を踏みて』を今瀬憲新人監督(政経3=岐阜)が魅せ、観客の応援にも熱が入る。応援の途中からは雪がちらつき始めたが、吹奏楽団の演奏はその寒さをものともしない。


往路を終えての集合写真

 翌1月3日の早朝、部員はまた5区での応援場所に向かった。気温が1度という前日を上回る寒さの中で、日が昇る前から応援器具の用意や吹奏楽団の音出しが行われる。富士山と芦ノ湖名物の海賊船を背景にして校歌が堂々と披露されると応援スペースの前には早大ファンが続々と集まってきた。主将、副将、主務が一糸の乱れもないコンバットマーチを披露し、リーダー2年生が往路を振り返る。リーダー4年生3名によるコンバットマーチはメンバーを変えながら何度も演奏され、ワセダらしい圧倒的な存在感を他大学に見せつけた。6区の走者を紺碧の空で後押しし、スタンツを行って「早稲田」のパネルを高く掲げるチアリーダーズの明るい表情は、復路の15位スタートという厳しい結果にも希望を与える。


6区の走者を送り出す『紺碧の空』に全力を込める

 最後の応援場所であるDNビルディング前は、走る選手たちのラストスパートを見届けようとする観客で大賑わいとなった。12時15分から応援が開始され、強いビル風の中で掲揚されはためく校旗はしっかりとエンジの存在感を示した。リーダー2年生のみがテクを振る『ダイナマイトマーチ』は彼らの1年間の努力がにじむ熱い応援曲として観客に届いた。また、チアリーダーズによる『ワタリドリ』に合わせた応援では足上げの振り付けや狭いスペースを上手に利用したスタンツが応援に華やかさをもたらす。また、2年生を中心とした企画では観客に参加してもらう内容も盛りだくさんで飽きさせない内容であった。早稲田大学の10区走者が近づくと応援歌『大進撃』『Shining』を含む箱根駅伝メドレーが披露され、リーダーの4年生全員による『コンバットマーチ』が圧倒的な迫力で観客のボルテージを高める。12位でラストスパートを駆ける小澤直人(スポ4=滋賀・草津東)を後押しし、中大との競りに力を与えた。最後に観客と応援部が一体になって校歌の斉唱を行い、一部活とは思えないような鮮烈な印象を残して2019年、箱根駅伝での応援は終わりを迎えた。


駅伝応援の締めを校歌で飾る下田代表委員主将

 箱根駅伝のもう一つの華は現地でしか目にすることが出来ない。今年のシード権は失われたが、応援部は来年度の箱根駅伝の応援を諦めてはいないだろう。4年生51名が率いる新体制は、目標とする「迫力で、人数で圧倒する」(下田代表委員主将)ワセダならではの応援を咲かせてくれた。

(記事 馬塲貴子、写真 馬塲貴子、岡秀樹)

コメント

下田隆博代表委員主将(政経4=東京・早大学院)

――今回目標とされていた応援はどのようなものでしたか。また目標の応援に対しての達成度はどのくらいですか

今年の4年生の一番の特徴というのが、リーダーが10名で3パートだと51名ということで、最後の最後まで迫力で、人数で圧倒する応援を心がけていました。達成度に関しては、まだそれぞれ新しい学年になってやるべきことが達成できてはいないので100パーセントではないのですが、学年ごとに考えて応援を作り上げることはできたので、50、60パーセントくらいです。

――1日目の夜にミーティングなどはなさいましたか

はい、応援企画責任者の小宮祐一朗(法4=東京・早大学院)を中心にしました。

――2日目は朝早くから極寒の中での応援でしたが、発声等に関してなにか工夫はなさいましたか

朝早くだと声が出なくて、またすぐそこに他の応援団がいるので、決して声や音で負けてはいけないということも考えて、事前に発声練習などをしましたね。発声練習というか、朝起きてから一度声だしをしたり喉を万全な調子にできるよう前日から心がけていました

――沿道で応援をされていた方々に対してどのような心情を持って応援されていましたか

やはり、我々の応援は「魅せる」という事が大切なのですが、一番は選手の方々に想いを届けるということです。なので観客の方々をいかに巻き込んで一緒に声を出してもらうか考えて、観客の方々を惹きつけられる応援を心がけました

――最後に、これから主将として1年間の抱負をお願いいたします

やはり最初に言ったように人数が多いという強みをいかして、これから1年間今の4年生が見たことのない、野球部のリーグ戦優勝を目指して、部員一同頑張っていきます

黒澤真紀子副将・チアリーダーズ責任者(教4=埼玉・早大本庄)

――目標としていた応援はどのようなものでしたか。

本年度はチアリーダーズの目標が『かける』がチアリーダーズの目標なんですけれども、一瞬一瞬にすべてをかけて戦っている選手の方々に私たちも青春のすべてをかけて全力で応援するというのを形にしたいなと思って臨んだんですけれど、新年一発目ということもあって、やっぱり最初というのが大きかったんですけれども、選手にどうすれば後押しできる応援をすることができるのかを考えて体現できるように、みんなで詰めて頑張ってきたという感じです。

――その目標は達成することはできましたか。

はい、そうですね。けっこう選手をお迎えする際にハリセンを広げてエンジの面を見せて選手をお迎えするんですけれど、けっこう大人数の方がしっかり開いてくださって観客の方と一体となった応援ができたかなと思ったので、それは良かった点かなと思います。

――応援は選手に向かってされていると思うのですが、OB・OGの方や沿道の方に対してはどのような気持ちで臨まれていますか。

そうですね。やはりただ今の応援部があるのは、本当に今まで伝統ある応援部を築いて続けてきてくださったOB・OGの方々がいらっしゃったからこそ応援部があるわけで、そのOB・OGの方々が見てくださっている中で関係者の方々への感謝の気持ちを表せるように、新年一発目ですし、「ここまで成長したよ」という姿を見せられるように気持ちを込めて応援しました。沿道の方にも何か心に残るものがあってほしいと思っていまして、明日への活力ではないんですけれども、選手を応援するのはもちろん、沿道の見ている方にも何か心に残るもの、「がんばろう」という気持ちが芽生えるような応援をしていきたいなと思うので、巻き込みながらも沿道の方にも笑顔になっていただけるような応援をこれからもしていきたいなと思っています。

――応援の場所が手狭に感じられたのですが、何か工夫をした点はありますか。

そうですね。狭くてできないことも増えてしまうとは思うんですけど、その中でどれだけパフォーマンスができるかというのは重要だと思うので、練習する際から必ず本番を想定して、何メートル何メートルというのを測って、どういったら本番でしっかりできるかということを考えて取り組んできたかなと思います。

――代替わりをして初めての応援となりましたが、今後の抱負をお願いします。

今年度は先ほども申した通り、「かける」という目標を掲げているんですけれども、本年度はチアリーダーズだけでなく、3パートとして史上最多の代で、人数もおそらく執行役員ものみなさんも一番多い代で、人数が多いからこそできる挑戦などもたくさんあるかなと思うので、人数の多さを武器にして一人ひとりが部に貢献というか、一人ひとりの個の力を発揮しながら、全体でもっともっとパワーアップしていけるような代にできれば思います。

春山尚輝副将・吹奏楽団責任者(創理3=茨城・江戸川)

――目標としていた応援はどのようなものでしたか。

そうですね。目標としていたのは自分たちは吹奏楽団であるというものがまずあるので、自分たちの音をしっかり選手たちに聞こえる形で届けるというのが目標でした。その中で、箱根というものはやはり寒かったりして、楽器の調子がすごい悪くなってしまったりするんですよ。そこをどう克服して、しっかり音をまとめて飛ばすかというのを目標にしてやっていました。

――その目標は達成することはできましたか。

そうですね。なかなか去年よりも気温も低いですし、環境は悪いような感じはしたんですけれど、音をまとめて飛ばすという意識を全員でもって、またなるべくベルを上げるとか、そういった工夫もして自分たちなりに応援をして音を届けることができたのではないのかなと自分では思っています。

――先ほどお話の中でも出た通り、箱根では極寒の中、早朝からの演奏となりましたが、何か工夫した点はありますか。

そうですね。気温が低いと楽器というのは音程がどんどん低くなっちゃうんですよ。そうならないようにずっと楽器を温めることが大事なんですね。見ていただいたのでわかると思うんですけど、曲をやらない企画を挟んであるじゃないですか。その間に音は鳴らさないんですけど、ずっと楽器に息を入れ続けて温めて、曲を吹く際にしっかり音を鳴らせるようにというのを意識していました。また朝早いというのも、息を吸えなかったりするんですけど、それも応援の前に息を吸うトレーニングをみんなでやって改善しようとはしていました。

――代替わりをして初めての応援となりましたが、今後の抱負をお願いします。

吹奏楽団というのはほかの吹奏楽のサークルは吹奏楽だけなんですけど、自分たちは応援もやっているし、吹奏楽もやっているし、ドリルという歩きながら楽器を吹いていろいろ隊形が変わるという3つをやっていて、3つやっている分やはり活動が多くなっちゃって、ほかの団体よりも忙しかったり、活動は多いと思うんですけど、その中でも一つひとつ丁寧に、何かに力を入れすぎるとか、何かに手を抜くというのではなくて、全部の活動にやる気とか気概をもって取り組んでいけたらなと自分では思っています。