東海大・駅伝戦記 第41回

「おっしゃー」

 5区の西田壮志(2年)が雄叫びを上げて、フィニッシュラインを切った。鬼塚翔太(3年)が笑顔で、快走した西田を抱きかかえる。

 西田は東洋大と2分48秒差あったタイムをジワジワと縮め、1分14秒差の2位で山を駆け抜けた。

「今年は区間配置がばっちりとハマりましたね」

 両角速(もろずみ・はやし)監督は笑顔でそう言った。



往路を2位でゴールした東海大の5区・西田壮志

 東海大にとって今回の箱根駅伝で難しい選択を迫られたのは2区、そしてもっとも重視していたのが4区だった。2区候補の阪口竜平が夏に故障し、11月に復帰したがタフな2区を走れるメドが立たなかった。そこで白羽の矢が立ったのが、湯澤舜(4年)だった。

「全日本大学駅伝が終わってからすぐに2区って監督に言われました。その時から2区をイメージして準備をしてきましたし、実際走る前はプレッシャーがあったんですけど、しっかりと青学を追っていくという走りができてよかったです」

 湯澤は、すぐに前を行く青学大の梶谷瑠哉(りゅうや/4年)に追いつき、法政大の坂東悠汰(4年)と3人で並走した。湯澤に焦りはまったくなく、上りの厳しい権田坂も「まったく問題がなかった」と言う。

 21キロ手前で粘った湯澤は、そのまま5位で3区の西川雄一朗(3年)に襷を渡した。トップの国士舘大から41秒差だったが、この2区で大きく出遅れることなくレースを作った湯澤の貢献度は非常に大きかった。

 西川は、青学大の森田歩希(ほまれ/4年)に抜かれはしたが、トップの青学大に1分12秒差の4位で、4区の館澤亨次(たてざわ・りょうじ/3年)につないだ。

 4区は戦前、両角監督がもっとも重視していた区間だ。

 昨年も含めて4区は鬼門になっていたので今年、両角監督はこの区間に一番信頼のおける、走れる選手を起用すると言っていた。それが東海大屈指の「駅伝男」の館澤だった。その館澤の起用がピタリとハマり、トップの東洋大に2分48秒差ながら2位となる快走を見せたのだ。

「湯澤、館澤と重要な区間を任された選手が仕事をしてくれた。これが最終的に西田の走りにもつながって行ったと思います」

 ここまではある意味、両角監督もイメージできていたのかもしれない。だが、両角監督を驚かせる走りを見せたのが5区の西田だった。

 山の5区は初挑戦になるが、西田は不安など微塵も感じさせず、まるで平地を走るように楽々と山を登った。その走りに、夏からの西田の成長の跡がハッキリと見えた。

 西田は、夏合宿に実業団の合宿に参加した際、福岡国際マラソンで優勝した服部勇馬と同部屋になり、一緒に過ごすことで競技面、生活面の両面で刺激を受けた。ジョグの距離を20キロにして、長い距離への不安を解消して、練習が終わるとマッサージなどのケアに時間をかけた。山の練習は、19キロのヤビツ峠を夏以降に4、5回走り、大学近くの弘法山はジョグのコースになった。『おまえ、変わったな』と両角監督に言われるほど競技に対する姿勢が変化し、その意識と努力を認められて早々に5区が決まった。

 そして、区間2位(1時間11分18秒)の爆発的な走りを見せたのだ。

「西田の走りは想定外でした。あそこまで走るとは思っていなかった」

 両角監督の期待に完璧に応えた。

 もうひとつ、往路2位という成績を残せたのは、ピーキングがピタリと合ったからだ。

 11月の全日本大学駅伝以降、記録会への参加をやめて、その分、合宿を組み、箱根仕様にするべく長距離を走る練習をした。さらに、それぞれのコンディションに合わせて、選手個人にある程度調整を任せるようにした。自主性を重んじ、自分の調整に責任を持たせるようにしたのだ。

 その結果、12月29日の段階で「チーム状態は100%です」と両角監督が断言するほどいい状態に仕上げることができていた。選手はピーキングをぴたりと合わせ、最大のウィークポイントを克服したのである。

「総合優勝には往路優勝が絶対条件だ」と両角監督は語っていたが、それには届かなかった。しかし、トップの東洋大との差は1分14秒。復路で逆転しての総合優勝の可能性は、大きく膨らんだ。

 6区の中島怜利(3年)は昨年区間2位で、下りにめっぽう強い。58分台前半で入ってくれば、東洋大との差をかなり詰めることができる。



1区で好走した東海大3年の鬼塚翔太

 両角監督は言う。

「中島は下りが得意なので期待できますが、東洋大とは400mぐらい差があるので、ひとりで決めようとせず、次につなげる形で堅実に走ってくれればいいかなと。そこで少しでも前との差を詰めてもらい、7区の阪口(竜平/3年)の走りを演出できるような位置につけてほしい」

 ここに来て、7区に阪口に置いた戦略がポジティブな結果を生み出しそうな気配だ。

 東洋大は7区、キャプテンの小笹椋(4年)が走るが、スピードが持ち味の阪口で追いつくことは十分に可能だ。そうして8区の松尾淳之介(3年)がトップに立てば、9区には湊谷春紀(4年)が当日の選手変更で入る予定なので、優勝への道筋が見えてくる。

「8区でトップに立ち、9区でリードできれば」と両角監督は総合優勝への青写真を描く。

 1分30秒差であれば復路でチャンスがあると両角監督は述べていた。現実のタイム差は、想定タイムよりも短い。もはや4分20秒離れたうしろの青学大を意識する必要はなくなった。追うのは、東洋大のみ。

「今日は東海大らしい駅伝を見せられたと思います。明日も今日のようにつないでいきたいですね」

 両角監督は、自信にあふれた表情で、そう言った。往路のいい流れを紡いでいけば、初優勝は東海大の手中にあると言っていいだろう。

(つづく)