東海大・駅伝戦記 第40回

 いよいよ箱根駅伝へのカウントダウンが始まった。

 青学大の5連覇濃厚というムードのなか、区間エントリーが発表され、あとはレース当日に向けて各大学とも細かい調整に入って本番を迎えることになる。



今回の箱根で東海大はエントリー16人中、3年生が10人と大半を占める

 東海大の両角速(もろずみ・はやし)監督は、昨年との”違い”を感じているという。

「昨年のチームと比べると今年はケガで不安を抱えている選手もいないですし、チーム全員、調子が上がっている。状態としては昨年よりも非常にいいと思います」

 表情にも余裕が漂う。

 今シーズン、東海大は箱根駅伝について従来の練習スタイルを大幅に変更した。全日本大学駅伝以降は学連の記録会や八王子ロングディスタンスなどへの参加を取りやめ、箱根に勝つために必要な長距離とスタミナ作りの練習に特化してきた。チームの特徴であるスピード練習すらせず、箱根仕様のチームに仕上げていった。

 その効果は非常に大きかったという。

「例年、箱根に向けていろいろやりたいことがあったんですけど、今回はレースを抜いた分、学生も余裕を持って練習をやれていました。その結果、16名全員が故障なく調子を上げ、戦える状態になって本番を迎えられることに結びついたんだと思います」

 そう語る両角監督の表情に少し笑みがこぼれる。取り繕うこともなく、感情が素直に出るということは、本当に順調なのだろう。

「チーム状態は100%です」

 昨年の今頃は、主力に故障者がおり、不安要素を抱えていたので「目標は優勝です」と言いながらも、100%とは宣言しなかった。だが、ついに100%宣言が出た。今回はチームに対する自信が相当あるのだろう。

 では、青学大に勝つためのレースプランをどう考えているのだろうか。

「まずは1区、2区で出遅れないこと。前半区間からしっかりと優勝争いに絡んでいくために、主力をつぎこんでいくような戦い方をしていく必要がありますね。とにかく5区が終わった時点で1秒でも1mでも青学さんよりも前でゴールをしてほしい。自分たちが総合優勝するためには往路優勝が絶対的な条件になります」

 その往路優勝を狙うための区間配置はどうなるのだろうか。東海大は青学大に果敢に挑み、往路を獲るための区間配置を見せた。

(往路)

 青学大 1区 橋詰大彗(4年)   東海大 1区 鬼塚翔太(3年)

     2区 梶谷瑠哉(4年)       2区 湯澤舜(4年)

     3区 湯原慶吾(1年)       3区 西川雄一朗(3年)

     4区 岩見秀哉(2年)       4区 本間敬大(1年)

     5区 竹石尚人(3年)       5区 西田壮志(2年)

青学大(補欠登録)             東海大(補欠登録)

森田歩希、鈴木塁人、神林勇太       湊谷春紀、東優汰、河野遥伎

橋間貴弥、生方敦也、飯田貴之       小松陽平、館澤亨次、關颯人

 5区までの往路区間、青学大は3区、4区、東海大は4区に選手変更の可能性が高い。両角監督は言う。

「4区は、ここ最近コース変更があり、後半はアップ&ダウンが続く難しいコースになりました。おそらく1区、2区ではそれほど大きな差はつかないと思いますので3区、4区がポイントになります。とくに4区はここ2年間、鬼門になっているので、そこでいい走りをして5区に渡すことが重要になってきます。そのためには、この4区には力のあるアップ&ダウンの得意な選手を配置していくことになりますね」

 両角監督は、この4区を重視している。

 4区、5区で青学大の前を行けば相手を慌てさせることができるし、先行されても見えている範囲であれば復路で逆転できる可能性がある。そのためには、やはり補欠登録になっている湊谷春紀(4年)、關颯人(3年)、館澤亨次(3年)のうち、關か館澤のどちらかが4区に入る可能性が高い。

 とりわけ館澤は「駅伝男」であり、両角監督が今もっとも信頼を寄せる選手。昨年の箱根駅伝では8区を走り、区間2位で東海大を3位に押し上げた。その館澤が4区に入ると、仮に補欠登録の青学大・森田が3区に入ったとしても4区までは青学大と互角の勝負ができるラインナップが実現する。

 最後は5区の山登りでの勝負になるが、東海大の西田は初の5区挑戦になる。だが、両角監督はまったく心配していない。

「西田は山が得意ですし、立川の学生ハーフ、後半のアップ&ダウンの厳しいところで粘って3位に入った。平坦な道よりもアップ&ダウンが得意ですし、体格的に小さくて軽いので神野(大地)選手に似ているんですよ。『1時間13分ぐらいでいけ』と言っていますが、そのくらいでいくと区間3位ぐらいに入っていけるので期待しています」

 箱根初挑戦の西田は正直、5区でどのくらいやるのか未知数だ。だが、爆発的な走りを見せてくれれば、両角監督が総合優勝するために必須という往路優勝が見えてくる。

(復路)

 青学大 6区 小野田勇次(4年)   東海大 6区 中島怜利(3年)

     7区 林奎介(4年)         7区 阪口竜平(3年)

     8区 山田滉介(4年)         8区 松尾淳之介(3年)

     9区 吉川圭太(2年)         9区 鈴木雄太(2年)

     10区 吉田祐也(3年)         10区 郡司陽大(3年)

 青学大は前回まで8区にエースの下田裕太を置き、6区、7区、8区で勝負を決めるというレースプランだった。今回も……となると、8区は選手変更の可能性が高く、おそらく鈴木塁(3年)が入ってくるだろう。10区も往路の展開次第では変更があるかもしれない。

 東海大は、往路で館澤を起用した場合、復路で選手変更が起こりそうな区間は8区、9区になる。そこに關と湊谷を当てはめていくのか。

「6区の中島は前回以上の走りができると思いますし、(青学大は)7区には昨年区間新を出した林くんがくると思っていましたので、原監督がもっとも警戒しているという阪口を置きました。阪口は故障で出遅れましたが、いまはまったく問題ないです。この2区間に変更はありません。それ以外の復路は往路が終わって順位を見て、あらためて選手変更をどうするのか考えないといけないですね。ただ、選手にはどこでも走れるように準備はしておくようにと伝えています」

 6区、7区、8区は実力伯仲のガチンコ勝負になる。するとレースは、10区までもつれてくるかもしれない。

 その場合、10区に入った郡司の存在が大きな意味を持つ。湯澤と同じく故障がなく、コツコツと努力するタイプでロードに強い。タイムでは青学大の10区吉田に5000mでは10秒、1万mでは17秒勝っている。

 全日本大学駅伝は吉田が5区で区間賞、郡司は6区で区間2位の走りを見せた。アンカー勝負になった時でも十分に戦える余力を残している。また、レースに出場できない”箱根0区”の選手たちも万全のサポート体制を敷いてきた。

 青学大と”タイマン勝負”できるチームが完成したが、ポイントはどこにあるのだろうか。

「青学大に勝つのは簡単じゃないです。絶対王者ですからね。駅伝はミスをしたところが負けますが、青学大はミスが少ない。それが強さの秘訣でもあります。自分たちはそのミスをせず、逆に相手のミスを誘発できるように、まずは復路で粘り強く走ることが勝利のシナリオになると思っています」

 青学大をリスペクトしながらも、今年のチームの仕上がりに自信を見せる両角監督。選手たちが「打倒・青学大」に向けて士気が上がるなか、監督の気持ちも同じく静かにメラメラと燃えている。

 果たして、夏から17キロ痩せた体は大手町で宙を舞うことができるだろうか。