全日本大学女子選手権の準々決勝が行われ、中国地区第1代表の徳山大と対戦した。早大は、相手の粘り強い守備に苦しんだが徐々に押し込み、36分にMF柳澤紗希(スポ4=浦和レッズレディースユース)のFKで先制に成功する。後半は互いにゴールに迫るシ…

 全日本大学女子選手権の準々決勝が行われ、中国地区第1代表の徳山大と対戦した。早大は、相手の粘り強い守備に苦しんだが徐々に押し込み、36分にMF柳澤紗希(スポ4=浦和レッズレディースユース)のFKで先制に成功する。後半は互いにゴールに迫るシーンをつくりながらもスコアは動かず、そのまま1-0で徳山大を下した。『兵庫ラウンド』を勝ち抜いた早大は、1月中旬に東京で行われる準決勝に進出。1月18日に関西王者の姫路獨協大と対戦する。

 徳山大は大学女子日本代表候補選手も複数所属する実力校で、互いに譲らない試合展開となった。ボール支配で上回る早大は、ピッチの幅を広く使う攻撃で相手のプレスをいなしながら、サイドに起点をつくってゴールを目指した。しかし、ボックス付近で人数をかけ、体を張る相手守備陣に苦しみ、思うように攻め切ることはできない。逆に、徳山大FW福永静香に起点づくりや裏抜けを許して攻め込まれる場面も散見された。それでも早大は16分、セットプレーから波状攻撃を見せ決定機を演出。柳澤のクロスから1人がスルーし、ゴール前で待つMF村上真帆(スポ2=東京・十文字)にボールが渡るが、シュートはバーを叩いてしまう。以降も粘り強く、隙を見せることなく戦う早大は29分にMF中條結衣(スポ3=JFAアカデミー福島)が約30メートルのロングシュートで相手ゴールを脅かすと、32分にはMF熊谷汐華主将(スポ4=東京・十文字)の左クロスに、フリーのMF山田仁衣奈(スポ3=大阪・大商学園)が懸命に右足を伸ばしたが、一歩届かず。一方的な展開となると、早大に待望の先制点が転がり込む。36分、左サイドの深い位置でFKを得ると、「初戦でCKから3点を取って自信になっていた」という柳澤がインスイングのボールを蹴りこむ。早大の3選手がゴール前で密集をつくると、マンマークを採用する徳山大守備陣はゴールに向かうボールに対応できず、そのままボールはネットを揺らした。しかし、42分には久々の被決定機。MF塩田満彩に右サイドを突破されると、MF原田結奈に決定的なシュートを打たれたが枠外へ。どうにか事なきを得た早大は、1点のリードを奪って前半を終えた。


待望の先制点が決まって喜ぶ選手たち

 後半に入っても、徳山大はロングボールを多用し、シンプルな戦い方を志向。攻めながらもペースをつかみきれない早大は、57分にエースのFW河野朱里(スポ4=静岡・藤枝順心)を投入して状況の打開を図ったが、ラストパスの精度も上がらず、次第に閉塞感が漂い始める。63分には相手セットプレーのこぼれ球を拾われ、塩田にミドルシュートを許してしまうが、ここはGK木付優衣(スポ4=ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)がおさえた。その後もボールの収めどころをつくれず、「ずっと蹴り合いみたいなサッカーになってしまった」(中條)。フィジカルに優れる『相手の土俵』にじわじわと引きずり込まれそうになるが、要所で踏みとどまり、相手に得点の予感が漂うような危険なシーンをつくることはなかった。そして78分、徳山大の最前線で奮闘を続けていた福永が交代で退き、代わって入ったFW藤木佐名子の裏抜けもDF源関清花(スポ3=ちふれASエルフェン埼玉)が鋭い対応で潰すと、再び早大優位の展開に。残り時間は高い位置でプレーを続け、危なげなくやり過ごした早大は、準決勝・決勝が行われる西が丘行きの切符をつかんだ。


早大のゴールを守り続けた守護神・木付

 「東伏見に残っているみんなの分まで戦うということをチームとして大事にしていた」と主将の熊谷。特に後半は守勢に回る時間帯も長かったが、集中力を高く保ち、闘う姿勢を体現し続け、ピンチらしいピンチを迎えることはなかった。勝因を問うと、「精神的に負けなかった」(熊谷)、「我慢で勝った」(柳澤)と口をそろえたように、勝利への強い執着心で手繰り寄せた完封勝利だった。試合後、選手たちからは「東京に戻れてよかった」という安堵の言葉が聞かれたが、ここからが正念場であることも理解している。目指すのは、『ア女の強さ』を示した上での4連覇達成。とりわけこの日の試合においては、低調な内容に終始した悔しさも残る。「課題が多く、見ている人にとってもつまらなかったんじゃないか。ここからは『これがア女の強さ』というものを見せつけたい」(柳澤)。4強の面々はさらなる強豪揃いではあるが、この一年間の全てを、そして1年時に『4連覇』を志した4年生の部員たちにとっては四年間の全てをかけた、運命の2連戦。その並々ならぬ思いを胸に、悲願へ向けて突き進む。

(記事 守屋郁宏、写真 石塚ひなの、守屋郁宏、下長根沙羅)


スターティングイレブン



第27回全日本大学女子選手権
早大1-0
0-0
徳山大
【得点】
(早大)36’柳澤紗希
(徳山大)なし
早大メンバー
ポジション背番号名前学部学年前所属(加入内定)
GK木付 優衣スポ4ジェフユナイテッド市原・千葉レディース
DF渡部 那月社4兵庫・日ノ本学園
(オルカ鴨川FC内定)
DF三浦 紗津紀スポ4浦和レッズレディースユース
(INAC神戸レオネッサ内定)
DF23源関 清花スポ3ちふれASエルフェン埼玉
DF中田 有紀スポ3兵庫・日ノ本学園
MF柳澤 紗希スポ4浦和レッズレディースユース
MF20中條 結衣スポ3JFAアカデミー福島
MF山田 仁衣奈スポ3大阪・大商学園
→70分17松本 茉奈加スポ2東京・十文字
MF村上 真帆スポ2東京・十文字
→90+2分大井 美波社4大阪・大商学園
MF◎11熊谷 汐華スポ4東京・十文字
(スフィーダ世田谷FC内定)
FW12山田 彩未スポ4ジェフユナイテッド市原・千葉レディースU18
(FC十文字VENTUS内定)
→57分10河野 朱里スポ4静岡・藤枝順心
(INAC神戸レオネッサ内定)
リザーブ:GK16鈴木佐和子(スポ2)、DF佐々木呼子(スポ2)、MF高瀬はな(スポ3)、MF蔵田あかり(スポ1)
◎=ゲームキャプテン
監督:川上嘉郎(昭51商卒=神奈川・横浜緑ケ丘)
コメント

MF熊谷汐華主将(スポ4=東京・十文字)

――中1日できょうの試合に臨まれましたが、どんな準備をされましたか

中1日で練習は軽めに調整してやったというのと、相手の分析ということで徳山大のビデオを見てセットプレーの確認だったりどういった守備をするのかというのをミーティングでしっかり話し合って過ごしました。

――コンディションはいかがでしたか

中1日だったんですけどそこまで疲れもなくてできたかなと思います。

――試合を終えて今どんな気持ちが一番強いですか

必ず勝って西が丘、東京に戻りたいという思いがすごくあったので、結果として西が丘に戻れることはすごく嬉しいです。東伏見に残っているみんなの分まで戦うというのがチームとして大事にしているところだったので、きょうの試合は苦しかったですけど勝ち切れてよかったと思います。

――試合を全体的に振り返っていかがでしたか

前半は結構自分たちの思い通りとまではいかなくてもやりたいことはできていたのかなとは思いますが、ゴールまでが遠かったのでシュートをもっと打ちたかったところではあります。風もあってなかなかゴールまでいけない、決め切れないというところがあったと思います。後半は相手も自分たちに対応してきてやりづらいところがあって、自分たちも少し苦しい戦いになってしまったのかなと思います。

――均衡していた中で先制できたというところは精神的に影響はありましたか

先制すると気持ち的に余裕が持てるので、前半のうちに1点取れたことで余裕もできたし、落ち着いてプレーできたのかなと思います。

――劣勢になりかけた場面も少しありましたが、その中で守り切れた要因を挙げるとすれば

相手の特徴的な選手だったりプレーをしっかり分析していたので、そこは必ずやらせないということをチームで徹底していたことかと思います。あとは最後まで走り切れたこと、精神的に負けなかったところが大きかったと思います。

――次の準決勝まで少し時間が空きますが、どういったところを詰めていきたいですか

結構今シーズンの自分たちは、相手がどういったサッカーをするかに合わせて自分たちのサッカーを変えてきた部分があるんですけど、それだけではなくて自分たちの強さをもう少し出せるように、そこをもっと追求して自分たちがどういうサッカーで勝ちたいのか、どういうサッカーをやっていきたいのかを詰めて準決勝までやっていきたいと思います。

MF柳澤紗希副将(スポ4=浦和レッズレディースユース)

――中1日の試合となりましたが、どのような準備をしてきましたか

自分自身は、1回戦を5-1で勝てて5人の交代枠を全員使ったので休養ができたので、体力的には大丈夫でした。スカウティングを重視してどういう戦略でいくかや、注意すべき点をみんなで話し合いながらやりました。

――やり慣れていない相手ということでしたが、試合のポイントはどこだったのでしょうか

スコアも1-0で、その1点もセットプレーで厳しい試合でした。トーナメントということで相手もすごく気持ちが入っている中で、受け身になると勝てないとは思っていました。積極的以上の気持ちを持とうと監督に言われていました。

――試合を終えての今の率直なお気持ちはいかがですか

正直、勝てたことだけがよかったなと思います。東京に戻れるっていう安堵の気持ちが多いんですけど、課題もすごく多くて、見ている人にとってはすごくつまらなかったんじゃないかなと思いながら、準決勝や決勝に向けて、残された時間をうまく使わないと4連覇はできないかなと思います。

――内容的には振り返ってみていかがですか

風もあった中で、相手のフィジカルの強さがありました。関東ではあまり経験しない部分もあって、空中戦がいつもより多かったかなと思います。

――1点目についてはどうですか

初戦でもコーナーから3点を取ったので、自分の中でもすごく自信になっていました。誰かが触れば入るようなボールを蹴れればと思っていたら直接入ったので(笑)。ここからは、「これがア女の強さ」というのを見せつけたいと思います。

――きょう勝ち切れた要因はなんですか

本当に気持ちの部分だと思います。我慢して足を出すとか、我慢のところで勝ったかなと思いました。

――準決勝に向けて詰めていきたいことは

きょうの反省点としては空中戦を多く作らせてしまったというのがあるので、自分たちのサッカーの良さをもっと出したいと思います。相手に飲まれてしまった部分があるので、流れを引き寄せるような試合運びにしていきたいと思います。

MF中條結衣(スポ3=JFAアカデミー福島)

――対戦経験も試合を見る機会もあまりない相手だったと思いますが、相手のどういうところを警戒していましたか

スカウティングをしたときに結構サイドバックが蹴ってくるということだったので、そこを蹴らせないというところで、そこをケアしながらという感じでした。

――今日の試合を振り返って

勝てたことは良かったんですけど、やっぱりもっと決めるべきところを決めるとか、その他細かいところにも課題はたくさん出たなと思います。

――相手のプレッシングをいなすような幅を使った展開が印象的でしたが

自分は持ったら逆サイドに展開、サイドチェンジというところは監督とかからも求められていました。それは意識してやっていました。

――決めきれない状況が続く中での先制点は大きかったのでは

いや、1点を取ったとはいっても全然油断はできなかったですし、追加点はずっと狙っていました。攻めてて点が決められそうだなという良いリズムのときはあったんですけど、やっぱりボールをおさえるところがなかったので、ずっと蹴り合いみたいなサッカーになってしまったというのはありますね。

――後半はより受けに回る時間もあったように思いますが

朱里さん(河野)が入って流れを変えられるかなと思ったんですけど、相手も構わず蹴ってきたので。(耐えられた要因は)ディフェンスラインが集中してずっと跳ね返してくれたというところと、そのこぼれ球を拾われてしまっていたんですけど、特にサイドバックやサイドハーフが頑張ってくれました。最後に球際で勝てたというところじゃないですかね。

――東京に戻ることができます。残り2試合に向けて

がんばります!