写真:伊藤圭

日本リーガーとTリーガーの二足のわらじを履く松平賢二。同級生の水谷隼という強烈なライバルと切磋琢磨しながら、その才能は徐々に卓球界に知れ渡る。いかにして松平は地元の石川県を飛び出し、名門・青森山田に入学するのか。本人の言葉で軌跡を追う連載、第2回。

「将来は公務員」安定志向の中学時代

地元の中学に進んだ松平は「卓球部には入ったものの、他のアスリートみたいなガチでやっていたわけではなかった」と明かす。「小学生時代も卓球より、公文と習字に行ってて(笑)。そこから卓球の練習があるから、大体5時半ぐらいから、遅くて夜9時までとか。中学校でも卓球部の練習が終わるのが夕方6時すぎぐらい。で、帰ってきて7時から9時って感じで練習ですね」。

中学時代は卓球で飯を食うことなど考えたこともなかった。それよりも松平の考え方は安定志向、ずばり公務員になることだった。

「母からは『田舎なんだから安定が一番』って口酸っぱく言われてて、だから中2の途中まで公務員になるべく勉強頑張ってました」と意外な過去を明かす。

だが、そんな松平の運命が変わったのが中2の時。きっかけは一本の電話だった。「お父さんから『おまえ、吉田先生から電話かかってきたよ』って言われて。『え?』って感じでした。「吉田先生」とは名門・青森山田の吉田安夫監督だ。全国1位など派手なタイトルが少なかった松平は半信半疑だった。だが、吉田氏のアプローチは熱烈だった。実家の石川県まで足を運び、有名料亭で政治家さながらに口説いたのだ。「加賀屋っていう有名な旅館の料亭で、『お前の1試合、あの1球を見て、俺はもう決めた!』とか言うんですよ。当時の自分は『まさか…』って。もちろん嬉しかったけど、緊張の方が勝ってて、生まれて初めてフカヒレを食べたことしか覚えていません(笑)」。



写真:伊藤圭

吉田氏の熱意はそれだけにとどまらない。中学2年の青森山田に入学する前の松平を「ドイツに行かせよう」と言い始めたのだ。「中2のめちゃくちゃ弱いやつがそんなとこ行ってどうすんだろ…」といぶかるも、ドイツブンデスリーガの1部を目の当たりにして火がついた。「当時は1歳上の大矢(英俊)さんと(高木和)卓さんと行ったのですが、馬文革に李哲承にトーベン・ボージックがバチバチでやりあってて、そりゃ盛り上がっちゃいますよね…」。

その勢いで公務員という将来の進路を一度曲げて、弟・健太とともに転校を決意。「中3の後半に伸びる。少しでも早く入った方がいい」と吉田氏に後押しされ、中3の9月に青森山田に入学、日本最高峰の卓球の名門の門を叩くことになる。

卓球エリートの巣窟へ。徹底した実力主義

入学早々、卓球部の強さの秘訣を知ることになる。「一般の部活動だと、学年ごとで練習して一番下は球拾い、とかじゃないですか。でも青森山田はぜんぜん違った」。待っていたのは徹底的な実力の世界だ。すべての青森山田卓球部のOBが口をそろえる。「あそこは完全な実力主義だ」と。しかも同期には水谷隼もいる。負けるわけにはいかない。「まずは部に自分を認めてもらわないと」。そう息巻いていた。



写真:伊藤圭

だが、目標は早々に縮小することになる。「認めてもらうどころじゃない。そもそもどうやったら自分と練習してもらえるか、からですよ」という。松平が今でも強烈に印象に残っている出来事がある。毎年、年末に行われる「青森山田名物・全員総当たりのリーグ戦」だ。中学、高校、大学の卓球部員が総当たりで激突するのだ。「しかも時期が時期で、1月の全日本選手権直前。全員青森に戻ってきて、調整してる。だから誰が相手でも手を抜くことは絶対にないんです。中学生相手に大学生が本気になって打ち込んでくる。もうボッコボコにされて。『なんだ、この手応えのないやつ』みたいな顔をされる。悔しいどころじゃない。転校して3ヶ月、『これは大変なところにきた…』と覚えています」。

松平たちの先輩に目を向ければ、坂本竜介(現T.T彩たま監督)や張一博(現琉球アスティーダコーチ兼選手)ら猛者が居並ぶ。そんな猛者の中にあって、ボロボロになりながらも食らいつき、時には勝ちを挙げていたのが水谷だった。

自分が勝てなかった水谷さえも苦しんでいる。自分はどうすればいいのか。焦りばかりが募る。強くなるために出した答えが「まずは誰か強い人と練習してもらわないと」だった。

徹底した実力主義の青森山田では、弱いままでいると強い人との差が開く一方なのだ。

文:武田鼎(ラリーズ編集部)
撮影地:協和発酵キリン卓球場

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