天皇杯全日本選手権(天皇杯)第2日。早大からは男子フリースタイル57キロ級に岩澤侃(スポ3=秋田商)、61キロ級に吉村拓海(スポ3=埼玉栄)、74キロ級に山﨑弥十朗(スポ3=埼玉栄)、梅林太朗(スポ2=東京・帝京)がエントリー。男子グレコ…

 天皇杯全日本選手権(天皇杯)第2日。早大からは男子フリースタイル57キロ級に岩澤侃(スポ3=秋田商)、61キロ級に吉村拓海(スポ3=埼玉栄)、74キロ級に山﨑弥十朗(スポ3=埼玉栄)、梅林太朗(スポ2=東京・帝京)がエントリー。男子グレコローマンには67キロ級の宇井大和(スポ3=和歌山・新宮)と敗者復活戦に回った松本直毅(スポ3=神奈川・横浜清稜総合)が出場した。しかし、優勝候補の山﨑が初戦で敗れるなど、この日も早大戦士は苦戦を強いられるかたちとなった。

★山﨑、2年連続の初戦敗退。梅林は早大OB保坂を相手に健闘を見せる


準々決勝で早大OB保坂と激突した梅林

 東京五輪に照準を合わせ74キロ級での出場となった山﨑の初戦の相手は、今年の世界大学選手権で優勝するなどの実績を持つ木下貴輪(クリナップ)。明治杯全日本選抜選手権(明治杯)の79キロ級で2位に入賞したこともあり、上位進出が目されていた山﨑だが、試合を通じて木下の守りを崩せず、奪ったポイントはアクティビティタイムと相手のコーションによる2点のみ。「足が動かなくなってきた」という第2P中盤以降にテクニカルポイントを立て続けに奪われ、2−7で敗戦。無念の2年連続初戦敗退となった。

 予備戦をテクニカルフォールで突破した梅林は1回戦で基山仁太郎(日体大)と対戦。試合会直後にもつれからテークダウンにより先制を許した梅林だが、すぐさまタックルからバックポイントを奪い試合を振り出しに戻す。第2Pにもアンクルホールドから追加点を挙げると、試合終了間際にも場外押し出しで加点し試合を決めた。準々決勝では早大OBの保坂健(平27スポ卒=現・自衛隊)と激突。第2P中盤までリードを保っていた梅林だが、試合時間残り1分30秒に保坂に同点に追いつかれた際に右ひざを負傷。梅林は追い上げを図ることができず、ビッグポイントの差で保坂の前に屈するかたちとなった。「ケガをしたからではなく、あの場面でポイントを取られた自分の甘さ。実力不足です」と振り返ったが、全日本トップクラスの実力を持つ基山や保坂と互角以上に渡り合ったことには自信をのぞかせた梅林。早大入学以降は思うように結果を残せていなかった梅林だが、来年度以降の飛躍をうかがわせる天皇杯となった。

★吉村、惜敗で決勝進出を逃す


準決勝の試合終了間際に逆転を許し、悔しさをにじませる吉村

 「コンディションはとても良かった」という吉村は1回戦を6−2、準々決勝をテクニカルフォールと快勝続きで準決勝へと駒を進めた。しかし、藤田雄大(青学大)との対戦となった準決勝は1点をリードした試合終了間際にテクニカルポイントを奪われ2−3で逆転負け。あと一歩のところで決勝進出を逃した吉村はマットに拳を叩きつけ悔しさをあらわにした。

 接戦となった初戦を9−6で制した天皇杯初出場の岩澤は準々決勝で昨年の世界選手権57キロ級王者、今年も3位に入賞している高橋侑希(ALSOK)と対戦。試合開始後のファーストアクションで高橋を場外に押し出し先制に成功した岩澤だが、その後は立て続けにテクニカルポイントを奪われ、終わってみれば1−11のテクニカルフォール負け。世界王者の実力を見せつけられたかたちとなったが、「要所で通用していた部分もあったことは自信になる」と岩澤。初出場となった天皇杯で手応えを感じていた。

★宇井は明治杯のリベンジを果たせず1回戦敗退


宇井は明治杯に続き髙橋のカベを破れず

 男子67キロ級の宇井は初戦、明治杯で敗れていた髙橋昭五(警視庁第六機動隊)と再戦した。2点を先制された宇井だが、第1P中盤に4ポイントの投げ技を決め逆転に成功する。しかし、直後のグラウンドのもつれからポイントを返され再びリードを許すと、試合終了間際には投げからフォールを決められ万事休す。明治杯の雪辱を果たすことはかなわず、1回戦敗退となった。

 前日の初戦で敗れた志喜屋正明(自衛隊)が決勝に進出したため、敗者復活戦に回った松本は石井良祐(専大)と対戦。しかし、試合開始1分過ぎにテークダウンからニアフォールに持ち込まれるなど苦しい展開を強いられる。第2Pにコーションにより点差を広げられた松本は果敢にスタンド技を試みるもポイントを奪うには至らず、0−6の完封負けで天皇杯での戦いを終えた。

(記事 林大貴、写真 皆川真仁)


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結果

男子フリースタイル
▽57キロ級
岩澤 準々決勝敗退
1回戦 ◯9-6 山根典哲(多度津高)
準々決勝 ●1-11(Tフォール) 高橋侑希(ALSOK)

▽61キロ級
吉村 準決勝敗退
1回戦 ◯6-2 飯田陽(法大)
準々決勝 ◯11(Tフォール)-0 髙安直人(髙安組)
準決勝 ●2-3 藤田雄大(青学大)

▽74キロ級
梅林 準々決勝敗退
予備戦 ◯10(Tフォール)-0 本間賢志(日大)
1回戦 ◯5-2 基山仁太郎(日体大)
準々決勝 ●3−3(ビッグポイント)保坂健(自衛隊)

山﨑 1回戦敗退
1回戦 ●2-7 木下貴輪(クリナップ)

男子グレコローマン
▽67キロ級
宇井 1回戦敗退
1回戦 ●4-11(フォール) 髙橋昭五 (警視庁)

▽97キロ級
松本 敗者復活1回戦敗退
敗者復活1回戦 ●0-6 石井良祐(専大)

コメント

岩澤侃(スポ3=秋田商)

――初戦は接戦となりましたが振り返っていかがですか

初めての全日本の舞台ということと、相手が高校生というのもあって、少し雰囲気に飲まれたかなっていうのがありました。でも徐々に試合の中で動けるようになっていけたので、よかったかなと思います。

――後半から得点を量産できた要因というのはありますか

第2Pに入ってから自分が得意とする差しからのパターンなどもハマって、得点にできたなと思います

――王者の高橋選手が相手でしたが、通用している部分もあったように思えました

そうですね。ただ減量の疲れとスタミナ不足の部分で劣ってしまって。最初のワンアクションで先制できたのはよかったんですけどそこでかなりの力を使ってしまった部分があって。後半になるにつれて自分のスタミナが切れていく一方でした。要所要所だけで見れば通用していた部分もあったとは思います。

――やはり力の差というものは感じましたか

力の差はやっぱり感じましたね。フラットで向き合って構えてる状態が一番実力差を感じたかもしれません。そのプレッシャーであったり、最初のワンアクションでも同じ階級でこんなに力が違うのかと思いました。

――トップクラスの選手に要所で通用したというのは自信になるのではないでしょうか

はい。押し出しと、そのあとのポイントにはならなかったんですけど、相手の横に付く攻撃ができて。完成度はまだまだ低いんですけど、それに磨きをかけていければトップクラスの選手とも渡り合えるんじゃないかなという手応えは感じました。

――明日は敗者復活戦が控えていますが、意気込みのほどをお願いします

2回勝って、3位で表彰台に登れればなと思います。

宇井大和(スポ3=和歌山・新宮)

――初戦負けという結果になりましたが、結果についてどのように受け止めていますか

ちょうど6月の全日本選抜(明治杯全日本選抜選手権)でも同じ相手だったので、もう少し差が縮まってるかなとは思ったんですけど、やっぱりそこは相手がうまくて全然自分の思うようにいけませんでした。スタンドで取られちゃってグラウンドにいけないという、自分のレスリングがうまいようにいきませんでしたね。

――明治杯の時と戦略などの面で変えたことはありますか

自分技とかあんまりないので、やっぱりスタンドで押し勝つというのを目標にして挑んだんですけど、相手の方が強かったので全然押せなかったですね。

――序盤からかなり積極的に攻めていましたが、攻めようと決めていましたか

はい。最初の1分半で攻めて、最初にグランドを取って返すというのを狙ってたんですけどできませんでしたね。

――投げ技が決まった場面では得点を分け合うかたちになりましたが、あの場面を振り返っていかがでしたか

あそこで自分が投げられて、投げた後にグラウンドを取られたところが痛かったかなと。グランドを取られて返されたところが。あそこ普通に返してそのままバック取られなかったら、4-4で自分の方がラストポイントで勝ってた状況だったので、グラウンドを取られたところがよくなかったと思います。

――フォール取られた場面を振り返っていかがですか

もう結構あのときはもうバテちゃって。強引にいったところをうまくきれいに投げられて。相手がうまかったですね、あそこは。

――今年1年の戦いの総括をお願いします

学生の戦いではインカレ(全日本学生選手権)で3位、グレ選(全日本大学グレコローマン選手権)では優勝だったので、まずまずの1年だったんじゃないかなと思います。

――来年は最上級生となりますが、目標をお願いします

来年は上の強い人たちがいなくなるので、学生の大会では全部優勝して全日本でいい結果を残せるように頑張りたいと思います。

山﨑弥十朗(スポ3=埼玉栄)

――今大会の結果を率直にどう受け止めていますか

動けてはいたので、普通に負けたというのが大きいですね。ラスト2分で足が動かなくなってきた場面で相手はしっかり動き切って負けてしまったのかなと思います。

――減量もあったと思いますが、コンディションの面はいかがでしたか

コンディションは悪くなかったんですけど、自分は減量していて、相手は減量していないところの差を埋めるのが大変だなと思いました。

――木下選手に対し、思うように攻め切れない局面が目立ちました

相手も自分を研究していて、警戒されていて。自分が前に出たところを掬うっていうのが相手の攻め方だったので。自分も攻めずに守って、最後2点取るっていうスタイルでもいいんですけど、それだと面白くないので、できるだけ攻めていったんですけど。勝てるチャンスは十分にあって、体の大きさやパワーは自分の方が上だと感じたので、その力を相手がうまく逃して、ポイントを重ねられたのが強かったのかなと思いますね。

――敗因としては何が挙げられるでしょうか

相手に主要となる警戒させる技がもう一つあればよかったんですけど、タックルとか動きにこだわり過ぎてしまって、パワーだったり強引に行く部分というのが足りなかったなと思います。

――昨年に続き初戦敗退となりましたが、天皇杯に対して悔しい思いはありますか

特にはないんですけど、天皇杯は1年の締めくくりという大会でもあるので、ここで負けると少し後味が悪い感じがしますね。苦手意識というのは特にはないですね。

――来年以降に向けて、どう取り組んでいきますか

やっていることは間違いじゃないと思うので、周りに色々と言われることもあると思うんですけど、自分に合っていると思うことを1年間続けていこうかなと思います。去年や今年は周りに流されてしまう部分が多かったので、自分がやりたいと思うことを1年間やっていこうかなと思います。

――来年度は主将としてチームを引っ張る立場ですが、意識することはありますか

ちょっとやり方は変えようかなと思っています。練習の質よりも量をやろうかなと思っているんですけど、言い方をよくすれば自主性と言いますか、強制はしない練習にしていこうかなと思っています。パワーといった部分も必要不可欠だと思います、自分の体格にあった人とやるのが一番だと思うので、出稽古とかも積極的に取り入れていくべきかなと思います。

梅林太郎(スポ2=東京・帝京)

――今回の結果についてどう受け止めていますか

悔しいの一言ですかね、やっぱり。

―保坂選手にあと一歩及びませんでしたが、振り返っていかがですか

内容も勝っていたし自分の中でも勝てると思っていたので、予備戦を除いて体の動きも良かったので、勝つっていう気持ちで行ったんですけど、自分の甘さも出て、その場面で足を触られたからケガをして追いつかれて負けてしまったので、そこでの差が出たと思います。リードした場面でもう一個取りに行こうという技術やスタミナがないとこういう結果になってしまうかなと思います。

――試合中に膝をケガなさいました

今年最後の試合でケガして、不幸中に幸いではありますね。勝ちたかったので、膝がこういう状態になっても続けて。保坂さんも強いので、最後はしっかりと守ってきて、足取られた自分が悪いですね。

――試合中のケガもありましたが、敗因としては何が挙げられますか

予備選は本当に足が動いてなかったんですけど、当日の74キロっていうのは勝ち上がるつもりで1ヶ月以上前から体重調整していたんですけど、いつもは試合の朝ギリギリに体重を切っているという感じなんですけど、今回は3日前から切っていて、体が軽かったんですよ。体が馴染んでいなくて、気持ちが悪かったんですけど2回戦からは徐々にいつも通りの動きになったんですけど、その分やっぱり悔しいですけど、取られてなければあと1ポイント取れていたかっていうのは難しい部分になるんですけど、あそこで2点与えてしまったというのが敗因だと思います。

――1回戦は明治杯王者の基山選手が相手でしたが、振り返っていただいていかがですか

正直僕は多胡島さんが上がってくると思ったんで、あまり意識はしていなかったんですよ。だた今年ワセダを苦しめた相手じゃないですか、リーグ戦で凌(米澤、スポ1=秋田商)が負けて、インカレで圭さん(スポ4=秋田商)と駿さん(伊藤、スポ4=京都・網野)が負けて。なので仁太郎とはやってみたいなとは思っていました。高校のインターハイでもやっていて、アカデミーの後輩でもあるので、先輩の意地もあったんですけど、自分のレスリングをやれば勝てる自信はありました。ただ最初に2点を取られて、自分は追いかける試合展開があまり得意ではないので、リズムを崩されかけたんですけど、駿さんや多胡島さん(佳伸、平成29スポ卒=現・KATSURA group)にアドバイスをもらっていたので、そこが生きたかなと思います。

――コンディション自体は非常に良かったように思えました

前に詰めて、足に触って、チャンスがあったらポイントを取るという。負けた試合もアクティビティタイム2回取っていて、僕のパターンに持ち込めたんですけど、その中で負けたということは実力不足だと思います。悔しいの一言ですね。

――今大会は自信になった部分も多いのではないでしょうか

だいぶ多いですね。勝てた試合って言ったら失礼かもしれませんけど、やりようによっては勝てるくらいのレベルにいるなっていうのはわかったので。

――今年1年を振り返っていかがですか

再三再四、メダルを取りたいと言っていたので、悔しいですね。とりあえずは明治杯までにケガを完治させて、今以上にレベルアップして、次保坂さんに当たったらテクニカルで勝てるぐらいの高みに行きたいと思います。