12月21日から開幕する全日本フィギュアスケート選手権の競技前日、20日の公式練習で宇野昌磨は冷静な表情を崩さなかった。 宇野は、5年ぶりの全日本出場となった髙橋大輔と同じリンクに上がっての練習も、「見て学ばなければいけないこともたく…

 12月21日から開幕する全日本フィギュアスケート選手権の競技前日、20日の公式練習で宇野昌磨は冷静な表情を崩さなかった。

 宇野は、5年ぶりの全日本出場となった髙橋大輔と同じリンクに上がっての練習も、「見て学ばなければいけないこともたくさんあると思いますが、ここのところ試合でなかなかいい演技ができていないので、周りの人を見る余裕もないし、こういう場を楽しもうという気持ちの余裕もないです。今回は自分のいい演技をすることに集中していこうかなと思っています」と話した。



全日本3連覇を目指す宇野昌磨

 公式練習の曲かけは最初で、時間制限もあってフリーの曲は途中までの練習となった。

「本当はもうちょっとジャンプをやりたかったけど、一番目だったので無理して焦ってやるとよくないと思ったので、ジャンプはあまりやりませんでした」と宇野本人が言うように、滑り出してからは最初の4回転サルコウと4回転トーループはパス。その後、4回転トーループを跳んで、スピンを飛ばし、後半の4回転トーループからの連続ジャンプに挑んだがパンクして2回転に。そこで曲が終わったが、そのままトリプルアクセルまでを跳んだ。

 その後は4回転トーループ+2回転トーループをきっちり跳ぶと、4回転フリップは1回転倒した後にしっかり決め、4回転サルコウも3回目に決めた。トリプルアクセル+1Eu+3回転フリップから3回転サルコウ+3回転トーループまでを続けて、一度トリプルアクセルをきれいに跳んだ後の2回目にはイーグルから入るジャンプ。そのあとの単発の4回転トーループはターンを入れてから決めるなど、実際の試合を意識するジャンプ練習を見せた。

「曲ではあまり跳ばなかったですけど、ひとつひとつのジャンプを再確認しました。今までたくさん練習をしてきたので、試合に向けて調整できたらなということで、1本1本のジャンプを跳びました。毎年全日本は一番緊張感のある試合かなと思っていますけど、いい演技が2年間できていないので、今年はいい演技を目指して最善を尽くしたいと思っています」

 大会へ向けての目標を口にした宇野は、ここ2年の全日本で優勝はしたものの、ノーミスの演技はできていない。昨年はショートプログラム(SP)、フリーともに1位だったがSPでは4回転トーループ+3回転トーループが4回転+1回転になり、フリーでは後半の4回転フリップの転倒を皮切りに、2本の連続ジャンプでミスをしていた。また2016年のSPは最初の4回転フリップで着氷を乱し、次の4回転トーループは転倒して2位発進。フリーで逆転したが、最初の4回転フリップと4回転トーループでは着氷を乱していた。

 宇野は、今季のSP自己最高得点の104.15点を出したロンバルディアトロフィーでは、4回転トーループ+2回転トーループとレベルを落とした構成にしており、フリーのプランどおりの構成ではノーミスの演技ができていない。

 そんなモヤモヤした気持ちを、納得できる演技で晴らしたいという思いが、心の中に大きく渦巻いているのだろう。3連覇を狙う今回の全日本へ向けて、宇野自身の気持ちが少し変わってきている。

 昨季まで口にしていた最大の目標は、「しっかり練習して準備してきたことを、結果として表す」こと。だから十分な練習ができていなかったときは、結果が良くても納得せず、しっかり練習ができていたのに結果が悪いと「自分の努力を無駄にしてしまった」と悔しがる姿を見せていた。だが、グランプリ(GP)ファイナルから全日本へ向けた練習の手応えを聞かれ、宇野はこう口にした。


「練習でできていても本番ではできなかったり、練習ではできていなくても本番でできることがある。それが試合だと思っています。だから、練習での調子というのはあまり関係なく、気持ちをうまく持っていって成功につなげたらいいのかなと思っています」

 宇野は、この試合でもっとも成し遂げたいことは、「自分を信じること」と言う。それは、練習の出来不出来を気にすることなく、自分を信じてフラットな気持ちで試合に臨むということだ。これまで練習で積み上げてきたものがある。細かな調子の良し悪しを気にするのではなく、その積み上げてきたものを信じればいい。今年の全日本での宇野は、なにか吹っ切れたようなキレのある演技を見せてくれそうだ。