「前半が悪くて『自分がやらなきゃ』の気持ちでした」東京医療保健大はインカレ連覇を成し遂げた。去年の優勝メンバーの多くを残したチームが優勝候補と見なされたのは当然だが、「1年間、苦しかったです」と藤本愛妃は振り返る。優勝した直後でありながら、…

「前半が悪くて『自分がやらなきゃ』の気持ちでした」

東京医療保健大はインカレ連覇を成し遂げた。去年の優勝メンバーの多くを残したチームが優勝候補と見なされたのは当然だが、「1年間、苦しかったです」と藤本愛妃は振り返る。優勝した直後でありながら、喜びよりもホッとした感じが強い。

「去年は自分も大学で初めての日本一だったので、うれしさや感動は今回より大きかったです。『4年生のために』という気持ちは去年と変わらず、それを果たせて良かったです」

シーズンの最後を勝って締めくくったが、藤本はこう1年を苦しい思いとともに振り返る。「去年はメンバーも揃っていて、トーナメント準優勝、リーグ優勝とポンポンとインカレまで来たし、自信もありました。でも今年は春のトーナメント5位に始まり、リーグ戦から頑張ろうと思ったところで私個人はケガをしてしまって、リーグは3位。結果を出せないまま迎えたインカレで、去年ほどの自信があるとは言えませんでした。苦しい試合も多かったです」

リーグ戦は9勝5敗、藤本は序盤戦でプレーしただけで、あとは欠場した。かかと上部、距骨の疲労骨折。バスケ選手には珍しいケガでなかなか治らず、インカレも痛みを抱えながらのプレーだった。それでも激しいプレーを続け、愛知学泉大との決勝でも31分半のプレーで14得点9リバウンド。センターとしてインサイドを支え、勝負どころではきっちりと得点を奪った。

愛知学泉大の木村功監督は試合後の会見で、勝敗を分けた第3クォーターの攻防を藤本の名前を挙げて振り返った。「相手の攻撃のルートが分かっているけど同じところを繰り返しやられてしまった。ドライブとダイブ、特に藤本君のところをやられたのが痛かった」

藤本は「今日も痛みが結構強くて、自分の100%は出せなかったです。特に前半は全然ダメで、100のうち70ぐらいしか出せていなくて。でも、前半の入りが悪かった分、後半に入る気持ちは強かったです。点差もあまりなかったし、『絶対にやってやろう』、『自分がやらなきゃいけない』という気持ちでした」

第3クォーターに突き放した後、第4クォーターには綻びを見せない盤石の試合運び。これは苦しんだリーグ戦で得たメンタルの強さだった。「気が緩んでしまって10点差を詰められて苦戦することが何度もあったシーズンでした。だからリードしていても油断は全くなかったです」と藤本は言う。こうして85-76で愛知学泉大を退け、インカレ連覇を達成した。

インカレ3連覇へ「自分たちの代では圧倒的な力で」

苦しいシーズンをようやく終えたが、藤本にオフを楽しむ余裕はないようだ。「まずはリハビリに専念します。合宿もすぐあるので、ケガを治すことに専念しながらも体力は落とさないように。これでシーズンは終わりですけど、休もうとは全く思っていません」

今回のメンバーではキャプテンの若原愛美が卒業するが、それ以外のスタメンである藤本、永田萌絵、岡田英里、平末明日香が来年は4年生となる。「今までは『4年生のために』をモチベーションにしてやってきました。今度は自分の代になるので、意気込みもまた変わってくると思いますが、取れるタイトルは全部取る気持ちでやりたいです。新人戦には出ませんが、トーナメントもリーグも勝って、インカレも優勝して締めくくりたいです」

その来年に向けて、藤本は危機感を抱いている。「他のチームを見ると、ガードやフォワードは4年生が多くて入れ替わるんですけど、センターは4年生が少なくて、私がマッチアップする相手は来年もいます。よっぽど頑張らないと勝てないと思っています」

それと同時に、自信もある。主力メンバーが去年のインカレ初優勝から来シーズンまで持ち上がることは東京医療保健大にとって大きな強みだ。「去年も同級生が4人出て優勝して、今年もなので。自分たちの代では圧倒的な力で勝ちたい、勝たなきゃいけないと思っています」

しばらくは難しいケガと向き合うことになるが、来年のシーズンが始まる頃には『100%』の藤本を見られることに期待したい。