クラブチームと高校の垣根を越えてユース年代の日本一を決める、高円宮杯U-18プレミアリーグ2018ファイナルが行なわれ、サンフレッチェ広島ユースが6年ぶりの優勝を果たした。高円宮杯U-18プレミアリーグファイナルを制した広島ユース 現…
クラブチームと高校の垣根を越えてユース年代の日本一を決める、高円宮杯U-18プレミアリーグ2018ファイナルが行なわれ、サンフレッチェ広島ユースが6年ぶりの優勝を果たした。
高円宮杯U-18プレミアリーグファイナルを制した広島ユース
現在、ユース年代では全国のトップリーグとして、東西各10チームが出場できるプレミアリーグが行なわれているが、高円宮杯ファイナルは東西のプレミアリーグ王者が、日本一の座を争う決勝戦である。
プレミアリーグWESTを制した広島ユースは、同EASTを制した鹿島アントラーズユースと対戦。鹿島ユースの出足のよさと球際の激しさの前に、なかなか自分たちのペースで試合を進められなかったが、「僕も驚いたほど、前半の途中から(選手たちは)落ち着いた」(広島ユース・沢田謙太郎監督)。
DFラインからしっかりと攻撃を組み立て、ピッチを横に広く使ってボールを動かせるようになった広島ユースは前半37分、ゴール前にフリーで走り込んだFW鮎川峻が、左からのクロスを頭で合わせて先制。後半8分には、相手のハンドで得たPKをMF大堀亮之介が落ち着いて決め、2点をリードした。
その後、鹿島ユースに1点を返されたものの、「最後はああなる(相手に押し込まれる)のはわかっていた。体を張ってよく守ってくれた」(沢田監督)。広島ユースは最後まで追加点を許さず、2-1で逃げ切った。
これで広島ユースは、東西プレミアリーグ王者が対戦する現行の大会方式になった2011年以降、4度目のファナル進出で3度目の優勝。トーナメント方式で行なわれていた2010年以前にも2度の優勝経験があるのだから、ユース年代における広島の充実ぶりは際立っていると言っていい。
とはいえ、最近の広島のトップチームを見ていると、ユース年代の充実ぶりがうまく生かされていないように感じてしまう。
広島は、長らくミハイロ・ペトロヴィッチ監督(現コンサドーレ札幌)が率いて攻撃的なスタイルを確立したあと、森保一監督(現日本代表)が前任者の築いた土台を生かしたうえでディフェンスを整備し、広島を勝てるチームに仕上げた。長期的視野に立った強化の成果が、2012年からの4シーズンで3度のJ1優勝である。
その間には、森﨑和幸、森﨑浩司、高萩洋次郎(現FC東京)、森脇良太(現浦和レッズ)、野津田岳人(現ベガルタ仙台)といった広島ユース出身者が活躍。その他にも青山敏弘、清水航平(現ヴァンフォーレ甲府)、浅野拓磨(現ハノーファー/ドイツ)といった、高卒の生え抜き選手が主力を成しており、いわば”育成力”をトップチームの強さにつなげていた。
ところが、昨季途中、成績低迷によって森保監督がクラブを離れると、志向するサッカーは大きく転換。広島の代名詞だった3-4-2-1は、4-4-2や4-2-3-1へと形を変え、その中身も、相手の守備網を広げながらじっくりとパスをつないで崩すものから、縦へ速く攻める現実的なスタイルへと変化していった。
変わったのはスタイルだけではない。ピッチに立つ選手の顔ぶれを見ても、広島の武器だったはずの育成力は次第に弱まり、他クラブからの移籍組が中心に。と同時に、ベテラン選手が多くなったことで、今季は先発メンバー11名の平均年齢が30歳を超えることも珍しくなかった。
Jリーグのみならず、世界的な常識に照らしても、平均年齢30歳超はちょっとした異常値。今季のJ1で開幕当初から首位を独走していた広島が、ラスト9試合で6連敗を含む7敗2分けと急失速し、易々と川崎フロンターレに逆転優勝を許したことと無関係ではあるまい。
ベテラン頼みの現実的なスタイルは、昨季の15位から今季の2位へと、順位のうえでは大きな成果を挙げたものの、すでに限界が見えている感は否めない。
だからこそ、6年ぶりに日本一の座に就いたユース世代をはじめとする、若手が果たすべき役割は、否が応でも大きくなる。
広島ユースのキャプテンにして、すでにプロ契約を結び、トップチーム昇格が決まっているMF松本大弥が語る。
「今年のトップ(チーム)はベテラン中心で平均年齢が高かった。日本代表でも森保監督が『(世代間の)融合』と言っているように、サンフレッチェでももっと若い選手が試合に絡まなければいけない。そうなれば、チームに勢いがつくと思うし、自分たちが活躍していかないと。来年は(1年目でも)そのつもりで挑戦したい」
ともに来季からトップチームに加わる、松本とMF東峻希は「夏からずっとトップの練習に参加していた」と沢田監督。「彼らがトップの(練習で身につけた)スピードと重みみたいなものを(ユースの練習で)ぶつけてくれた。ユースだけなら、ここまでできなかったのではないか」と、頂点にたどり着いた要因について語るが、今度は彼らがトップチームを刺激する番だ。
J1では来季から、外国人選手の登録枠が撤廃(出場は5人まで)される一方で、ホームグロウン制度が新たに導入される。制度の詳細についてはここでは省くが、簡単に言えば、自前のアカデミー(育成組織)出身の選手か、高卒新人の選手を、一定数登録することが義務づけられるというものだ。これから先、各クラブのユースチームが、今まで以上に重要な役割を担うことになるのは間違いない。
6年ぶりに日本一を奪還した弟分の活躍が、かつては育成力を武器にしながら、現在、大きな転換期に差し掛かっている兄貴分を、どれだけ刺激することができるのか。
来季の広島に注目である。