しっぽの付いた「ボールキッズ」にレジェンドたちメロメロ? チャンピオンズテニスでワンダフルな試みATPチャンピオンズツアーのフィナーレを飾るチャンピオンズテニスが、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで開催された。12月9日までの4日間に…

しっぽの付いた「ボールキッズ」にレジェンドたちメロメロ? チャンピオンズテニスでワンダフルな試み

ATPチャンピオンズツアーのフィナーレを飾るチャンピオンズテニスが、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで開催された。12月9日までの4日間にわたり伝説的な名プレイヤーたちが熟練の技を披露したこの大会では、愛らしい3頭の「ボールドッグ」が話題に。この日のために特別な訓練を受けた犬たちがコートからボールを回収し、観客を沸かせた。

◆3頭が大活躍 そしてサプライズの4頭目とは?

ボールドッグの活躍をBBCは動画付きで報道。コート上のボールを咥え、愛嬌を振りまきながらも素早く回収している。介助犬たちが人助けのプロであることを考えれば、この試みの成功は何ら不思議なことではない、と同局は述べ、ボールドッグたちの功績を讃えた。

客席の話題をさらった彼らだが、登場も華々しかったようだ。当日はボールドッグたちの入場に合わせ、アリーナの音響システムから陽気なバハ・メンの曲『Who Let The Dogs Out?』が。観客の喝采を浴びながらの入場となった(RT)。

出場選手のなかでも、現役時代に「コートの魔術師」の異名を誇ったマンスール・バーラミ(イラン、62歳)は、とりわけ犬との交流を楽しんだようだ。ロイターの動画クリップによると、なかなかボールを取ろうとしないボールドッグに、観客席からは温かい笑いが。すると、プレー中のバーラミが突然コートに四つん這いになり、「こうするんだよ」とばかりにボールを口で咥える。とっさに4頭目のボールドッグとなった茶目っ気たっぷりのレジェンドに、観客席から惜しみない拍手が贈られていた。

◆特別なトレーニングで期待に応える

各メディアは大会開始前から、今回の新鮮な試みに注目。尻尾を揺らしたフレンドたちの新しい歴史が始まる、と豪ニュースサイトPerthNowは事前に報じていた。ジョン・マッケンローやゴラン・イバニセビッチら伝説的なプレイヤーにボールを届けると報じ、その責任の重さを強調している。同誌によると大会側も、新顔のボールキッズたちの活躍に期待を表明していた。伝説の選手たちと卓越したボールドッグたちの協業は素晴らしいものになるだろう、と大会マーケティング・ディレクターのチャーリー・グレイブ氏は述べている。

こうした期待に応えるため、ボールドッグたちは事前に特別なトレーニングを受けていた。介助犬トレーナーによると、物を取ってくる動作には慣れているが、通常の「お仕事」ではテニスボールを使うことはないとのこと。そこで事前にテニスコートに赴き、プレイヤーとボールに慣れる訓練を重ねた、とRTは舞台裏を明かしている。当日の評判を見るに、入念なトレーニングが実を結んだようだ。

◆介助犬の理解広める契機に

今回の企画は、大会スポンサーのサフォーク社がドッグフードを製造している縁で、介助犬の養成団体「ケナイン・パートナーズ」とコラボして実現したもの。East Anglian Daily Times紙によると、同社会長のスキナー氏の家系は、7代にわたり飼料を製造してきた。1970年に現会長のロジャー・スキナー氏が、まだ競合の少なかったドライ・ドッグフードの製造を開始し、これが犬との関係を強めるきっかけになったようだ。とはいえテニスとの関わりは今回が初めてで、イベントへの協力を通じてスポーツへの見識を深めたい、と同社のマーケティング責任者は意気込みを新たにしている。

人間の生活をサポートできる介助犬たちにとって、ボールを取りに行くのは朝飯前かもしれない。Tennis World USA誌は、団体代表のコメントを掲載。トレーナーによると、介助犬はパートナーとして人に安心感をもたらすだけでなく、洗濯機への衣類の投入や取り出しなどを器用にこなすという。ボール・ボーイとしての活躍は、トーナメントに華を添えるだけでなく、介助犬の多才ぶりをPRする好機になったようだ。

(テニスデイリー編集部)

※写真はボールドッグのイメージ(c Antonio / shuterstock.com)