2004年のサービス開始以来、14年にわたって提供してきたソーシャルネットワーキングサービス(SNS)『mixi(ミクシィ)』や大人気スマホゲームアプリ『モンスターストライク』の開発・運営を手がけるミクシィ。 そんなコミュニケーションツー…
2004年のサービス開始以来、14年にわたって提供してきたソーシャルネットワーキングサービス(SNS)『mixi(ミクシィ)』や大人気スマホゲームアプリ『モンスターストライク』の開発・運営を手がけるミクシィ。
そんなコミュニケーションツールやアプリゲームがメインの事業である同社だが、現在はエンタメ事業を展開する「XFLAG(エックスフラッグ)スタジオ」がJリーグのFC東京と、Bリーグの千葉ジェッツをスポンサードしており、スポーツ界を盛り上げるべく様々な取り組みを行っている。
これまでエンターテイメントに力を注いできたミクシィが、なぜスポーツ領域に参入することを決めたのか。そしてスポーツとエンタメが融合することにより、どのような価値が生まれるのか。ミクシィのライブエクスペリエンス事業本部スポーツマーケティング室スポーツマーケティング推進グループの柴篤志さんに話を聞いた。
取材・文/佐藤主祥
《ミクシィ記事前編はこちら》 2017年8月に千葉ジェッツとパートナーシップ契約を締結したミクシィの「XFLAGスタジオ」(以下、XFLAG)。今年の3月3日・4日に船橋アリーナで行ったホームゲーム、サンロッカーズ渋谷戦では、Bリーグにおいて初の冠試合を開催した。
両日とも試合演出をXFLAGがプロデュース。オープニングでは、千葉ジェッツの富樫勇樹に扮したパフォーマー集団「富樫ーズ」と「モンスターストライク」(以下、モンスト)の人気キャラクターによるパフォーマンス集団「XFLAGパフォーマーズ」によるダンスを披露。また、両ゲームの画面をプロジェクションマッピングで映し出し、それぞれのゲームの世界観とバスケットボールを掛け合わせた演出を行うなど、会場に集まったブースター(ファン)を盛り上げた。
それに引き続き、3シーズン目を迎えたBリーグ開幕戦(10月4日・6日)の川崎ブレイブサンダース戦で、XFLAG冠マッチ『XFLAG DAY』を開催。ハーフタイムショーでは、10月5日から全国公開した劇場版アニメ「モンスターストライク THE MOVIE ソラノカナタ」で映画主題歌を担当したきゃりーぱみゅぱみゅさんが登場。劇場で流れる「キズナミ」を熱唱し、ブースターだけでなく“モンストファン”も魅了した。
そんなサプライズ演出に加え、他にも様々なプログラムが盛り込まれたこのXFLAG DAY。開幕戦を盛り上げるべく、ミクシィの武器であるエンターテイメント性をフル活用したと、柴さんは説明する。
「船橋アリーナに来た方には、試合はもちろん、プロジェクションマッピングや試合開始前のエンターテイメントショーを間近で楽しんでもらえました。また、試合観戦に来られなかった人には、千葉ジェッツとBリーグにも協力してもらい、イオンモール幕張新都心とイオンモール柏の2会場でパブリックビューイングを開催しました。そこでもアリーナ同様に来場者に配布する限定Tシャツを配り、ジェッツカラーである赤に染め上げ、一体感を生み出しました。
加えて、パブリックビューイングにもMCの方に来て頂き、応援を誘導してもらったんです。『チケットを取れなかった』『生で見られなくて残念』という方にも、現地と同じような“観戦体験”を味わって頂けたと感じています」
さらに、開幕戦では遠方のブースターにも楽しんでもらうため、会場からの生中継をソフトバンクが提供する『バスケットLIVE』協力のもと、XFLAGの各公式YouTubeチャンネルにてライブ配信を実施。また、自社のカメラマンも会場に入れることで、試合開始1時間前に行われるショーコンテンツから“オリジナル映像配信”を可能とした。
だが、XFLAGの取り組みはこれだけでは終わらない。
YouTubeチャンネルのライブ中継では、実況席にスペシャルゲストを招き入れた。4日の試合では千葉ジェッツの佐藤博紀GM、6日には富樫の父親であり、先日のインターハイで初優勝を成し遂げた、開志国際高校(新潟)男子バスケットボール部の監督でもある富樫英樹さんが試合を解説。富樫の父親である英樹さんの解説では、息子のプレーや昔話など、ここだけでしか聞けない“マル秘エピソード”も飛び出した。
XFLAGの取り組みによって、地元だけではなく、全国の千葉ジェッツブースターが様々な角度から楽しむことができた2018-19シーズン開幕戦。こうした新たな挑戦によって、今まで以上にファンとチームや選手を身近なものにし、より強い絆が生まれることは間違いない。 千葉ジェッツの開幕戦で開催した『XFLAG DAY』では、昨季まで現役選手としてコートに立ち、現在は同チームの事業部長を務める伊藤俊亮さんがプログラムコンテンツの1つとして参加。XFLAGとは、チームを支える活動の一環として一緒に事業を取り組んでいる関係でもある。
伊藤さんは現役時代“イートン”の愛称で親しまれ、バスケ界を盛り上げるべくSNSでの発信を積極的に行ってきた。そんな人気者で、競技の現場を熟知しているからこそ、伊藤さんと活動を共にする柴さんは、アスリートによるサポートの必要性を感じていた。
「今回、XFLAGと千葉ジェッツとの向き合いを表現したPV(プロモーションビデオ)を制作したのですが、その撮影で伊藤さんと一緒に船橋アリーナにお邪魔したんです。そのときに、選手の練習を見にきていたブースターの方々が『あっイートンだ!』って、こちらに駆け寄ってくるんです。そこで、声をかけてくれた方々に『撮影に協力してもらえませんか?』とお願いをして、たくさんの方に協力してもらえました。これも伊藤さんが愛されているプレイヤーだったからこそ実現したことですので、こういったアスリートの方のお力添えは必要なんだなって、一緒に仕事をしてみてすごく感じましたね」
このPVでは『XFLAGはスポーツ観戦という熱狂をファンの方々と一緒に育てたい』というテーマを掲げ、ブースターの“千葉ジェッツ愛”や、その熱狂ぶりを詰め込んだ映像を制作した。そのため、ファンの協力なくして完成させることは不可能。だからこそ、制作側とファンを結びつける“イートン”の存在は大きなものとなったのだ。
ちなみに、伊藤さんはバリバリのストライカー(モンストプレイヤー)でもある。モンストと千葉ジェッツはこれまで様々なコラボ企画を実施しており、Bリーグの試合に勝てば、ゲーム内でもらえる報酬が増える仕組み。ユーザーにとって千葉ジェッツの勝敗による影響は大きく、モンストとの新しいコラボ企画が立ち上がればと、伊藤さんは前のめりだ。
「僕らが何か企画を提案すると『えっまじですか!?』みたいな感じで、伊藤さんがすごく良いリアクションくれるんですよ(笑)。ある意味、ユーザーの反応をダイレクトに感じることができるので、とても嬉しかったりしますね」(柴さん)
この取り組みにより、Bリーグが行われる週末には、たとえブースターではなくとも千葉ジェッツの試合結果を追いかけるようになる。それによって、陰ながらに応援してくれるユーザーを増やすことに繋がるのだ。
このことから分かるように、XFLAGの『スポーツ×エンタメ』の施策は、スポーツの認知拡大を狙うことができ、様々な角度から試合を盛り上げることができる。現在はバスケットとサッカーに注力しているが、“もっと熱量を高めたいという競技があれば、一緒になって“熱狂”を生み出していきたい”と、ジャンルの異なるスポーツにも協力していく構えだ。
今後も、XFLAGのエンターテイメントとスポーツのコラボレーションによって生み出される“熱狂”からは目が離せない。
※データは2018年12月13日時点