ニューカッスル・ユナイテッドのFW武藤嘉紀が、いつになく悔しそうな表情を浮かべて試合後の取材エリアに現れた。 12月9日に行なわれたニューカッスル対ウルバーハンプトン・ワンダラーズ戦で、武藤は2試合連続でベンチスタートを命じられた。しかし…

 ニューカッスル・ユナイテッドのFW武藤嘉紀が、いつになく悔しそうな表情を浮かべて試合後の取材エリアに現れた。

 12月9日に行なわれたニューカッスル対ウルバーハンプトン・ワンダラーズ戦で、武藤は2試合連続でベンチスタートを命じられた。しかし出番は最後までなく、チームも1-2で敗戦。左ふくらはぎにケガを抱えてから、武藤は5試合連続でピッチに立っていない。



ウルバーハンプトン戦でもベンチの武藤嘉紀に声はかからなかった

 そのうちの3試合は、負傷離脱中でメンバー外となった。ケガが癒えた前節のエバートン戦で戦列に復帰したが、前節に続いて今節も出番がなかった。しかも、チームは後半アディショナルタイムに決勝ゴールを浴びて敗戦──。負傷前にレギュラーの座を一度掴んでいただけに、武藤は悔しさをにじませた。

「ケガをしてしまい序列が下がったわけですから。(FWアジョセ・ペレスなど)ライバルも点を獲っているわけだし、本当に早くピッチに立ちたい。最初は途中出場からになりますけど、そこで点を獲ってアピールしなければ」

 ウルバーハンプトン戦のニューカッスルは、3-4-2-1でスタートした。だが、57分にアメリカ代表DFのデアンドレ・イェドリンが相手のユニフォームを背後から引っ張り、退場処分を受けた。ここから、残りの30分以上を10人でプレーするという厳しい戦いを強いられた。

 退場処分の影響は交代策にも出た。ハーフタイム時に負傷者が出たため、交代枠は残りふたつ。その影響で、ラファエル・ベニテス監督は試合終盤まで交代カードを切らなかった。しかも、86分と89分にCFサロモン・ロンドンを含む前線の選手を交代しながら、武藤の名が呼ばれることはなかった。

「FWのサロモン(・ロンドン)を代えたが、そこで自分が入っていけなかった。『前へ行け』『前線でボールを収めろ』という狙いがあったと思うんですけど、自分ではなかった。ここ2試合は負傷明けの状態でしたが、今日の試合はかなりいい準備ができていました。(再発する)不安もなくなっていたので、試合に出たかったです」

 チームの負け方も厳しい。10人で戦いながらも守備陣が踏ん張り、90分まで1-1で持ちこたえていた。しかし、90+4分に決勝ゴールを被弾──。

 失点後、DFのキアラン・クラークはボールを大きく蹴り出し警告を受け、MFのケネディは試合が終わると頭を横に振りながら、あっという間に選手通路口へ消えていった。これでチームは3戦未勝利。試合後の更衣室は、非常に重苦しい雰囲気だったという。

「チームがこういう最悪な雰囲気で負けてしまった。もちろん、それを望んでいたわけじゃないが、ベンチにいる人間としてはチャンスです。これをチャンスと捉えないといけないと思います。来るべきチャンスに向けて、とにかく準備だけは怠らないようにしなければ。自分にチャンスが回ってくる予感はしています」

 ニューカッスルの次戦は、12月15日にアウェーで行なわれるハダースフィールド・タウン戦。それが終わると、中2、3日で試合が次々と押し寄せる「年末の過密日程期」に突入する。

「日程がかなり詰まっているので、そこで結果を出さないと、それこそ本当にポジションがなくなってしまう。今もケガをして序列が下がっているわけですから。ライバルも点を獲っているわけだし、本当に早くピッチに立ちたい。最初は途中出場からになりますけど、そこで点を獲ってアピールしないといけない。

(記者:コンディションを上げて出番を待つ?)間違いないですね。本当に総力戦だと思いますし、ケガ人も絶対に出てくる。自分がケガをして、チャンスを得た選手もいるので。こういう小さなケガもしていられないし、(今の状況に置かれたのは)本当に自分のせいだと思うので。とにかく、もうケガを繰り返さないように。ポジションを取れるように、もう一度最初からアピールしていかないといけない」

 もちろん、FWとして危機感も募らせている。各クラブが豊潤な補強費を持つプレミアリーグでは、積極的な選手補強で弱点を補うことが容易にできる。FWとして結果を残さなければ、冬の移籍市場で代わりのストライカーがやってくる可能性もあるだろう。こうした競争の激しさも、プレミアリーグの特長のひとつだ。

「(記者:冬にFWが加入する可能性もある?)間違いないですね(苦笑)。それがプレミアリーグですし、やっぱりお金があるので。十分に起こりうること。自分のことが必要なくなったら、たぶん『出て行ってくれ』と言われると思います。

 その難しさはもちろんあるけど、それを求めてイングランドに来たわけですから。ここでもう一回、こういう苦しい思いをしながら結果を出すことによって成長できる。そのためには、まず試合に出ないといけない」

 自分自身に言い聞かせるように、武藤は何度も何度も「試合に出ないといけない」と口にしていた。気がつけば、シーズンの折返し地点まで残り3試合──。定位置を再奪取するためにも、武藤にはゴールやアシストの結果を残すことが求められている。