2004年のサービス開始以来、14年にわたって提供してきたソーシャルネットワーキングサービス(SNS)『mixi(ミクシィ)』や大人気スマホゲームアプリ『モンスターストライク』の開発・運営を手がけるミクシィ。 そんなコミュニケーションツー…
2004年のサービス開始以来、14年にわたって提供してきたソーシャルネットワーキングサービス(SNS)『mixi(ミクシィ)』や大人気スマホゲームアプリ『モンスターストライク』の開発・運営を手がけるミクシィ。
そんなコミュニケーションツールやアプリゲームがメインの事業である同社だが、現在はエンタメ事業を展開する「XFLAG(エックスフラッグ)スタジオ」がJリーグのFC東京と、Bリーグの千葉ジェッツをスポンサードしており、スポーツ界を盛り上げるべく様々な取り組みを行っている。
これまでエンターテイメントに力を注いできたミクシィが、なぜスポーツ領域に参入することを決めたのか。そしてスポーツとエンタメが融合することにより、どのような価値が生まれるのか。ミクシィのライブエクスペリエンス事業本部スポーツマーケティング室スポーツマーケティング推進グループの柴篤志さんに話を聞いた。
取材・文/佐藤主祥 ミクシィの「XFLAGスタジオ」(以下、XFLAG)は、エンターテインメント事業のさらなる発展を図るため“ケタハズレな冒険を。"をテーマとして2015年に設立。「モンスターストライク」(以下、モンスト)などのゲームや映像コンテンツを世界に向けて、発信し続けている。
また、XFLAGがコンセプトとして掲げているのが『友達や家族が集まってワイワイ盛り上がれる空間作り』であり,そのキーワードとなるのが“B.B.Q.(バーベキュー)”。この“みんなで集まって楽しむ”というコンセプトに、スポーツの観戦スタイルがマッチしていると考え、選手のプレーを見て熱狂するファンの姿に親和性を感じ、スポーツ市場への参入を決めたという。
その中で、2017年8月に千葉ジェッツとパートナーシップ契約を締結。なぜ様々なチームがある中で、同チームのスポンサーとなり、支援することを決めたのだろうか。柴さんは、こう説明する。
「千葉ジェッツさんは、Bリーグ初年度の16-17シーズンから観客動員が圧倒的に多い。実際アリーナに試合を観に行った時も、すごくブースター(ファン)の方々の熱量が高かったんです。そんな光景を目の当たりにして、『このチームとならBリーグを一緒に盛り上げていける!』と感じたんです」
千葉ジェッツは、2年連続で年間の観客動員数リーグ1位を達成し、バスケット日本一を決める天皇杯では2連覇を達成しており、人気・実力ともに日本トップクラスだ。しかし、チームにとって1番の“武器”であるブースターの応援にも、ひとつ課題があるという。
「ホームである船橋アリーナの場合は、バックミュージックが流れるので、大きな声を出して応援しやすい。でも、アウェーや中立地開催のゲームでは、音楽を流せないこともあるんです。そうなると、ブースターの方々には自発的に声を出すことが求められるわけですが、環境が変わるとそれがなかなかできない。こうしたホーム以外での応援の仕方に対して、千葉ジェッツさんは課題感を抱いています。我々としては、何か手助けできることがあるんじゃないかと、試行錯誤している最中です」
プロ野球やJリーグには笛や太鼓、拡声器を使ってファンに指示を出す『私設応援団』が存在するが、千葉ジェッツにはそれはなく、アリーナMCが応援を誘導する。チームのイメージや雰囲気を考えると、この応援スタイルが合っているため、簡単に“私設応援団を作ります”と提案することはできないのだ。
そんなチーム事情を理解しているXFLAGだからこそ、この課題に対して最適な解決策を導き出すことができるかもしれない。その瞬間が訪れたとき、千葉ジェッツブースターの応援力はリーグで圧倒的な地位を築くことになる。 スポーツ領域への参入を果たしたXFLAGは、Bリーグに続いて2018年1月、JリーグのFC東京と新規クラブスポンサー契約を締結。これに伴い、2018シーズンより選手ユニフォームにXFLAGのロゴ掲出を開始した。同チームをサポートするに至った理由も、千葉ジェッツと同様“ファンの熱量”にあるという。
「FC東京さんは、我々と同じ首都・東京に拠点を置いているということもあり、その活躍ぶりは常々注目していました。その中で、試合中におけるサポーターの声援、その熱量はものすごく高い。そこに魅力を感じ、支援させて頂きました。日本サッカー界の中では特にポテンシャルを感じるチームでもありますし、観客動員数においてもJリーグ内では常に上位。我々が協力することで、その熱量をさらに高め、FC東京さんを中心にサッカー界をもっと盛り上げていけるのではないかと思っています」
柴さんは、FC東京のホームスタジアムがある飛田給で育ち、FC東京はスポーツチームの中でも1番近い存在だった。決して熱狂的なサポーターではなかったと話すが、学生だったころから好きな気持ちは揺るぎない。過去に在籍していた選手にも詳しく、クラブスタッフとFC東京談義を交わしても“ニッチなところ知ってるね(笑)”とよく突っ込まれるという。それゆえ、地元クラブに仕事で関れること対して“とても光栄”と感慨深げだ。
そして7月27日、味の素スタジアムで行うホームゲーム、V・ファーレン長崎戦でXFLAG初の冠マッチ『XFLAG Day』を開催し、FC東京との初のコラボイベントを実現。モンストユーザー5000組1万人を無料招待した。 また、試合当日にスタジアムの南側広場(アジパンダ広場)で開催される青赤横丁にて『XFLAG夏祭り』を実施。FC東京とのコラボ商品を販売する『XFLAG STORE出張販売所』の出店に加え、限定キャラクターを入手できる『STRIKE CHANCE』も設置。モンストユーザーはもちろん、それ以外のサポーターも楽しめるよう、夏祭りをイメージした催しや、ピッチのすぐ近くで試合を観戦できる、エキサイティングシートのを企画を行った。
「ものすごく反響がありましたね。試合は金曜日で『フライデーナイトJリーグ(Jリーグにおいて金曜日に開催される試合の名称)』だったんですが、それが実施されてからの最多観客動員数(2万3063人)を記録したんです。FC東京のサポーターも各々のTwitterで“平日開催なのに、こんなに人が集まってるなんて、すごい”って呟いていて(笑)。そういう意味では、このイベントはサポーターのみなさんに好意的に受け取っていただけたのではないかと思っています」
平日開催で観客動員数2万人超えは、FC東京はもちろん、Jリーグ自体を知ってもらう意味でも価値が高い。FC東京サポーターにモンストユーザーが多かった、という見方もあるが、それだけではないだろう。
例えば、ユーザーがSNSでXFLAG Dayについての情報を発信すれば“サッカーはあんまり観たことないけど、そんな取り組みをやっているんだったら行ってみようか”と、サッカーにあまり関心がなかったとしても、モンストユーザーであれば興味を示す可能性は高い。そういった“スポーツ観戦初心者層“も呼び込めたからこそ、この数字を出すことができたのではないだろうか。
そういう意味でも、世界中で4500万人を超える利用者数を誇るモンストとプロスポーツの“夢のコラボレーション”には、無限の可能性を感じてしまう。(前編終わり)
※データは2018年12月6日時点