侍ジャパン大学日本代表に選出されている東北福祉大の楠本泰史内野手(3年)は小、中学生時代に楽天・松井裕樹投手と、高校ではオリックス・若月健矢捕手とチームメイト。2人が待つプロの世界を目指す楠本は「いろんなことを学びたい」と意気込む。■小・中…

侍ジャパン大学日本代表に選出されている東北福祉大の楠本泰史内野手(3年)は小、中学生時代に楽天・松井裕樹投手と、高校ではオリックス・若月健矢捕手とチームメイト。2人が待つプロの世界を目指す楠本は「いろんなことを学びたい」と意気込む。

■小・中学校で楽天松井裕、高校ではオリ若月とチームメート、2人が待つプロの世界へ

 第40回日米大学野球選手権大会(ハードオフエコスタジアム新潟他)が12日から始まる。侍ジャパン大学日本代表に選出されている東北福祉大の楠本泰史内野手(3年)は小、中学生時代に楽天・松井裕樹投手と、高校ではオリックス・若月健矢捕手とチームメイト。2人が待つプロの世界を目指す楠本は「いろんなことを学びたい」と意気込む。

 6月下旬に開催された「第11回東北地区大学野球選手権大会」の決勝で東北福祉大は富士大と対戦。1点を追う9回裏、楠本は最後の打者になった。5回には同点打を放ったが、最後の最後で打てず、悔しさをにじませた。

「ロング(ヒット)を狙っちゃいました。欲を出したのが……。体が開いてしまって、バット(の軌道)とボールがちゃんと当たりませんでした。まだまだですよね。ああいうところで打たないと。チームが苦しい時に打たないと……」

 1年春のリーグ戦から出場を続け、コンスタントに結果を出してきた。楠本本人が「バットの芯に当てるのは自信を持っている」と話すように、バットコントロールはお見事だ。今春のリーグ戦では11打点で最多打点賞、3本塁打を放って本塁打賞を獲得した。

 打率は第5節までトップで「3冠なるか」と周囲の期待も膨らんだが、終盤で落としてリーグ2位。それでも、4割3分8厘と自己最高のリーグ戦打率を残した。代表選考合宿を見たスカウトが「あの中でもスイングは抜けていたよ」と感嘆の声をあげるほどの打撃センスがある、来年のドラフト候補だ。

 楠本は大阪・吹田市で生まれた。父親の教えで2才頃からはボールを触っていたという。小学1年の終わりに父親の仕事の都合で岡山県へ。少年野球チームに入ったのは岡山県の小学校に通っていた4年生からだ。小学6年になる時、父親の転勤で神奈川・横浜市の小学校に転校。そこで運命的な出会いがあった。

■松井裕との不思議な縁「やっぱり、お前たちは何かあるんだな」

 横浜で通うことになった山内小にいたのが、楽天(現在)の松井裕だった。転校生の楠本は松井裕から「何か運動していないの?」と聞かれ、「野球をやっているよ」と答えたという。横浜では、まだどこのチームに入るか決めかねていた楠本に「俺らとやろうよ」と元石川サンダーボルトへ誘ったのが松井裕だった。

 さらに……。楠本は横浜ベイスターズジュニア入りした経験があるのだが、「(セレクションを)一緒に受けに行こうよ」と声をかけてきたのも松井裕だったという。小学5年の時にはセレクションで落ち、悔しい思いをしていた松井裕に対し、岡山で小学校生活の大半を送っていた楠本は「ベイスタージュニアって言われても、『何それ?』って感じだったんですけどね」と笑いながら振り返る。よくわからないままにセレクションに参加したが、2人とも合格した。

 山内中に進んでからも青葉緑東シニアでともにプレー。野球チームは一緒だったが、クラスは一緒になったことがない。「でも、あいつのうるさい声は廊下から聞こえてきていましたけどね(笑)」。

 高校は花咲徳栄に進み、現在、オリックスでマスクを被る若月とチームメイトになった。楠本もプロのスカウトが注目する逸材だった。楠本本人もプロ志望だったが、花咲徳栄・岩井隆監督から「大学で大きくなってから上位(指命)で行きなさい」と、指揮官の母校である東北福祉大に送り出された。

 ちなみに、楠本の東北福祉大進学が決まった後、ドラフト会議があり、松井裕が楽天から指名された。大学とプロとカテゴリーは違うが、ともに宮城・仙台市へ行くことに。小、中学時代を知る人たちは「やっぱり、お前たちは何かあるんだな」と奇縁に盛り上がったという。なお、高校3年春の関東大会で2人は対戦している。

■「同じところで野球をやりたい。プロは小さい時からの目標」

 松井裕、若月の背中を追い、恩師の言葉を胸に大学では1年春から活躍する。

「テレビの向こう側で見るようになったので、同じところで野球をやりたいと思っています。プロは小さい時からの目標ですし」

 楠本はプロを「夢」ではなく、「目標」だと言った。そこに思いの強さが見える。「目標」に向け、今回の代表入りは貴重な経験になるはずだ。

「自分よりも上手な人ばかり。必死についていくだけです。京田さん(陽太、日大)、吉川(尚輝、中京学院大)さんなど、いい選手が多いのでいろんなことを学んできたいと思っています」

 2年秋のリーグ戦では、現DeNAで当時仙台大の熊原健人投手から本塁打を放っているが、その熊原も代表入りしたことで意識が高くなった選手だった。楠本も日の丸を背負うことで、さらに成長するはず。今回の代表入りは、「目標」に向けた大きなステップだ。

高橋昌江●文 text by Masae Takahashi