「気づいてました? 私のパワーカラーなんですよ」

ピンクのネイルを褒めると柳本あまねは、ニコッと笑った。

そういえば、あまねの持ち物はピンクが多い。

「一番やる気が出る色なんです。だからパワーカラー(笑)。合宿とか、大会の前にはサロンに行って、濃いピンクにしてもらいます」

お姉さん揃いの車いすバスケ日本代表の中でも、あまねの女子力は高い。

「フフフ…ありがとうございます。バスケから離れたら、女の子でいたいんです。女子大生だし。ガーリーなのは好きじゃないけど、カジュアルな感じが好き。でも…マッチョすぎて、大きめサイズのあるところじゃないと買えないんです。ブランドで言うとHoneysとかH&Mとか。袖口がダボっとしたやつ(笑)」

京都にある同志社女子大に通うあまねは、まだ20歳。

日本代表女子では最年少だ。

「高校1年の2014年のアジパラ(アジアパラ競技大会)から日本代表に入りました。でも2016年のリオパラリンピック直前で代表から外されて…すごい悔しい思いをしたんです。あの時の実力では、選ばれなくても仕方がないと思って納得したけど、時間が経つにつれて、どんどん悔しくなってきたんです。もともと負けず嫌いですし。それから練習にも気合が入りました。スイッチが入ったみたいな。あと車の免許を取ったというのも大きかったですね。高校時代は親の送迎で練習場所まで行ってたのが、自分で運転して行けますから」

あまねの両下肢機能障害は先天性ではなく、2歳4ヶ月の時に突然、歩けなくなったという。

「前の日まで、普通に走り回って、高いところからジャンプしたりしてたみたいです。それで朝起きようとしたら、脚が動かなくなって。原因は未だにわからないみたいです」

天真爛漫なあまねは、いつもニコニコと笑顔を絶やさない女の子だ。

「でも落ちてた時もあったんですよ。子供の頃ですけどね。嫌なこと言われたり、されたり腐るほどあります。リレーの時に『あまねちゃんと同じチームだと負けるからイヤや』って同級生の男の子に面と向かって言われたし、鬼ごっこの時もずっと逃げられて捕まえられなかったし、後は学校でボーリング大会に行った時も一緒にいた女子全員がスタスタスタ先に行っちゃって、私ポツン、みたいな。嫌な思いをする度に、めっちゃ落ち込んで泣いて学校休んでました」

そんなあまねは、小学校4年生の時にあるスポーツと出会う。

「姉と『ハイスクールミュージカル』っていう洋画を見ました。主人公がバスケ部に所属してて、それで単純にカッコいいと思って。もともと身体を動かすことは好きだったんです。だから何かしたいな、というのは思ってて。ある日、病院の先生に『私、バスケをやってみたい』って言ったら『車いすバスケっていうのがあるよ』って。それで『カクテル』っていう女子チームを紹介してもらいました。紹介からしばらくして神戸に車いすバスケの女子日本選手権を見に行ったんですよ。その時はもう6年生になってましたね。見た瞬間、『うわ』って衝撃が走りました。同じような障がい抱えてる、もしくは私より重度な人がいるのに走り回ってバーンって派手に転んだりして、『あー待って、みんなめっちゃカッコいいやん』って思って。もうそれから、やりたいモードに切り替わりました。すぐに『カクテル』に登録して今に至るって感じです」

今や日本代表では欠かすことの出来ないピースになっているあまね。女子では珍しいスリーも武器に得点力のあるローポインター(注:障がいの重度に応じた選手の持ち点が2点台以下の選手をローポインター、3点台以上をハイポインターと呼ぶ)だ。目前に迫る東京2020パラリンピック出場に向けて、練習の日々を送っている。

「まずは絶対出場! 今度代表から外れたら…もう無理です。有り得ないです。なので考えてないです。絶対出場して…目標は高く、金メダルですね!」

そういえば、あまねは金メダル以外にも夢があったはず。

「覚えてました? まだ月イチ、無理ならば2ヶ月に1回のペースで歩行訓練してます。フフフ…カツカツカツって音を立ててヒールを履くのが、もうひとつの夢です。2020が終わって金メダルの夢が叶ったら…とりあえず憧れてるファッションとか女性像に、健常者になれればなりたいなって思うんですよね。今だったら色々と服も限られてくるわけじゃないですか。そんなの全く気にせずにオシャレがしたいですね」

誰にでも優しくなれるようにと「あまねく」から名付けられた20歳の女の子。

胸いっぱいの夢を持ったあまねは、手に持ったパワーカラーのピンクのスマホを振りながらニコッと笑って練習に戻って行った。

【プロフィール】

柳本あまねさん

やなぎもと・あまね●1998年8月4日生まれ、京都府京都市出身

クラス:2.5/ポジション:フォワード/所属チーム:カクテル

2歳で病気により下肢機能障害となり、小学校6年生から車いすバスケを始める。所属のカクテルでは主力として活躍、現在、日本選手権を5連覇中。2014年仁川アジアパラ大会で初めての日本代表入り。その後もミドルシュートを武器に代表キャリアを重ねている。

※パラコミックとインタビュー、レポート記事、グラビアと全方位的にパラスポーツの魅力に迫った『パラリンピックジャンプVOL.2』(集英社)では、『リアル』の井上雄彦氏による、車いすバスケ日本代表の密着レポートを掲載。そちらもあわせてチェックを!