赤星憲広が語る阪神の現状【後編】前編はこちら>>──前回は野手陣の話を中心に伺いましたが、投手陣についてはいかがでしょうか。「昨年はリリーフ陣が頑張ったので、今年は先発の奮起に期待していましたが、最後まで苦しみました。11勝を挙げた(ラ…

赤星憲広が語る阪神の現状【後編】

前編はこちら>>

──前回は野手陣の話を中心に伺いましたが、投手陣についてはいかがでしょうか。

「昨年はリリーフ陣が頑張ったので、今年は先発の奮起に期待していましたが、最後まで苦しみました。11勝を挙げた(ランディ・)メッセンジャーは『よくやっている』としか言いようがありません。日米通算100勝に届かなかったのは残念でしたが、今年37歳になったベテランが毎年のようにローテーションを守り、2ケタ勝利を挙げているわけですからね」




矢野燿大新監督のもとで始動した阪神

──課題は野手と同じく、若手の伸び悩みにあると。

「そうですね。若手の投手は、秋山(拓己)の不調を引きずる形になってしまいました。開幕当初は高橋(遥人)が活躍の兆しを見せたものの、思うように結果が伸びず、後半に藤浪(晋太郎)が少し奮起した程度。結果として、昨年よりもリリーフ陣の負担が大きくなってしまった。能見(篤史)を後ろに回す起用もありましたが、持ちこたえることができない試合が多くなってしまいました」

──今年は首位のカープも投手陣が苦しんでいたように感じますが。

「確かに、2ケタ勝ったのは大瀬良(大地)と(クリス・)ジョンソンのみ。昨年15勝を挙げた薮田(和樹)は2勝にとどまり、野村(祐輔)も岡田(明丈)もそんなに調子はよくなかった。リリーフ陣も、(ヘロニモ・)フランスアがいなければ苦しかったでしょうね。その状況で勝てるのは、守備と走塁が圧倒的に優れているからです。

 守備に関しては、センターラインがしっかりできていますよね。田中(広輔)と菊池(涼介)の二遊間、センターの丸(佳浩)はもちろん、會澤(翼)が捕手の核になったことも大きいと思います」

──対して、今年の阪神はセンターラインを固めることができませんでしたね。

「来年に向けてセンターラインを固めることが急務ですが、それだけの選手が揃っていないのが現状です。今年頑張ったセカンドの糸原(健斗)も、あくまで”第一候補”。ショートは北條(史也)と鳥谷(敬)が再挑戦すると言われていて、他の選手との競争は注目ですが、スタメンに固定される選手はすぐには出てこないでしょう。

 捕手は梅野(隆太郎)がある程度の結果を残しました。盗塁阻止率を上げてゴールデングラブ賞を獲得したことに満足せず、レベルを上げていってほしいです。そして、僕も現役時代に守っていたセンターは、打撃よりも守備を重視するべきだと思います。現時点では中谷(将大)もしくは島田(海吏)になるでしょうか。いずれにせよ、現在はレフトが福留(孝介)、ライトが糸井(嘉男)とベテランが守っていますから、守備範囲の広い選手が必要なんです」

──センターは外野陣の要ということですね。

「センターの守備範囲は投手の配球にも関わってきますからね。ある先発投手は、以前に『センターが不安だと、外野に打たせてもいい配球ができなくなる』と言っていました。そうなると投球の幅が狭くなり、コントロールを重視するあまりに腕が思い切り振れなくなる。今の阪神はリリーフ陣が充実していますが、守備面の不安がなくなれば先発陣の成績もよくなり、リリーフ陣の負担が軽減されるという好循環ができるはずです」

──走塁に関してはいかがですか?

「これもカープから見ますと、四番の鈴木(誠也)まで足がありますし、打順の下位には野間(峻祥)、西川(龍馬)、安部(友裕)がいる、そうなると選手たちには、『繋げれば何とかなる』という意識が働きます。カープは盗塁数もリーグ1位(95個)ですが、あくまで”走塁力”が高いんです。エンドランや、内野ゴロでも常に次の塁を狙っていて、それを実現させる技術もある。

 対する下位のチームはそこが弱点になっています。リーグ5位の中日は、大島(洋平)と京田(陽太)の2人がそこそこ盗塁できて、平田(良介)も走塁のセンスがある。しかし外国人選手以降は走力が落ちます。最下位の阪神も、走力があるのは糸井、上本(博紀)、植田(海)ぐらい。低迷するチームは走塁力の差を埋めない限り、いくら投打を強化しても勝つことは難しいでしょうね」

──あらゆる阪神の課題が出てきましたが、矢野燿大新監督に期待することは?

「今年から2軍監督として指揮を執り、”超改革”を実行して12年ぶりにファーム日本一に輝きました。ウエスタン・リーグの最多記録を樹立した盗塁数(163個)に目が行きがちですが、ファーストストライクを狙う積極的な野球が結果に表れたんだと思います。

 今のタイガースは、すべてにおいて積極性に欠けています。簡単ではないでしょうが、1軍の選手たちにも”矢野イズム”を植え付けてもらいたいです。細かいところまで気を配れる監督なので、行けるところまで行ってダメでも、次の選択肢を考えて立て直すはずですから、期待して見守りたいです」