赤星憲広が語る阪神の現状【前編】 広島カープの強さが際立つ「1強5弱」の図式が明確になった2018年のセ・リーグ。広…
赤星憲広が語る阪神の現状【前編】
広島カープの強さが際立つ「1強5弱」の図式が明確になった2018年のセ・リーグ。広島以外の5チームがクライマックスシリーズ進出を争うなか、昨年2位の阪神タイガースにもチャンスはあったが、最終的には17年ぶりの最下位でシーズンを終えた。
「今年こそ」という思いを抱いていた阪神ファンも多かっただろうが、なぜチームはここまで苦しむことになったのか。かつて5回の盗塁王に輝くなど、阪神の絶対的なリードオフマンとして活躍し、現在は解説者を務める赤星憲広氏に、その原因を分析してもらった。
2018年シーズンをセ・リーグ最下位で終えた阪神
──今年、阪神タイガースはリーグ最下位となりましたが、この結果は予想されていましたか?
「開幕前に行なったセ・リーグ順位予想で、広島の優勝以外は悩みました。他の5チームは力の差がなく、どこがAクラスに入ってもおかしくなかったからです。僕はタイガースを2位と予想しましたが、球団のOBということで期待もあったかもしれません。他の解説者はBクラスと予想した方が多かったですし、評価は高くないと感じていました」
──昨年のリーグ2位でも、評価が高くなかった理由はどこにあったのでしょうか。
「昨年に登板が多かったリリーフ陣の疲労蓄積、(ウィリン・)ロサリオの出来次第という打線、それに、2年連続で活躍する若手の野手がいないこともマイナスポイントでした。2016年に活躍した髙山(俊)と北條(史也)、2017年に開花したかと思われた中谷(将大)も次の年に大きく調子を落としています。今年活躍した原口(文仁)も昨季は不振でしたから、真価が問われるのは来年です」
──若手選手がなかなか伸びてこない原因は?
「原因は、『自覚』と『自己分析能力』が欠けていることにあると思っています。1年を通して結果を出した選手は、翌年に相手チームから徹底的にマークされます。チームを背負う責任感を持って、野手であれば相手チームの攻めを分析し、それに対応できるかが長く活躍できるかの分かれ道になるのですが、残念ながらそういった選手は見当たりません」
──首脳陣の責任も大きいと思うのですが。
「もちろん責任がないわけではありませんが、選手がスランプに陥った時には決まって指導者に批判が集中しますよね。少なくとも僕が現役だった頃から、タイガースには『成績が上がらないのは自分たちのせいではない』という風潮があって、マスコミや阪神ファンの方々もそう錯覚しているところがあるんじゃないかと思います。今年は責任を負う形で金本(知憲・前)監督と片岡(篤史・前)ヘッド兼打撃コーチが退任されました。しかし今年に限らず、指導者は短いスパンで代わる可能性があることを、選手たちはもっと意識しないといけません」
──赤星さんがタイガースにいた2001年からの9年間でも、監督が4回代わっていますね。
「そうですね。プロ野球では選手生命よりも指導者の任期が短いことも多いんです。人が代われば教え方や考え方も変わりますから、自分のスタイルを築いていないと、言われたことをすべて鵜呑みにするだけで上積みがなくなってしまう。経験豊富な首脳陣に頼ることは悪くはないのですが、試合に出た時は誰も助けてくれませんからね。そこを、カープの”タナキクマル”(田中広輔、菊池涼介、丸佳浩)や鈴木(誠也)などはわかっている。彼らは、自分たちの力で今の立場を不動のものにしたんです」
──具体的にどう克服していけばいいのでしょうか。
「自分で『同じ過ちを犯さないためにはどうするか』を考え、実行することです。僕の現役時代の話になりますが、ルーキーとして迎えた2001年は僕のデータがないので、相手の投手もいろいろ試しながら投げてきました。内角の球を何本かヒットにできて打率が上がりだすと外角中心の攻めに変わっていったので、外角の球を待つことが多くなった。それがハマり、2割9分2厘でシーズンを終えて新人王を獲得することができました。
しかし翌年は、『これでもか!』と言わんばかりに内角を攻められました。それを無理して打ちにいき、自打球を当てて足を骨折してしまい途中からシーズンを棒に振ることになります。そこで、内角のボールへの対処を必死に練習して克服すると、もともと得意だった外角にも球が来るようになり、3年目のシーズンは打率を3割に乗せることができました」
──データの活用が重要になりますね。
「そのとおりです。常にデータを見ることで、『苦手なコースがなくなったら、今度は緩急を使うようになってきたな』『四球を出したくないから、苦しいカウントになったらこれを投げてくるな』という発見があるんです。僕は自分がランナーに出た時の、後続の打者に対する配球データもスコアラーさんにリクエストしました。盗塁のためでもありますが、それが別の形でも生かせたんです」
──「別の形」とは?
「僕が出塁すると極端に配球が変わることを、当時のチームメイトである関本(賢太郎)に伝えていました。『あの投手は、俺がランナーに出た時はこういう配球になる。盗塁の素振りだけするから、関本はこの球を狙ってくれ』といったように。そういった選手間のやりとりがチームに波及し、勝利に繋がっていきました。現在はどうなのかと、球団の関係者に『今のタイガースはどう?』と聞いてみたことがありますが、『そういったことは全然ないですね』と言っていましたね」
──今季のタイガースの打線も、そういった”繋がり”が物足りないように感じました。
「上本(博紀)がケガで5月に登録を抹消されてから、機動力も使えなくなってしまいました。2塁からワンヒットでホームに帰ってくるのが難しい選手が多かったので、バントのサインが出ていない時でも進塁打を打つ意識が大切なのですが……。追い込まれてサードゴロを打ち、ランナーを進められない場面が目立ちましたよね。これは采配以前の問題ですから、来年は自分でゲームメイクしながらプレーすることをより意識してほしいです」
(後編に続く)