*写真は早田ひな(日本生命レッドエルフ)/©T.LEAGUE<Tプレミアリーグ2018/19シーズン 11月21日(水)福井県営体育館>21日、卓球Tリーグ女子1位の木下アビエル神奈川(以下、KA神奈川)と2位の日本生命レッドエルフ(以下、…

*写真は早田ひな(日本生命レッドエルフ)/©T.LEAGUE
<Tプレミアリーグ2018/19シーズン 11月21日(水)福井県営体育館>
21日、卓球Tリーグ女子1位の木下アビエル神奈川(以下、KA神奈川)と2位の日本生命レッドエルフ(以下、日本生命)が対戦し、3-2で日本生命が勝利した。ポイントゲッターの袁雪嬌を欠くKA神奈川に対し、ここまでTリーグ全勝の早田ひなが2勝を挙げ、勝利に大きく貢献した。

世界ランク3位石川佳純の出場に加え、試合結果次第で首位が入れ替わる可能性のあった頂上決戦ということもあり、平日にも関わらず、福井県営体育館には1,673人のファンが訪れ、試合後には選手にサインをねだる長蛇の列ができた。

尚、チーム順位はKA神奈川が勝ち点1差で辛くも首位をキープした。

木下アビエル神奈川 VS 日本生命レッドエルフ 各マッチの解説

1番:長﨑 美柚/木原 美悠 0-2 常 晨晨/蒋 慧

1ゲーム目の接戦を実力者の常/蒋ペアが11-9で制すると、2ゲーム目も勢いそのままに序盤から3-0でリードする。ここで若手左腕の長崎と速攻の木原が組むKA神奈川ペアがたまらずタイムアウトを取る。しかしながらタイムアウト明けも日本生命ペアは反撃のスキを与えず、11-4でこのゲームを取り、ストレート勝ち。

日本生命ペアは、常が台上テクニックで崩して蒋がフォアハンドで決めるコンビネーションや、長崎にチキータをあえてさせてからのカウンター攻撃、チキータをさせないようにロングサーブを出してからラリーに持ち込むなど戦術の幅が広く、玄人好みの完成度の高いプレーで若手ペアの挑戦を一蹴した。

2番:浜本 由惟 0-3 早田 ひな

ともに長身でサーブの上手い早田ひな(身長:167cm)と浜本由惟(同174cm)の対戦となった第2マッチ。ラリー型の浜本の安定したブロックを早田がパワーで打ち抜く展開で3-0のストレートで下した。

早田は、1ゲーム目こそ浜本の強烈なサイドスピンのかかったハイトスサーブ(トスを高く挙げるサーブ)への対処に苦しみ、序盤はリードを許すも、徐々に順応しラリー戦に持ち込む。ブロックの得意な浜本に対し、早田はお構いなしに強力な威力の両ハンドドライブを振り回し、ブロックを打ち抜く展開が最後まで続いた。

浜本も流れを変えようとサーブを巻き込み(1ゲーム目とは逆回転のサイドスピンサーブ)に変えるも、ポイント差が開き精神的に余裕のあった早田はサーブが変わった1本目から必殺の逆チキータで得点し、2、3ゲーム目は終始流れを浜本に渡さなかった。

3番:石川 佳純 3-0 陳 思羽

Tリーグ参戦選手の中で最も世界ランキングが高い石川に台湾主力の陳が挑んだこの一戦。1,2番が1ゲームも奪えず、悪い流れで回ってきた3番の石川だったが、実力通りのハイレベルなプレーを見せ、終始陳につけ入るスキを与えなかった。特に2ゲーム目の3-4でリードされた場面から怒涛の8連ポイントを挙げ、一気に流れを引き寄せた。

石川の技術の中でこの試合で最も活躍したのは横回転サーブである。陳は石川のサーブのスピン量と回転軸の変化を見分けられず、レシーブが甘くなる。石川はそこを逃さず強打で打ち抜いていった。特に相手がブロックをしにくいミドルを狙うことで、得点を重ねた。

また、要所でチキータ(台上バックハンド)レシーブも積極的に取り入れるなど、高みを目指しプレーを進化させ続けている。

4番:長﨑 美柚 3-1蒋 慧

4番ではダブルスでも対戦した長崎と蒋がシングルスで相まみえた。この試合ではダブルスで敗れた長崎が、全ゲーム2点差という大接戦を制し、3-1で勝利した。

長崎の勝因は好調のバックハンドを起点に試合を組み立てられたこと。多彩なサーブをランダムに出すことで相手に的を絞らせず、レシーブがバックに集まるように工夫をし、バックハンドでチャンスメイクをしてから、威力あるフォアハンドドライブに繋げるシーンが多く見られた。また、サーブを台の中央やフォアサイドから出すことで、バックハンドでカバーできるエリアを広くしていたのも試合を有利に進められた要因となっていた。

長崎の勝利で2-2と並び、勝負の行方はビクトリーマッチに委ねられた。

5番:石川佳純0-1早田ひな

Tリーグ特別ルールにより1ゲームマッチとなる5番の試合。両チームのエース左腕同士が登場し、会場のボルテージは最高潮に。

試合開始早々、早田がバックハンド強打で先制すると、2本目は石川も負けじと猛烈なスピードのフォアハンドドライブで早田のバックサイドを打ち抜く。激しいビクトリーマッチの幕開けに会場がどよめいた。

この試合、はじめに主導権を握ったのは早田だった。Tリーグで多用している台の中央付近から出す巻き込みサーブ(サイドスピンの変化が見分けにくいフォアハンドサーブの一種)が石川のオーバーミスを誘い6-3とリードする。ここから両者のタイムアウトもはさみ、引き続き早田がリードをキープし、10-6とマッチポイントを握る。

しかし、追い込まれた石川がここで意地を見せる。石川は厳しいコースを突いた世界トップクラスの精度の高いプレーで、ミスが全く出なくなる。4連続ポイントで10-10のデュースに追いつき流れは完全に石川に戻ったかに見えた。

サーブが1本交代に変わった直後のサーバーは石川。石川の短いサーブに対し、早田のレシーブが甘くなり、石川の得意コースであるバック側に回転の残ったチャンスボールが上がる。石川はフルスイングのフォアハンドで決めに行くが、このボールがネットにかかる。

命拾いした早田は落ち着いてサーブに入る。早田が選択したのは、これまであまり使っていなかった切れた下回転だった。早田のサーブの回転量を石川も見抜けずチキータがネットにかかり勝負あり。10-12で早田がこのゲームを制し、ビクトリーマッチで初勝利を挙げた。早田はこれでTリーグ全勝を守った。

敗れはしたものの6-10からデュースに追いついた石川のガッツと集中力に感激したファンも多く、試合後には両チームに盛大な拍手が送られた。

11/21木下アビエル神奈川 2-3 日本生命レッドエルフ

長﨑 美柚/木原 美悠 0-2 ◯常 晨晨/蒋 慧
9-11/4-11

浜本 由惟 0-3 ◯早田 ひな
13-15/4-11/5-11

◯石川 佳純 3-0 陳 思羽
11-7/11-4/11-4

◯長﨑 美柚 3-1 蒋 慧
11-9/12-10/9-11/11-9

石川佳純 0-1 ◯早田ひな
10-12

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