多くの社会人選手がしのぎを削る全国社会人オープン選手権が2日間にわたり開催された。女子選手に限り大学生の出場が認められている今大会に早大からは59キロ級に小林奏音(スポ4=長野・佐久長聖)、62キロ級に小玉彩天奈(社1=高知東)がエントリ…

 多くの社会人選手がしのぎを削る全国社会人オープン選手権が2日間にわたり開催された。女子選手に限り大学生の出場が認められている今大会に早大からは59キロ級に小林奏音(スポ4=長野・佐久長聖)、62キロ級に小玉彩天奈(社1=高知東)がエントリー。小林は決勝で惜敗し2位、小玉は2試合をテクニカルフォール勝ちで見事優勝を勝ち取った。

★小玉圧巻の優勝!入学後3つ目のタイトルを獲得



敢闘賞を受賞した小玉

 3選手の出場のため、総当たり方式となった女子62キロ級1回戦。小玉は組手や差しの攻防から崩し切れない時間帯が続き、パッシブによる1点のみで第1ピリオド(P)終盤を迎えた。しかし、前半終了間際にフェイントから片足タックルで追加点を挙げ前半を折り返すと、流れに乗った小玉は第2Pに入ると立て続けにタックルを決め、11−0のテクニカルフォール勝ちで1回戦を制した。2回戦も第1Pは場外押し出しによる1点のみにとどまったが、後半に本来の実力を発揮。片足タックルからのローリングでリードを広げると、最後はカウンターからのテークダウンを奪い、テクニカルフォール勝ちで優勝を決めた。圧巻のパフォーマンスを見せた小玉は女子の部の敢闘賞を受賞。この優勝でジュニアクイーンズカップ、世界ジュニア選手権に続き、早大入学後3つ目のタイトルとなった。小玉は前半で実力を出し切れない点を課題として挙げたが、「自分から攻めていくという点は大学に入学してから確実に成長している」とここまでの手応えも示した。来月に控える天皇杯。国内最高峰の舞台での小玉の躍進に期待がかかる。

★小林、無念の2位。それでも見せた最後の意地



最後の試合を戦い抜いた小林

 天皇杯出場権を懸け臨んだ小林は1回戦、試合開始早々に立て続けに組手から相手を崩し大幅にリードを奪う。その後も攻撃の手を緩めず、第1P終了を待たずにテークダウンからフォール勝ちで決勝進出を決めた。決勝の相手は日大の今佑海。試合序盤にフェイントからのタックルで先制に成功した小林だが、その後は徐々に相手のペースに。第1P終了間際にはアンクルホールドで失点のピンチを迎えたが、なんとかしのぎリードを保ったまま前半を折り返す。しかし、その後も流れを取り戻せない小林は第2Pの1分30秒にテークダウンを奪われると、そのままフォールの体勢に。絶体絶命の状況に追い込まれたが、力を振り絞りフォールの体勢から抜け出した。しかしその後の猛攻も及ばす、ラストポイントの差で惜敗。試合終了を告げるホイッスルは同時に、18年間のレスリング人生に終わりを告げる笛でもあった。悔しさをにじませながら、それでもどこか晴れやかな表情でマットを後にした小林。「一般入試から入ってきて、チームにいい刺激を与えてくれましたし、4年間本当によく頑張ってくれたと思います」と小林の4年間を振り返った太田拓弥監督。その勇姿は次の世代へ受け継がれていくはずだ。

(記事、写真 林大貴)

※フリースタイルは10点差がつくとテクニカルフォールで試合終了となる


表彰式後の集合写真

結果

女子の部
▽59キロ級
小林 2位

▽62キロ級
小玉 優勝


コメント

太田拓弥監督

――今大会を振り返っていかがですか

奏音の最後の試合だったので優勝して終わらせてあげたかったですね。リーグ戦で全然勝てなかった悔しさもあったと思いますし、余計に勝たせてあげたかったんですけど。積極的に攻めていたので、ちょっともったいなかったかなと。フォールの体勢からよくブリッジで逃げたんですけど、それで全ての体力を失っちゃった感じでしたね。彩天奈に関しては安定した戦いぶりだったと思います。ただ、第1Pで見合う時間が長くてちょっと攻めあぐんでしまうところがあるので。前半でポイントを取れるようになればもっと自分の勝ちパターンっていうのができてくると思うので、その部分での課題が見つかったかなと思います。

――小玉選手は圧倒的な試合展開でしたが、天皇杯にも期待が持てますか

彩天奈も天皇杯で優勝してもおかしくない力を持っていますし、同級生の優衣(須﨑、スポ1=東京・安部学院)が活躍しているので、その相乗効果のようなかたちで彩天奈が活躍すれば優衣にとっても、他の男子部員にとっても刺激になると思います。明治杯(全日本選抜選手権)では表彰台に上がっているので、次は決勝に進出して。おそらく川井さん(友香子、至学館大)が上がってくると思うんですけど、どれだけ差が詰まっているか楽しみですね。

――小林選手を4年間見てきて、思うことはありますか

一般入試から入ってきて、真面目に取り組んでいましたし、どこもそうだと思うんですけど、早大のレスリング部っていうのはスポーツ推薦の選手だけのチームではいいチームにはなっていかないので。一般入試で入ったり、自己推薦で入ったり、大学から始めた者が集まる中で早大のレスリングの良さっていうものが出てくるので、一般入試組としてチームにいい刺激を与えてくれたと思います。ケガも多かったりもしたんですけど、4年間本当によく頑張ってくれたと思います。

小玉彩天奈(社1=高知東)

――優勝おめでとうございます

ありがとうございます!

――今大会の位置付けとしては

試合を重ねていく中で試合に対する慣れであったりとか、自分の中でレベルアップをしたいと思って臨みました。

――天皇杯へ向けた調整という側面が大きかったのでしょうか

そうですね、天皇杯につなげられるような試合にしたいというのがあって。ただメンバーを見ても世界選手権に出場する選手とか、全日本チャンピオンがいるとかではなくて、自分が天皇杯で活躍するためにも絶対勝たなければいけない、勝って当然の試合だったので、そういう気持ちで臨みました。

――2試合とも前半は崩し切れない場面が目立ちました

昔から点を取られてから自分のスイッチが入るタイプで。監督にも言われたんですけど、前半で自分の力を出し切れないのが課題ですね。前半に取られ過ぎてしまうと後半に追いつくこともできないので。前半の部分の課題っていうのが見つかったのでよかったかなと思います。

――今大会を通じて天皇杯につながる部分はありますか

自分から攻めていくっていう点は大学に入学してから確実に成長している部分ではあると思うので、そこを伸ばしつつ、前半で自分の動きがちゃんとできるように。自分から攻める姿勢を忘れなければ天皇杯でもちゃんと活躍できると思います。

――大学入学後3つ目のタイトルとなりましたが、ここまでの手応えとしてはいかがですか

高校3年生の時は優勝もほとんどできなくて。大学に入ってから3つもタイトルを獲れて、成長しているのかなと思う部分もあるんですけど、それ以外の面で見るとまだまだなところもあるので、もっといろいろな大会で活躍できるようになりたいです。

――天皇杯へ向けて、意気込みや目標等はございますか

五輪の予選が始まるので、自分の階級に下からも上からも強い選手が集まってくると思うんですけど、自分の動きを忘れずに、1勝でも多く勝てるように頑張ります。