関東大学リーグ戦(リーグ戦)もいよいよ大詰めを迎えた。この日幕を開けたのが早大、明大、東洋大、中大の上位4校のみで争われる順位決定リーグだ。早大は予選リーグでゲームウィニングショット(GWS)の末、惜しくも敗れた中大と対戦した。幸先良く…

  関東大学リーグ戦(リーグ戦)もいよいよ大詰めを迎えた。この日幕を開けたのが早大、明大、東洋大、中大の上位4校のみで争われる順位決定リーグだ。早大は予選リーグでゲームウィニングショット(GWS)の末、惜しくも敗れた中大と対戦した。幸先良く先制点を奪ったものの、その後は中大の固い守備に苦しみ追加点を奪うことができず。第3ピリオド(P)で得点を許しスコアは1−1のドローに。60分で勝ち切ることができなかった前回の対戦が頭をよぎる中、残り2分を切ってから好調のFW杉本華唯(スポ1=北海道・駒大苫小牧)が値千金の劇的決勝ゴールを挙げ、見事勝ち越しに成功。最後の最後に予選リーグ首位の実力を見せた早大が、優勝へ向け大きく前進する勝ち点3を手にした。

 試合開始早々、中大選手の反則により数的有利なPPとなる。この好機を生かすべく、早大は2本のロングシュートでゴールを狙った。その後も果敢に中大ゴールへ攻め込むと、PP終了間際の4分49秒。正確なパスレシーブで中大の守備を崩すと、FW澤出仁(スポ2=北海道・武修館)のパスを受けたFW青木孝史朗(スポ3=埼玉栄)がゴール左から冷静にパックを押し込んだ。幸先良く先制点を挙げ、流れに乗りたいところ。しかし、この日はそう簡単にはいかなかった。「きょうは動きが悪かった」と内藤正樹監督(平3二文卒=北海道・釧路湖陵)が振り返ったように、全体的に固さが見られ早大らしい攻撃のかたちをつくることができない。第2Pは中大の選手の反則が増え、数的有利な時間が長く続く。何とか追加点を奪いたいところだが、早大はそのアドバンテージを生かせず試合展開は拮抗(きっこう)したものとなった。攻撃陣が中大のGKを攻略できずに苦しい時間が続く中、早大の守備陣が奮起。あわやという場面も見られたが、抜群の安定感を誇る固い守備で得点は許さない。勝負の行方は第3Pへと持ち越された。


試合終了間際に勝ち越しゴールを挙げた杉本と沸き立つベンチ

 迎えた第3P。試合が動いたのは50分8秒のことだった。中大のカウンターから速いパスでDFを振り切られると、GKと一対一の状況をつくられ失点。土壇場で同点に追いつかれてしまう。前回の対戦ではGWSの末に敗れているだけに痛い失点となったが、そんな状況でも選手たちは冷静さを失っていなかった。「やってきたホッケーを最後まで続ければ何かあるんじゃないか」(杉本)。そして、残り時間もわずかとなった58分48秒。ゴール手前で待ち構えていた杉本が青木からパスを受けると思い切りよく一閃。杉本の放ったロングシュートは中大ゴールの左隅に突き刺さった。2次リーグのチーム得点王であるルーキーによる値千金の決勝ゴール。「仲間に生きたパックを渡したい。そういうことが最後の最後に1回だけできた」(内藤監督)。選手たちは氷上で強く円陣を組み大きな盛り上がりを見せた。ワンチャンスをものにした早大が、中大の6人攻撃を凌ぎ切り試合終了。価値ある1勝を手にした。


「気持ち的にも、体力的にもきつかった」というこの試合で最少失点に抑える奮闘を見せたGK谷口

 「産みの苦しみを味わっている最中」。この日の早大の戦いぶりを内藤監督はこう表現した。6年ぶりの優勝は手の届くところまできている。それだけに、優勝を意識するあまりの重圧が選手を襲っていることも事実だ。しかし、ベストパフォーマンスではない中で、終盤に追いつかれながらも最後には勝利を収めたことが今年のチームの実力を表している。また、苦しい時間が続いた中でも最小失点に留めることができたのも今後に向けての好材料だろう。長いリーグ戦も残すところあと2試合。そのうち1勝を挙げた時点で早大の優勝が確定する。「ワセダのホッケーを60分間貫き通すことだけ考えたい」(GK谷口嘉鷹、社3=東京・早実)。早大らしいホッケーで東洋大を撃破し、賜杯をつかむことができるか。ここからが本当の正念場だ。

※1 ペナルティーによる退場で相手チームより人数が多く、数的有利な状態をパワープレーと呼ぶ。

※2 ペナルティーによる退場で相手チームより人数が少なく、数的不利な状態をキルプレーと呼ぶ。

(記事 杉山睦美、写真 糸賀日向子、中澤紅里)

※( )内はシュート数

結果
早大ピリオド中大
1(15)1st0(9)
0(22)2st0(7)
1(13)3st1(12)
2(50)1(28)
得点経過
チーム時間ゴールアシスト1アシスト2PK/PP
早大04:498青木1澤出19杉本PP
中大50:0819岩沢88徳光20切江
早大58:4819杉本8青木
※PKはキルプレー、PPはパワープレー、PSはペナルティショットを指す
 なお、PK/PPの表記は早大にとってPKに当たるかPPに当たるかを表記するものとする
早大メンバー
セットFWFWFWDFDF
21矢島17高橋27前田33坂本25篠田
19杉本8青木1澤出29ハリデー13吉野
12飛田9生江14小澤田31大崎18羽場
15伊東 24河田2北村11加賀美10住友
GK34谷口 B-GK39村上
コメント

内藤正樹監督(平3ニ文卒=北海道・釧路湖陵) ※囲み取材より抜粋

――鈴木主将が不在でしたが、チームワークと言う意味では問題はなかったでしょうか

ロイは大事な選手ですけれども、ホッケーは一人でやるものではないですから。いないなら、いないなりの人間でやらなければいけません。きょうは前田(悠佑、社2=東京・早実)や、帰ってきた矢島(雄吾副将、スポ4=北海道・駒大苫小牧)が頑張ったのではないでしょうか。

――「一人でやるわけではない」と言うと、中大の蓑島選手がチームに復帰しましたが、特に意識することはなかったですか

帰ってきているのは知っていましたけど、やはりホッケーは一人でやるものではありません。そんなことで一喜一憂していたら、優勝なんて口にできません。

――立ち上がりの先制ゴールは大きかったですね

どうしても先制されると後手に回ってしまいますし、中央大学は力のあるチームなので、追いつくことすら厳しい状況になるのかなと思います。だから、先制に関してはよくやっと思います。ただ、きょうは動きが悪かったね。サボっているわけじゃないんだけど、自分で自分にプレッシャーをかけていましたね。産みの苦しみを味わっている最中です。

――「産みの苦しみ」というと、選手の誰も大学での優勝を経験していないための重圧があるということでしょうか

そうですね。高校で勝っている人間も何人かいるけれども、ほとんどが初めての優勝ですかね。5年か6年前にインカレで勝っていますけれども、今の4年生も優勝経験がありません。目の前でちらついて固くなっている様子が、ありありと出ていたかなと思います。

――「産みの苦しみ」と言う言葉が出ましたが、やはり優勝を意識していると言うことでしょうか

そうですね。これだけ勝ち点に表れていて、選手もどうしても見るので、最終的には自分で自分を苦しめていますね。敵は自分の中にいる、ということでしょうか。そういう意味では、我慢はできていたと思います。相手を圧倒することはできなかったけれども、同点にされても譲らなかったというところだけは、それが今年の実力なんでしょう。

――勝ち越しゴールを挙げた杉本選手の活躍を監督はどう見ていますか

彼はワセダのエースになって欲しいと思って推薦でとった選手なので、当然のことながら1年からバリバリ活躍して欲しいと思っています。

――きょうは決勝リーグになりましたが、ゲームプランに変化はないでしょうか

なんら変わることはありません。一生懸命前へ繋いで、パスレシーブをミスしないで、相手にパックを取らせないようにということですね。2点目はその賜物だと思います。それが他の場面ではできなかったので、点数がなかなか生まれなかったですかね。あとは、判断が遅かったですね。やはり、打たなければいけないところで打たないと、こういう試合になってしまうのかなと思います。

――同点にされたカウンターは少し嫌な雰囲気もありましたね

その前のプレーですね。アタッキングゾーンに入った後の細かいパスで、嫌だなとは感じていました。なるべくしてなったのかなと思います。それでも、連続失点しなかったところがせめてもの救いかなと思います。きょうはゴールキーパーが一生懸命頑張ってくれたので、そこに関してはきょうはゴールキーパーの試合かなと思います。

――第3Pに運動量が落ちたというよりは、最初から固かったと感じていましたか

固かったですね。もう少し動けるはずだし。中大がもう少し動いていれば、圧倒されていた可能性が高いかなと思います。17試合やっていれば、こういう試合があるのも仕方ないでしょう。

――勝ち切れた要因はなんでしょうか

最後の2点目でしょうね。自分が犠牲になっても、仲間に生きたパックを渡したい。そういうことが、最後の最後に1回だけできて、それを仕留めることができたということでしょうか。普段はもっとできるんだけどね(笑)。

――あと勝ち点3で優勝が決まる状況になりましたね

きょうと同じ苦しみをもう一回味わうしかないでしょうね。敵は自分の心の中にいるので、それを選手たちがどう処理するかですね。どこかで振り切らないと、東洋大も体が強いし、明大はもっとホッケーが上手なチームですから、すぐにひっくり返されてしまうと思います。

――試合前に固さを除くような言葉を掛けられましたか

いつも通りです。どんなもんかなと思ったら、やっぱり固かったですね。予想の範囲内の一番悪い方向に出ました。

FW飛田烈(商4=東京・早実)

――きょうの試合を振り返っていかがでしたか

優勝に向けてすごく大事な一戦で、みんな優勝というものを意識して固くなってる部分が少しあったんですけど、結果として勝ち点3を取れたのはすごく大きいと思います。

――ロイさん(鈴木主将、教4=北海道・苫小牧東)はどうしたのでしょうか

体調を崩してしまって、きのうは練習に出ていたんですけど。でも日頃からどこに誰が入ってもできるようにという練習をしているのでそれが上手く(試合で)出たかなと思います。

――きょうはアシスタントキャプテンとしての出場でしたが

急遽きょう言われたんですけど、自分がチームにできることはその4年生としてベンチ内で声を出したり、プレーで引っ張ったりすることだったので、普段していることを心がけました。

――4年生全体としては、ロイさんがいない中でどのように動いてましたか

それもさっき言った通り誰が抜けて誰が入ってもチームとしてやることは変わらないので、それだけを心がけました。

――この間延長になった中大との試合でしたがその点はいかがでしたか

中央とは一次リーグも二次リーグも接戦できょうも楽に勝てるとは思っていませんでした。残り時間わずかになって競り合ってる中でこっちは優勝という目標があったので、その分(中大との)モチベーションの差がでて、みんな気持ちを出して戦っていた部分が多かったのかなと思います。

――シュートが50本で、2点という結果についてはいかがでしたか

前回の中大戦も、ものすごくシュート打ったけど入らなくて。その反省点として、(前回は)キーパーに近くシュートを打っている部分が多かったので、(今回は)キーパーから離れた位置でシュートを打ってというのを心がけていたんですけど、きょうもなかなか上手く入らなかったのは反省点かなと思います。

――ベンチの声が大きかったのは

ロイもいなかったので気持ちだけは負けないように、というのはその結果に出たんじゃないかなと思います。

――きょうのFW陣の連携はいかがでしたか

急遽セット変わって、雄吾(矢島副将、スポ4=北海道・駒大苫小牧)も帰ってきたんですけど、PPとかの連携はちょっと急遽だったので。もう少し来週に向けて普段の話し合いをしたり、氷上でもうちょっとコミュニケーション取っていけたらなと思います。

――東洋大戦に向けての意気込みをお願いします

もう勝てば優勝なので、チーム全員でそれに向かって、皆で勝って美味しいお酒飲みたいです。

GK谷口嘉鷹(社3=東京・早実)

――中大に勝利して、今の率直な気持ちをお聞かせください

前回は負けているので、素直にうれしかったです。

――試合を振り返っていかがですか

我慢の時間がずっと続いて、今までの試合の中では一番気持ち的にも、体力的にもきつい試合だったと思います。

――監督は、きょうの勝利はGKのおかげとおっしゃっていましたが、それに関してはいかがですか

自分としてはきょうだけというのは無くて、いつもと同じプレーをできるように心掛けているので、それが結果につながったのはチームとしても個人的にもうれしいです。

――同点ゴールを決められた時の心境は

正直、前回の試合で同点でPSになってまたPSになったらもしかしたら負けちゃうかもしれないという思いがあって、つらかったですね。

――チームが2点目を決めた時のお気持ちは

本当にプレーヤーに感謝です。

――リーグ戦は慶大戦以外全て3得点以下と、ロースコアに押さえられています

それも別に僕個人としてすごい、とかは無くてチーム全体として守りの意識を持っていてくれているので、自分も守りやすくプレーに集中できている結果です。

――早大全体のディフエンスの強度が上がっていることがGKの守りにもつながっていますか

自分も守備範囲をある程度限らせることができるので、そういう面ではすごく助かっています。

――DF陣との連携もうまくいっていますか

はい。結構練習でも話し合っているので、そこはしっかり試合の結果につながっているなと思います。

――次の東洋大戦、明大戦への意気込みをお願いします

あと2試合あるんですけど、やることは変わらないと思っていて1試合1試合ワセダのホッケーを60分間貫き通すことだけを考えて集中してやりたいと思います。

FW杉本華唯(スポ1=北海道・駒大苫小牧)

――試合を振り返って

前半の立ち上がりが悪くて、厳しい試合展開だったのですが最後ああいうかたちで終わることができて良かったと思います。

――先制点を奪い動きが良くなったようにも見えましたが

ちょっとは良くなりましたが、いつもの早大らしいホッケーはできなかったので、何とも言えないですね。

――第2ピリオドは数的有利な時間が長かったですが得点を奪えませんでした

得点のチャンスはあったのですが、相手のキーパーも上手くて、なかなか点を入れることができませんでした。

――同点に追いつかれチームに焦りはありませんでしたか

わりとチームの雰囲気自体は焦っていませんでした。いつもやってきたホッケーを最後まで続けていれば何かあるんじゃないかという感じで焦りとかはなかったです。勝ちを信じていました。

――ご自身の決勝ゴールの場面を振り返って

きょうは決めるチャンスが何本かあったのに決め切ることができませんでした。最後に先輩からああいうパスが来て、入れることができて良かったです。

――決めた時のお気持ちは

今までああいうかたちのゴールは決めたことがなかったので、びっくりしました。

――東洋大戦へ向けて

前回の東洋大戦はあまり貢献できなかったので、次は体を張って優勝に一歩近づけるように頑張りたいです。