イギリス・ロンドンで開催されている「ウィンブルドン」(6月27日~7月10日)の第12日、女子シングルス決勝で、第1シードのセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)が第4シードのアンジェリック・ケルバー(ドイツ)を7-5 6-3で破り、ウィンブ…

 イギリス・ロンドンで開催されている「ウィンブルドン」(6月27日~7月10日)の第12日、女子シングルス決勝で、第1シードのセレナ・ウイリアムズ(アメリカ)が第4シードのアンジェリック・ケルバー(ドイツ)を7-5 6-3で破り、ウィンブルドン7回目、グランドスラムで22回目の優勝を飾った。

 セレナは「22回」まであとひとつとなって以降、近づいては獲れない状況が続いていた。そのことに気持ちを集中させることも、そのことについて話すこともしないと言い、距離を置こうとしていたが、しかし今、ついにそれをその手につかみ、誇示することができるようになった。  「正直に言うなら、確かに眠れない夜を過ごしたわ」と試合後のセレナは言った。「私の目標は、少なくとも一年にひとつ、グランドスラムのタイトルを獲ることなの。だんだんプレッシャーになってきていた」。  セレナは1968年のオープン化以降、シュテフィ・グラフ(ドイツ)が打ち立てたグランドスラムの優勝「22回」に並ぶ、最多記録を達成した。今のセレナは、オープン化前も含めたすべての時代で最高記録となる、マーガレット・コートが持つ「24回」の記録を追うことになる。  セレナのウィンブルドンでの優勝7回は歴代2位の記録であり、その上をいくのは優勝9回のマルチナ・ナブラチロワ(アメリカ)のみだ。

 昨年のウィンブルドンで、グランドスラムの優勝が「21回」となったセレナは、そこからこの土曜日まで、その数字を変えられないでいた。  「考えないようにするのはすごく難しかった。今年も数回トライしたけど(全豪と全仏)…」。表彰式の際、セレナは初めて正直に明かした。「でもそれをつかむために、どれほど懸命に努力をしたかを考えると、この勝利はいっそう美しいものになるわ」。  昨年9月の全米オープン準決勝でロベルタ・ビンチ(イタリア)に敗れ、その年、セレナが達成しようとしていた年間グランドスラム(1シーズンに全豪、全仏、ウィンブルドン、全米の4つの大会に続けて勝つこと)の夢は断たれた。それから今年に入って、全豪オープン決勝でケルバーに敗れ、全仏オープン決勝でガルビネ・ムグルッサ(スペイン)に敗れていた。  「時間は傷を癒す」と、セレナのコーチであるパトリック・ムラトグルーは言った。「負けることで、気づくこともあるんだよ」。  ケルバーとの雪辱戦で----ふたりの女子選手が同じ年に複数のグランドスラム大会決勝で顔を合わせることは、10年来起きていなかったことだ----セレナが勝者として抜け出した。これはセレナのウィンブルドンでの7回目の優勝となったが、ほかに彼女は全豪で6回、全仏で3回、全米で6回優勝している。  34歳のセレナが放ったサービスは、ほぼ文句のつけようがないものだった。13本のサービスエースを奪い、ファーストサービスからのポイントは43のうち38を勝ち取ったのだ。彼女が直面したブレークポイントは1度だけで、それは第2セット3-3からのゲームで、ケルバーがつかんだ唯一の真の突破口だったが、セレナはそれを時速188kmと時速200kmのサービスで覆したのだ。  セレナがうまくやったのは、それだけではない。左利きのケルバーのカウンターパンチ的なプレースタイルを前に、ラリーの主導権を握り、39本のウィナーを奪った。対するケルバーが獲得したウィナーは12本だった。  セレナはケルバーのセカンドサービスを叩き、各セットで1度ずつブレークを果たしている。果敢にネットにも出て、マッチポイントも含め、ネットにつめた22回のうち16回でポイントを挙げた。

 最後のボレーを決めたあとは、セレナはケルバーを温かく抱擁し、それから2本の指を空に向けて差し上げ、両手で22を形作った。  「すべてを試したけど、今日の彼女は勝利に値した。本当に素晴らしいプレーをした」とケルバーは言った。「今日の私たちはふたりとも、非常に高いレベルでプレーしたと思う」。  風の強い日だったが、それがセレナを煩わせたようには見えなかった。姉ビーナスは、セレナのゲスト用ボックス席にいた歌手のビヨンセとジェイ・Z夫妻の数段上に座っていた。  グラフと同じドイツ人で、グラフのことをよく知るケルバーは、準決勝でビーナスを倒してこの決勝を戦うまで1セットも落としてはいなかった。決勝で2つのセットを落としはしたが、そのスコアが見せる以上に競った、質の高い内容。それでも、彼女は最後にトロフィーに手を触れることはできなかった。  「でも、いい試合をすることができたわ」とケルバー。「おかげで、敗戦の失望もいくらか和らぐ」。  セレナは大会が進むにつれてプレーの調子を上げ、2回戦でクリスティーナ・マクヘイル(アメリカ)に対してタイブレークを落としたあとから、12セットを連取した。その2回戦での出来事だが、セレナはセットを落としたあとにラケットを叩き折って、1万ドルの罰金を食らっている。  セレナは昨年の全米オープンでビンチに敗れたあと、心が傷ついたのではないかとの推測も出回っていた。それは脇に押しやるにはあまりにも大きな失望であり、だから今年の全豪でケルバー、全仏でムグルッサに敗れたときも、そのときのことを思い返してしまっていたのではないか、と言われていた。

 だがセレナは、「私は回復力を見せることができた。そんなことに揺るがされることはないわ。誰も私を崩すことはできない」と言った。「その経験は私をより強くするのよ」とも。  マーガレット・コートが持つ記録「24回」を追い越すため、「25回」の優勝を考えているかと聞かれたセレナは、「まさか!」と言った。「昨年から学んだのは、その瞬間を楽しむということ。私は今この瞬間を楽しむことにするわ」。(C)AP