グランプリ(GP)シリーズ第5戦のロシア大会(ロステレコム杯)は、男子シングルが11月16日に行なわれる。14日夕方にモスクワ入りした羽生結弦は、15日午前11時10分からの公式練習に落ち着いた雰囲気で臨んだ。ロシア大会の公式練習で4回転…

 グランプリ(GP)シリーズ第5戦のロシア大会(ロステレコム杯)は、男子シングルが11月16日に行なわれる。14日夕方にモスクワ入りした羽生結弦は、15日午前11時10分からの公式練習に落ち着いた雰囲気で臨んだ。



ロシア大会の公式練習で4回転ループなどのジャンプを成功させていた羽生結弦

 氷に上がってから数分後に3回転ループを跳び、その後は3回転フリップ+3回転トーループ、4回転トーループ、4回転トーループ+トリプルアクセルと、安定したジャンプを跳んだ。だが、そのあと2回跳んだ4回転サルコウではともに転倒しループ3本もパンクと、少し苦しむ様子を見せた。

 その直後のフリーの曲かけ練習では、最初の4回転ループが2回転になり、4回転サルコウもオーバーターンになるミス。ステップを滑らずに間を取ったあと、3回転ループから演技を再開し、単発の4回転トーループと4回転トーループ+トリプルアクセル、3回転フリップ+3回転トーループ、トリプルアクセル+1Eu+3回転サルコウを決める。

 その後は「滑っている途中で見かけたので挨拶をしようと思っていた」と、リンクサイドにいたタチアナ・タラソワのもとに駆け寄って、次の友野一希の滑りが終わったあとに4回転トーループ+3回転トーループを跳び、4回転サルコウからトリプルアクセルも成功。さらに、4回転トーループ+3回転トーループまでのショートプログラム(SP)のジャンプも不安なくこなしていた。

 一方で、前回のフィンランド大会で氷のコンディションの影響で苦しんだエッジ系ジャンプには、少しナーバスになっているようにも見えた。それを羽生はこう説明する。

「ループにはちょっと苦戦しましたけど、フィンランドに着いた時と比べたら、いい状態かなと思います。ただまったく違う条件ではあるので、しっかり今の自分のコンディションと氷の状態を確認しながら過ごしたいです。飛行機に乗った後は気圧の関係で三半規管への影響などいろいろありますが、それは経験でわかってもいます。もうちょっと感覚をすり合わせていかなければいけないですが、飛行機に乗った後でこのくらいの調子だったら及第点は超えているのかなと思います」

 こう話した羽生は、練習の後半には3回転ループを跳んだあとに、4回転ループに5回連続で挑戦していた。最初のジャンプはきれいに決まったが、次のジャンプは少しだけ着氷に硬さが見えた。さらにその後は、コースを変えて跳んで手をつき、スピードを落としたジャンプでは転倒。5回目のジャンプも手をつく結果だった。だが、練習後の羽生の表情に迷いはなかった。

「ループはどうしたら跳べるかなということをずっと考えていました。最初の方のきれいに決まったジャンプは、何というかイメージだけで跳べている感じだったので。でも、イメージだけではなく、自分が狙った入り方で跳びたいというのがあったから、スピードを変えてみたりしました。イメージで跳ぶことも大事なんですけど、ここで確実に跳べるようにするにはどうしたらいいのかなと考えながら練習できました」

 こう言って笑顔を見せた羽生は、ロステレコム杯は4回目の出場になる。昨年はフリーで4回転ルッツを成功させながらも、SPでトップに立っていたネイサン・チェン(アメリカ)を逆転できず2位にとどまった。だからこそ、今回は結果を出したいという思いもあって、フィンランド大会後に、「中1週間しかなくて急激に変えることはできないですが、ロシアで今回と同等かそれ以上の演技をしなければいけない」と話していたのだろう。

「フィンランドの演技を超えるために必要なのは、全部のジャンプをきれいに降りることだと思います。ショートはノーミスではなかったし、フリーも全部立ってはいましたがアンダーローテーションもあったし、感覚的にはステップアウトみたいなことにもなっていた。だから今回は、しっかりクリーンに降りることを目指したいです」

 納得できるクリーンなジャンプをそろえることができて初めて、演技としての完成度を高めることができる。それが羽生の持論でもある。前回のフィンランドでは、SPの後半こそ自分が思う演技ができたが、フリーは反省点の多いものだった。

 まずはジャンプをすべてクリーンに決め、演技の完成度を高める次のステージに上がりたい。それが今大会で羽生が目指すものだろう。