2018年の全日本スーパーフォーミュラ選手権は全ラウンドを終え、近藤真彦監督率いるKONDO RACINGがチームチャンピオンのタイトルを獲得した。KONDO RACING は2000年、国内トップフォーミュラに参戦。結成19年目にし…

 2018年の全日本スーパーフォーミュラ選手権は全ラウンドを終え、近藤真彦監督率いるKONDO RACINGがチームチャンピオンのタイトルを獲得した。KONDO RACING は2000年、国内トップフォーミュラに参戦。結成19年目にして、フォーミュラのカテゴリーで初の栄冠となった。



結成19年目にして初のチームチャンピオンを獲得した近藤真彦監督

 近藤真彦監督は歌手や俳優として知られている一方、現在はKONDO RACINGのチーム監督として、スーパーGT、スーパーフォーミュラ、スーパー耐久の「国内3大カテゴリー」に挑戦している。

 すでにスーパー耐久では、2016年にシリーズチャンピオンを獲得。だが、自身もかつてドライバーとして挑戦し、国内屈指の名門チームがしのぎを削るスーパーフォーミュラでのタイトル獲得は、近藤監督にとって大きな目標のひとつだった。

 リーマンショックによる経済情勢の悪化により、2009年には参戦を断念するなど、苦しい出来事も経験してきた。だが、2010年途中から活動を再開した以降も挫けることなく、一歩ずつ歩み続けてチームを強くしてきた。

 とくに、ここ数年はチーム内部の体制を見直し、昨年からニック・キャシディと山下健太という全日本F3選手権のチャンピオン経験を持つ両ドライバーが加入。これを機に、チームは勢いを増した。

 今年の第4戦・富士ではキャシディが初優勝を飾ってチームに10年ぶりの優勝をもたらすと、後半戦では上位争いの常連となり、第5戦終了時にドライバーズとチームの両部門でランキングトップに浮上。第6戦・岡山でも着実にポイントを重ね、首位の座を守って最終戦の舞台「鈴鹿サーキット」に乗り込んだ。

 ただ、KONDO RACINGにとって鈴鹿は、あまり得意としているコースではない。金曜日に行なわれた練習走行での手応えも今ひとつ。さらに、ドライバーズランキングでトップを走るキャシディのマシンに問題があることが判明した。

 チームはそれを解決するため、ファクトリーのある静岡・御殿場まで夜を徹してパーツを取りに戻った。土曜日の走行で、少しでもパフォーマンスが改善できるようにするためだ。その結果、予選で山下が2位、キャシディが4位を獲得。チームの雰囲気もガラリと変わったという。

 そして迎えた日曜日。後方から巻き返しを図るキャシディは、ポールポジションスタートの山本尚貴(TEAM MUGEN)を猛追した。ドライバーズランキング3位の山本も、優勝すればシリーズチャンピオンを獲得できるチャンスがある。レースは意地と意地がぶつかり合う激しい展開となり、スタンドに詰めかけた観客も大いに熱狂した。

 結果は山本が優勝を果たし、キャシディはドライバーズタイトルを手にすることができなかった。ただ、KONDO RACINGとしてはキャシディが2位、山下が3位に入ったことで、念願だった初のチームチャンピオンを獲得した。レース後、近藤監督はこう語る。

「チームタイトルを獲得できて、夢のような気分です。やっとトップチームと肩を並べられるところまで来たなと。長かったな……というのが率直な気持ちです。応援してくれたファンのみなさん、がんばってくれたチームのみんなに感謝しています。

 チェッカーを受けて後ろを見たら、メカニックのみんなが泣いていました。みんなには苦労をかけたし、長いこと待たせてしまったなと。メカニックとドライバー、エンジニアに感謝です。その言葉に尽きます」

 レース終了後には年間チャンピオンの表彰式も行なわれ、近藤監督をはじめドライバーやチームスタッフ全員が表彰台に登壇。近藤監督は満面の笑みで、大きなチャンピオントロフィーを掲げた。

 そのトロフィーを見た瞬間、近藤監督には新たな目標ができたという。

「トロフィーに今までチームタイトルを獲得したチーム名が刻まれているんです。それを見ると、『インパル、インパル、インパル……』『トムス、トムス、トムス……』『セルモ、セルモ』と(強豪チームの)名前がずらりと並んでいました。ここに僕たちもやっと名前が刻めるな……と思いました。

 でも、この1回で終わるんじゃなくて、『KONDO、KONDO、KONDO……』と、何回も名前を刻めるようなチームになりたいなと、つくづく思いました」

 近藤監督も言うように、何度もチームチャンピオンを獲得している強豪チームの仲間入りを果たすためには、さらなるレベルアップが必要である。その目標に向かって、早くも気を引き締めている様子だった。

 そしてもうひとつ、2018シーズンを終えて、課された宿題がある。ドライバーズタイトルの獲得だ。

「チームタイトル獲得はうれしいですが、ドライバーズタイトルを逃しているので、来年はそこも狙えるようなチームになりたいです。ゴール後にメカニックの涙を見て、僕も少しウルッときましたけど、ホロリ涙はドライバーズタイトル獲得まで取っておきます(笑)」

 固く決意した彼らは、きっと来年、さらに進化した姿を見せてくれることだろう。KONDO RACINGの飽くなき挑戦は、まだまだ続く。