「ショットはかなりまとまってきた。あとは、キーショットだけ集中して決めることができれば十分に狙える」

 韓国の江陵カーリングセンターで開催されたパシフィック・アジア・カーリング選手権(以下、PACC)。ラウンドロビン(予選リーグ)で中国に土をつけられたあと、男子日本代表(コンサドーレ)のリード・阿部晋也は、初優勝の可能性についてそう語った。

 7勝1敗の2位通過ながら、ラウンドロビンの日本は確かに、阿部をはじめ、セカンドの谷田康真、サードの清水徹郎、スキップの松村雄太と、ポジションごとに高いショット率を残した。

 その結果、有利な後攻で複数得点を獲得し、先攻では相手のチャンスを摘みながら、相手にプレッシャーショットを強いてきた。カーリングでは王道とも言える、エンドの構築を貫くことができていた。

 準決勝のニュージーランド戦も同様だ。松村のフィニッシュにミスが出て、序盤はスティールを許すなどバタつく場面もあったが、「僕以外の3人が何事もなかったように、またチャンスを作ってくれたので、(ミスを)引きずらずに済んだ」(松村)と、中盤では3連続スティールを記録するなど、8-3で勝利。決勝進出を決め、大会2位以上に与えられる来年4月の世界選手権への切符を獲得した(※)。
※3位の韓国と4位のニュージーランドは、来年1月にニュージーランド・ネイズビーで開催されるワールドクオリフィケーションに参加。そこで勝てば、世界選手権の出場枠を得られる。また、世界選手権に挑む日本代表は2月の日本選手権優勝チームとなる。

「負けていたので、もう一度やりたかった」と、阿部がリベンジを期していた中国との決勝は、序盤から中盤にかけては主導権を激しく奪い合った。一進一退の展開のなか、同点で迎えた6エンドには2点をスティールされるなど、タフなゲームとなったが、7エンドですぐに追いつくと、終盤に得点を重ねて中国を振り切った。




PACCで優勝を飾ったコンサドーレ

「ギリギリの戦いのなかで、欲しいときに欲しい場所に、みんながストーンを運んでくれた」

 松村は、勝負強さを見せたチームメイトにそう感謝した。

 特に、セカンドの谷田がキーショットで幾度も見せたスイープは出色だった。各ショットで投げ手がストーンをリリースするや、素早くウエイトジャッジを下し、短ければ力強いスイープを何度も繰り返して、ストーンを適切な場所まで伸ばした。

 谷田の一連のプレーが、スキップ・松村のフィニッシュに余裕をもたらすという好循環をも生んで、日本代表としては2年ぶり、コンサドーレとしては初のアジア制覇に導いた。

「世界で戦えるチームを作るために、ストーンを少しでもいい位置に運べるよう、常に考えている。ミスが出るのは仕方がないんですけど、同じミスでも、しても大丈夫なミスと、絶対にしてはいけないミスを想定しながら、チームメイトときちんとコミュニケーションを取ってプレーしています」(谷田)

 そう語る、若き功労者は24歳。今大会はジュニア以外では初めて日の丸を背負ってのプレーとなったが、「(日本代表としての)自覚と責任は持っているつもりですが、重圧はない」と断言。さらに、「アイスの中では年齢は関係ない。遠慮せずにプレーしています」とも言い、難しいシチュエーションでも物怖じせずに、チームメイトに自分の意見を伝える姿が目立った。

「あいつ、アイスの中だけじゃないっすよ。(アイスの)外でも、いつも遠慮なく、生意気です」

 松村はそう言って笑うが、「でも、本当に今回は(谷田に)助けられた。緊張せず、チームに欲しい情報を常に提供してくれた。大会MVPは、間違いなくヤス(谷田)です」と、頼もしい後輩を絶賛した。

 新メンバーに清水を迎えた今季のスタートでは、「ポジションもまだ探り探りやっている」と試行錯誤を重ねてきたが、2度のカナダ遠征などで「速いショットを持つセカンド(谷田)とサード(清水)が、チームの武器になってきた」と松村。そこから、現在の阿部→谷田→清水→松村という布陣の手応えをつかみ、日本の男子チームとして、海外のツアーで初の優勝も果たした。

 それに加えて、今回で得た”アジア王者”という肩書きは、より大きな責任やプレッシャーを伴いながらも、規模や賞金額の大きな大会への切符となっていくことだろう。

 メンバーはこのあと、札幌や北見などにそれぞれ戻って、1週間ほど各々の仕事や学業をこなし、札幌での合宿を経て、12月上旬に開催されるW杯セカンドレグに日本代表として派遣される。

「チーム状態はよくなってきている。でも、世界で戦うためには足りない部分がまだある。勝負はこれから、です」(松村)

 コンサドーレの挑戦は始まったばかりだが、早くも日本男子カーリング界に新たな可能性をもたらした。世界で躍進を続ける女子に続いて、世界で結果を残す日も遠くないかもしれない。