勝利の喜びをかみしめる選手たち関東王者の称号をかけて--ここまで順当に駒を進めてきた慶大は、青学大と関東リーグ決勝を争った。試合はMF石田(経4)の先制から始まるも、両者一歩も譲らない白熱のシーソーゲームを続け、スコア4-4のまま後半が終了…


勝利の喜びをかみしめる選手たち

関東王者の称号をかけて--ここまで順当に駒を進めてきた慶大は、青学大と関東リーグ決勝を争った。試合はMF石田(経4)の先制から始まるも、両者一歩も譲らない白熱のシーソーゲームを続け、スコア4-4のまま後半が終了。決着は運命のサドンビクトリーにまで持ち込まれた。「負ける気は全然しなかった」。その言葉通り、緊迫の展開にも選手らは持ち前の勝負強さを発揮。最後はAT吉岡(理4)が値千金の決勝弾を打ち込み、慶大の勝利を決めた。慶大は関東リーグを圧巻の全勝で終わらせ、見事関東制覇を達成した。

第31回関東学生リーグ女子 FINAL vs青学大

11/10(土) 13:50ドロー @駒沢オリンピック公園総合運動場第二球技場

 前半後半サドンビクトリー合計
慶大
青学大

スタメン

ポジション背番号名前学部・学年出身高得点
28大沢かおり経4学芸大附属国際
DF62櫨本美咲経4慶應女子
DF75平井淑恵商3慶應女子
MF51石田百伽経4慶應女子
MF58清水珠理商2慶應女子
MF66石川のどか政4品川女子学院
MF73伊藤香奈経4慶應女子
MF81野々垣眞希商2慶應女子
MF97小久保磨里奈政4慶應女子
AT32友岡阿美政4慶應女子
AT33西村沙和子商4慶應女子
AT72吉岡美波理4大妻多摩

ベンチ入り選手

ポジション背番号名前学部・学年出身高得点
西村佳子政3東京女学館
MF17脇坂遥香経3慶應女子
MF20溝口友梨奈経2慶應女子
MF59日野美咲商2慶應女子
MF77橋本ひかる政4慶應女子
AT18荒井理沙経3慶應女子
AT26井上ゆり子経2慶應湘南藤沢
AT38石井有花子政3雙葉

 関東リーグの開幕から約3カ月。ついにその頂点を決める日が訪れた。激戦のリーグを勝ち抜き、今回この大舞台に立つ2校は慶大と青学大。昨年の全国覇者・慶大に対し、青学大は関東FINAL進出が創部史上初のこと。「私たちは試合前からヒールの方だと言われてい」た(友岡阿美=政4)――そんなプレッシャーのなか、選手らは王者の名に恥じぬ堂々たる戦いぶりで観客を沸かせた。


選手たちは決勝の大舞台を楽しんだ

 「一発目のシュートを決めきるのが一番大事」。試合前チームに言われていたその役目は、MF石田百伽(経4)に回ってきた。前半1分、ゴール前の石田にパスが渡ると、「意地でもねじ込んでやろう」と強気な突破を仕掛けてそのまま力強くシュート。先制点を挙げ、華々しいスタートに成功する慶大だが、その後は苦しい時間が続く。ゴール前を固めるも、青学大の堅いディフェンスを前に幾度のシュートチャンスを逃す慶大。歯痒い展開のなか13分、今季アシストとしての活躍が光る友岡からMF清水珠理(商2)に絶好のパスが渡った。器用な清水はこれを枠内に収め、チーム2得点目を入れた。

 しかし、「そこから上手く自分たちの流れに持ってこられなくて」(伊藤香奈=経4)との言葉通り、15分に失点を喫すると熾烈なボール争いに苦戦。終盤は青学大の猛攻からG大沢かおり(経4)が好セーブで幾度の危機を救うも、ついに24分にもう1失点。驚異の追い上げに圧倒され、前半を2-2で折り返すこととなった。


先制ゴールを決めた石田に駆け寄る選手たち

 後半戦は立ち上がりにつまずいた。序盤、慶大が相手ゴール前でのシュートチャンスを逃すとボールは青学大へ。そのまま3分にディフェンスの隙を突かれて失点し、青学大の勝ち越しを許した。しかし7分、頼れるエース伊藤にゴール正面からフリーシュートの好機が訪れた。さすがは伊藤、これを難なく決めきり、すぐさま3-3の同点に返した。すると13分、今度はAT西村沙和子(商4)からパスを受けたAT吉岡美波(理4)が得意のカットで追加点を挙げ、見事リードを取り返した。

 だが、この1点が青学大に火をつけることとなる。18分、慶大のファウルから青学大に絶好のチャンスが訪れた。決死のディフェンスも虚しく相手のシュートがゴールを突き、またしてもスコアは同点。試合はいよいよ終盤に差し掛かり、両者のデッドヒートが繰り広げられた。互いにシュートとセーブを繰り返し、決勝点を奪い合う激しい展開が会場を沸かせた。白熱したゲームは後半終了を伝えるホイッスルに遮られ、決着は運命のサドンビクトリーへ持ち込まれた。


吉岡はこの日、大きな仕事を成し遂げた

 「絶対ドローは取れる」。石田は仲間の言葉を信じてドローに臨んだ。期待通り、慶大は開始のドローを勝ち取ることに成功。その後は清水、MF石川のどか(政4)らが丁寧にボールを繋いでいった。そして、ついに決着のときは訪れた。この大接戦に終止符を打ったのは西村と吉岡の4年コンビ。4分、ゴール後方に構えていた西村から鋭いパスがフリーの吉岡に渡った。「『打て』という声が聞こえた」。勢いそのままに打ち込んだボールは、力強くネットを揺らした。と、同時に試合終了の笛が鳴り響いた。決勝点を決めた吉岡に駆け寄る選手らはそのままグラウンドに倒れこみ、勝利の喜びを分かち合った。


激闘を制し、関東王者に輝いた

 大接戦となった関東決勝。どちらが負けてもおかしくない緊迫したゲームの命運を分けたのは勝負強さだった。「負ける気は全然しなかった」(吉岡)との言葉通り、サドンビクトリーに臨む選手、スタッフそしてコーチ陣はみな笑顔を浮かべていた。勝負を楽しむ慶大のチームカラーが緊張を解き、勝利に繋がったのだろう。昨年は叶わなかった「全戦勝利」での関東制覇を成し遂げ、チームはまたしても大きな成長を遂げた。

 慶大の戦いはまだ続く。この先には全日本学生選手権、そして全日本選手権が待ち受けている。「全ての日本一を取りたい」(友岡)。彼女たちの見据えるものは4戦も先にある。この関東リーグで得た自信を胸に、日本一までの道を駆け上がっていって欲しい。

(記事:堀口綾乃 写真:重川航太朗 五十右瑛士)

次戦 11月17日(土) 全日本大学選手権大会 準決勝 vs愛知学院大学

@愛知県 港サッカー場

◇以下選手コメント◇

友岡阿美(政4・慶應女子)

――率直に今のお気持ちは

まずは勝てて良かったというところが、一番大きいです。一度戦った相手で簡単に勝てるとは思っていませんでしたが、勝てる自信を持って臨んだ試合でここまで接戦になって、自分たちで首を苦しめてしまいました。ですが、最後までしっかりと頑張れて、本当に勝てて良かったです。

――試合内容で苦しんでしまった要因は

ボールを奪った後に前へ運ぶことがあまり上手くできなくて、ボールを失う場面が多かったので、もっとボールを動かしながらできれば、もう少し雰囲気よくできたかなと思います。

――サドンビクトリーに入った際のチームの雰囲気は

誰が決めるか勝負みたいなところだったので、自分がボールを持ったら自分で決めよう、勝って終わろう、みたいな感じで、雰囲気は悪くなかったです。

――接戦でも雰囲気が落ちることはありませんでしたか

そうですね。途中からイーブンになって、サドンになるなと思った瞬間から、取ったら終わりだし取られたら負けだし、ある意味ポジティブにやれていたと思います。

――後半最後に友岡選手自身に決定的なチャンスがありましたが

決めたかったですね。あれは本当に悔しかったです。

――今日の試合でチームとして良かった点は

走力を強みにしている中で、きちんと走り切れたことは良かったと思います。あとは、ボールダウンが起こったときに、全員できちんと寄ることはできていたと思うので、継続していきたいです。

――応援の力などはいかがでしたか

私たちは試合前からヒールの方だと言われていて、どの歓声も「あー」というふうに聞こえてくると思っていました。確かに自分たちがミスしたときのため息は大きく聞こえましたが、逆に入ったときの声援はその何倍にも聞こえました。

――関東リーグを総じて振り返って

厳しい戦いの中で、一戦一戦きちんと向き合って、出た課題をつぶして次の試合というように臨めて、ステップアップできたと思います。次の全学、全日に繋げていきたいと思います。

――日本一に向けての戦いになります。最後に意気込みを

まずは次戦の名古屋を勝ちきって、ここに戻ってきて駒沢の舞台で全学の日本一を取りきって、社会人との戦いも気持ちで勝ちきって、全ての日本一を取りたいと思うので、ぜひ応援をお願いします。

石田百伽(経4・慶應女子)

――この試合を振り返って

準決勝が山場と言われていて、それに快勝してしまったことによる油断がチームにあったなかで臨んだ試合だったんですけど、案の定悪い試合になってしまって。苦しい展開だったんですけど、でも、勝ったチームが強いっていうのを証明できてよかったです。

――この試合を通して意識していたこと

個々の選手がクリアでもアタックでも相手のディフェンス一人一人と勝負していくというのをチームとして目標にしてやってきました。私としては、下のボトムラインで流れが作れていない時間帯に、自分が流れを変えるプレーをしてやるという思いを持ってやっていました。それがプレーに出ていたかはわからないんですけど、その二つを意識してやっていました。

――自身の得点を振り返って

一発目のシュートを決めきるのが一番大事と試合前に言われていました。だから、自分にボールが回ってきたときに意地でもねじ込んでやろうと思って打ったシュートでした。ゴールは見てなかったんですけど、すごくいいところに決まって、ラッキーだったなと思います

――最後のサドンビクトリーでのドローはどういう思いで臨みましたか

死ぬ気でとってやろうと思って臨んだんですけど、正直今記憶がなくて。どこに上がったとか、どうやって取りきったのかとか全然覚えてないです。ただ、コーチの方が「絶対ドローは取れるから」と言ってくれていたので、周りのサークルのことを信じてボールを取りきることを意識しました。自分たちのボールにすることができてよかったです。

――次の試合に向けて

次は愛知に行くんですけど、ここからは関東と全く違うラクロスをしてくる地方チームと戦うことになります。でも、それに惑わされず、自分たちのやってきたことだけを貫いてやっていけば、地方チームだろうと社会人だろうとぶっ倒せると思うので、あと4回、快勝して終わりたいと思います。

伊藤香奈(経4・慶應女子)

――優勝した今のお気持ちは

とにかくほっとした気持ちと嬉しい気持ちでいっぱいです。

――2年連続ということについてはどうお思いですか

去年の王者ということは自分たちのなかであまり意識していなくて、今年は今年のチームを一から作り上げてきたので、こういう大舞台を経験している人が多いというのは有利な部分だったとは思うのですが、結局雰囲気にものまれてしまってこうなってしまったんですけど、今年のチームでこうして1位を取れたということはとてもうれしいです。

――今日の試合を振り返って

前半に2点決まって良い立ち上がりなのかなと思ったのですが、そこから上手く自分たちの流れに持ってこられなくて。2点を取られて前半折り返した中で、後半始まるときに「あと25分で自分たちの運命が決まるんだな」と思い、とてもわくわくした気持ちで臨みました。最終的に1つ決まらなかったり、1つパスが繋がらなかったりというところで流れを持っていかれてしまって、サドンデスになって。それでも、サドンデスになったときに負ける気は全然していなくて、「誰かが決めてくれる」「あわよくば自分が決めたい」と思っていたのですが、結局最後沙和子(西村=商4・慶應女子)から美波(吉岡=理4・大妻多摩)にいいパスが通って決めてくれて、良かったなという気持ちです。

――得点した場面については

今日何本か得点できるシーンがあったなかで、あれしか得点できなかったということについては自分の中でも課題が残る試合だったのですが、毎試合2得点、3得点ができるようなパワーをもっと身につけていきたいと思いました。

――今日に向けてどのような準備をされましたか

特に特別なことをやったわけではなくて、この2月からのキックオフで自分たちがやってきたことをそのまま出すだけだなと思っていたので、大久保監督も言っていた通り、結果的に勝ったチームが強いということを体現できたのかなと思います。

――全国大会に向けて一言お願いします

夢に見ていたあの舞台にまた立つことができるように、しっかり東海地区、関西、福岡、勝ち進んで絶対にまた駒沢陸上競技場で学生一をとって、しっかり全国のクラブとの対決に弾みをつけていきたいなと思います。

大沢かおり(経4・学芸大附属国際) ☆最優秀選手賞

――2年連続での優勝になりましたが、今の気持ちは

劇的な試合だったので、本当に勝てて良かったです。

――今日の試合を振り返って

入りのところのクリアでボトムのミスとかが続いてしまって、結構飲まれているなと感じるシーンも多かったんですけど、でもしっかりとそこで一人一人が怖がらずに前を向くことができたし、苦しかったけどチーム全員で獲得した勝利だったので、今後の自信につながる試合でした。

――今日に向けてどういう準備をしてきましたか

キーパーとしては相手のシュートを動画で見て、ディフェンス面では相手のキーマンにどう対応するかを全体でスカウティングしました。

――サドンビクトリーに入ったときの心境は

観客の皆さんはヒヤヒヤされたかと思うんですけど、私自身はいけるという気持ちで、シュートがどこにきても止められるし、味方が入れてくれると信じていました。

――最優秀選手賞を獲得されました

個人的にはリーグの予選ではチームに何も貢献出来ていなくて、しっかりその借りを返すという意識でFINAL4とFINALに臨んできたので、それがこういう結果につながったのは嬉しいです。

――全国大会に向けて

このチームだったら勝てると、今日の苦しい試合を乗り越えてまた改めて思ったので、絶対に全員でてっぺんを取ります。

吉岡美波(理4・大妻多摩)

――今の率直な気持ちをお聞かせください

負けたら引退という大事な試合だったので、勝てて本当に心から嬉しいです。

――チームの勝利を決めた、ご自身の得点シーンを振り返って

あまり覚えていないんですけど(笑)気づいたらフリーでパスが来ていて、「打て」という声が聞こえたので、打ちに行くしかないと思って打ったという感じです。

――今日の試合を振り返って

以前勝っていた相手だったので、いい意味で緊張感がなかったということはチーム全体にあったので、逆にこういう厳しい試合になって自分たちが成長するいい機会になったのかなって思いました。

――サドンデスにはどんな気持ちで臨みましたか

やばいという感じではなく、1点取れば勝てるよねという気持ちで挑みました。ドローもすごく良く取れていたので、ドローを取って誰が点を決めに行くか、取れるやつが取りに行けばいいんじゃないかという話をしていました。だから、負ける気は全然しなかったです。

――この日まではどのような練習を重ねて来ましたか

青学大に対してどうするか、というよりは自分たちが持っている強みをどれだけ生かしていけるかということをずっと考えて来ました。少し出しきれなかった部分もありましたが、勝てて本当に良かったです。

――これまでの戦いぶりを振り返って

自分はアタックなので全試合得点を決めたいという気持ちもありましたが、できなかった試合が続いたのでそれは諦めずに目標として行きたいです。また、全勝で関東制覇は去年成し遂げられなかったことなので、1つ上に行けたかなと思います。

――この先の試合に向けて

気を緩めずに日本一へ向けて突っ走るだけかなと思うので、全日本学生選手権も全日本選手権も勝って、自分たちの代で真の日本一になれたらいいなと思います。頑張ります。

清水珠理(商2・慶應女子)

――今の率直な気持ちは

関東制覇は日本一に向けては通過点ではありますが、とりあえず達成できてうれしいです。

――今日の試合振り返って

今日は自分のやりたいことができなすぎて、緊張しすぎてあまり試合内容は覚えてないです(笑)その場、その場でボール持ったら強気に走るし、ボール受けにいこうということを考えていました。

――ディフェンスではインターセプトなどの活躍が光りました

相手のキーマンの11番に結構ボールを集めてくるなっていうのがあったので、パスが飛んでくることを予測して守っていました。

――前回と比べて青学大の印象は

すごい覚悟を感じました。サドンビクトリーの時も、ボール落としても絶対拾いにくるしボール持ったら目の色が変わっていること感じて、本気と本気の勝負だなって思いました。

――直前の合宿ではどのような練習をしていましたか

この時期になってくると、セット練習とかで急激に上手くなったりすることはないので、個人のスキルやシュート精度にフォーカスして練習していました。

――昨年の関東決勝と比べて自身の成長は

昨年はディフェンスメインでアタックサイドに入らなくて、1年だし足を引っ張らないようにということを考えていました。今年はアタックにも入れてもらっているので、4年に頼らないで、自分が活躍して勝つという意識で臨めるようになりました。

――次戦に向けて

まだ相手のスカウティングは終わっていないですが、むこうの学校も強い覚悟を持ってきていると思いますが、私たちが目指すのは日本一なので強気に得点を取っていきたいです。