この1年の集大成、全日本学生選手権(インカレ)が開幕した。絶対に落とせない大事な初戦で顔を合わせたのは九州地区代表の福岡大。前半は大舞台ゆえの硬さからか、持ち味の『ディフェンスから速攻』が機能せず、速攻からの得点がないままビハインドを背負…

 この1年の集大成、全日本学生選手権(インカレ)が開幕した。絶対に落とせない大事な初戦で顔を合わせたのは九州地区代表の福岡大。前半は大舞台ゆえの硬さからか、持ち味の『ディフェンスから速攻』が機能せず、速攻からの得点がないままビハインドを背負ってしまう。しかし試合が終盤に差し掛かると反撃を開始。セットオフェンスや7メートルスローで得点を重ね、7点差をひっくり返し逆転勝利を収めた。

 大応援団からの声援を背に受け初戦に挑んだワセダセブン。インカレ独特の緊張感の中、今年一番の気合を入れて円陣を組んだ。試合が始まると、相手の高めのディフェンスの意表を突いた吉田瑞萌(スポ2=東京・佼成学園女)がカットインで得点を重ね上々の立ち上がりを見せる。キーパー北村早紀(スポ3=群馬・富岡東)による7メートルスローの好セーブも飛び出し、ワセダのペースに持ち込めたかと思われた。しかし、中盤に差し掛かるとパスミスが増え始め、最後まで攻めきることができなくなってしまう。早大の得点が停滞する間に相手の得意な逆速攻を次々に受け、ついにリードを許してしまった。高田紗妃主将(スポ4=福岡・西南学院)が「苦しい時間帯だった」と振り返るように、反撃の糸口をつかめず、どんどん点差が開いていく。最後は阿部美幸(スポ1=東京・佼成学園女)がサイドシュートでゴールネットを揺らしたが、早大がテーマとして掲げていた速攻での得点が一度も見られぬまま7―11で前半を終えた。


流れを変えた江島

 後半が始まっても相手は攻撃の手を緩めてはくれない。連続で速攻を受け、その差は7点にまで広がってしまった。しかし、「このまま負けるわけにはいかない」(杉山瑞樹、社3=神奈川・横浜創英)――。その気持ちを前面に出し、ワセダはここから執念を見せた。7メートルスロー、45からのカットイン、サイドシュートにポストシュート。全ての角度から全員で相手ゴールに襲いかかっていく。4年生中心に、コートから、ベンチから、ベンチ外から声を出し、福岡大に追いすがった。勢いに乗ったワセダのゴールラッシュは止まらない。そして、逆転を射程圏内に捉えたところで途中出場したのが江島朋夏(スポ4=東京・佼成学園女)だ。「出た時にはチームが盛り上がるような流れをつくりたい」。インカレ前、そう語っていた江島が言葉通りのプレーを見せた。パスを受けて放ったシュートはゴールに吸い込まれる。残り8分で値千金の同点弾を叩き込み、早大サイドは大歓声に包まれた。最後は相手も意地を見せ、どちらに転ぶかわからない展開となったが、残り1分を切った場面で放った島崎愛(社4=熊本国府)のポストシュートが試合を決めた。終了のホイッスルがなると、選手たちは抱き合い、喜びをあらわにした。早大の執念が、勝利を呼び寄せた瞬間だった。


勝利が決まった瞬間。歓喜の涙が見られた

 大熱戦を制し、2回戦へと駒を進めた早大。テーマとしていた速攻での得点は少なかったが、セットオフェンスから得点できたことは収穫だろう。あす対戦するのは6月の早関定期戦で同点に終わった関学大だ。関東学生秋季リーグで課題となった『連戦の2日目』を克服し、必ずあの時の決着をつける。

(記事 宅森咲子、写真 湯口尊、白石智奈美)


全日本学生選手権
早大207−11
13−8
19福岡大
GK 北村早紀(スポ3=群馬・富岡東)
LW 杉山瑞樹(社3=神奈川・横浜創英)
LB 吉田瑞萌(スポ2=東京・佼成学園女)
DF 高田紗妃(スポ4=福岡・西南学院)
PV 島崎愛(社4=熊本国府)
RB 富永穂香(スポ4=東京・佼成学園女)
RW 久保涼子(スポ4=群馬・富岡東)
コメント

高田紗妃主将(スポ4=福岡・西南学院)

――今のお気持ちを聞かせてください

接戦でヒヤヒヤしたんですけど、ホッとしました。今の時点では次の試合に切り替わっているんですけど、地元の福岡が相手で絶対に負けられなかったので、本当に「一勝できた」ということが良かったと思います。

――試合前の雰囲気などはいかがでしたか

アップ中も全員で声を出していて、今までにないくらいすごくいい雰囲気で、硬くはなかったんですけど、いざコートに入ってプレーをするとなると硬さが出てしまったかなと思います。

――試合展開を振り返っていただけますか

前半は速攻が0本で、自分たちの持ち味の『ディフェンスから速攻』が出せなかったので、あれくらいの点数がついてしまいました。そこが苦しい時間帯だったんですけど、ハーフタイムでしっかり修正して、後半は会話も増えて、やっと自分たちのプレーができたかなと思います。

――後半は怒とうの反撃が見られました

江島(朋夏、スポ4=東京・佼成学園女)のシュートで会場の雰囲気もコートの中の雰囲気もすごく変わって。良かったなと思いますし、とても助かったシュートだったなと思いますね。

――ご自身のプレーを振り返っていただけますか

ディフェンスが広かった部分を出だしからもう少ししめていけたら良かったなと思っているので、反省点は多々あるんですけど、やっぱりディフェンスから速攻という部分にもう少し絡んでいけたら良かったなと思います。

――あすに向けて一言お願いします

早関戦(早関定期戦)でまだ決着がついていないので、きょうの反省も生かしながらまたチーム一丸となって必ず勝ちたいなと思います。

江島朋夏(スポ4=東京・佼成学園女)

――今のお気持ちをお聞かせください

良かったなという一言です(笑)。

――試合前の雰囲気はいかがでしたか

リーグよりもさらに試合に向けてみんなで気分を高めていこうという感じがあったと思います。

――試合展開は振り返っていかがですか

初戦だし、カチカチな感じで(笑)。悪いところが存分に出た試合かなと思います。

――悪いところは具体的にどういったところでしょうか

足が止まってしまったオフェンスの中でパスカットをされてしまったり、相手のバックチェックのディフェンスシステムにこっちが対応できずに焦ってしまって持ち味が出せなかったりしたところです。

――江島選手は途中出場からの得点で流れを変えましたね

もうチャンスは何回もまわってくるものではないと思っていて、チャンスがあったらいこうと思っていたので、得点になって良かったです。

――後半、反撃した場面を振り返っていただけますか

4年生全員がキーマンだと(対談で)みんな言っていたと思うんですけど、その通りで。4年がこのチームを勝たせるためにということを考えてできていたので、すごく楽しかったです。

――速攻での得点が見られませんでしたが、オフェンス面についてはいかがですか

練習していたかたちというのがまだ出せていないなというのがあって、緊張してないとみんなは言っていたんですけど、やっぱりインカレ(全日本学生選手権)独特の雰囲気や相手に試合の中で対応していくことが課題だと思います。

――あすに向けて一言お願いします

勝ちます!

島崎愛(社4=熊本国府)

――今の率直なお気持ちは

良かった(笑)。もう、それだけです。

―試合前の雰囲気はいかがでしたか

雰囲気はみんなすごく良くて。良い緊張感で、でも緊張しすぎないでって感じで、良かったかなと思います。

――試合展開を振り返っていただけますか

前半出だしは悪くないと思うんですけど、中盤で点が詰まった時にそっからずるずるいっちゃって、終わり方がよくなかったです。後半はいつも通りというか、逆転するパターンにははまってたかなと思います。

――ご自身のプレーを振り返って、いかがでしたか

前半が全然点に絡めていなくて、後半はようやく絡めだしたんですけど、もうちょっとそこを早めに見つけて、自分も点に絡めるようなプレーができれば良かったかなと思います。

――後半反撃が見られましたが

まあ点差はついてましたけど、全然「逆転はできる」って後半のスタートから思ってたので、やっぱりそうなったなっていう感じでもあります。

――明日の試合に向けて意気込みをお願いします

明日も勝ちます!

富永穂香(スポ4=東京・佼成学園女)

――今のお気持ちはいかがですか

あしたが楽しみという感じですね。

――試合前の雰囲気はいかがでしたか

アップはみんなすごく盛り上がっていました。でも試合になると何かシーンとしているというか、精一杯になってしまった部分があって、もうちょっと楽しみながらやったほうが良かったなと思います。

――試合展開を振り返っていただけますか

ワセダのチームスタイルとして『ディフェンスから速攻』というのがあったはずなんですけど、前半は速攻の点数が0で。それが前半の点数に響いてしまったかなと。後半も立ち上がりずるずるいってしまった部分があったので、どうにかして自分でいって流れを変えたいと思っていました。

――相手のディフェンスは高めでしたか

そうですね。高めに敷いてきたんですけど、こっちとしては1ー5のディフェンスに対するオフェンスというのをやっていたので、相手はすぐ引いたんじゃないかなと思いますね。

――後半は4年生を中心とした反撃が見られました

やっぱりえじ(江島朋夏、スポ4=東京・佼成学園女)とか途中から出てきた選手があれだけやってくれると、チームとしても盛り上がるし、私自身同期としてもすごいうれしかったです。きょう出れなかった選手もいるんですけど、そういう選手もチームとして一緒に出た時には最高のプレーをやってほしいなと思います。

――あすに向けて一言お願いします

早関戦(早関定期戦)は引き分けに終わっているので、あしたは決着をつけたいなと思います。

杉山瑞樹(社3=神奈川・横浜創英)

――今の率直なお気持ちをお願いします

勝てて良かったです。まずは1勝、1回戦勝てて良かったなと思います。

―試合前の雰囲気はいかがでしたか

今日のアップは、いつも以上にみんな声が出てて、めっちゃいい雰囲気だなと思っていました。

――試合展開を振り返っていただけますか

前半、立ち上がりはそんな悪かったわけではなかったんですけど、中盤から、相手の得意とする逆速攻をやられてしまいました。私たちのいつもの負けゲームが、自分達のミスからの逆速攻だったので、それをやられてしまったので点差が離れてしまったかなと。後半、途中からキャプテン筆頭に立ち直せたのが良かったです。

――後半は反撃が見られましたね

タイムアウトの時にほんとに「このまま負けるわけにはいかないな」って思って、そこからみんなたぶん強気でいって、追い上げができたのかなって思います。

――あすに向けての意気込みをお願いします

早関戦(早関定期戦)の時に同点で終わっているので。その時は、個人的に悔しい思いをしているので、あした挽回できるように頑張りたいです。