マーリンズのイチロー外野手は今季、規定打席未満ながら打率.337、出塁率.411、得点圏打率.435と好調を維持。6年ぶりのオールスター出場への“待望論”もあったが、選出されることはなかった。■6年ぶり夢舞台に“待望論”も出場ならず、「最も…

マーリンズのイチロー外野手は今季、規定打席未満ながら打率.337、出塁率.411、得点圏打率.435と好調を維持。6年ぶりのオールスター出場への“待望論”もあったが、選出されることはなかった。

■6年ぶり夢舞台に“待望論”も出場ならず、「最も値する選手の一人がいない」

 マーリンズのイチロー外野手は今季、規定打席未満ながら打率.337、出塁率.411、得点圏打率.435と好調を維持。6年ぶりのオールスター出場への“待望論”もあったが、選出されることはなかった。ニュージャージー州最大のニュースサイト「nj.com」は、著名なジャーナリストのエド・ルーカス氏のコラムを掲載。同氏は、背番号51が選外となったことに失望しつつ、「オールスター漏れのイチローはいまだ史上最高」と題した文章で、「ベースボール史上のオールスターの一人」と絶賛している。

 今年のオールスターは12日(日本時間13日)に、サンディエゴのペトコパークで開催される。地元番記者がツイッターで「オールスターに選ばれるべきでは?」と呼びかけるなど、今季の大活躍で米国内でも球宴出場への“待望論”が起こっていたイチローだが、5日(同6日)に発表されたメンバーの中に名前はなく、最後の出場者を決める「ファイナルボート」の5人の候補者にも入らなかった。

 ルーカス氏はコラムの中で、オールスターが12日に開催されるという事実に触れつつ「最も選出に値する選手の一人は、しかしそこにいない。シンプルにファーストネーム(イチロー)で知られる両大陸のスーパースターは、家で過ごすことになる」と言及している。

 一方で、「何人かが予期したように、もしイチローが今季での引退をスプリングトレーニングで発表していたら、MLBはこの未来の殿堂入り選手に対してカル・リプケン、マリアノ・リベラ、デレク・ジーターなどと同様に、オールスターで特別な見送りを行ったに違いない。そのようなお別れツアープランは宙ぶらりんになっている」とも指摘。イチローが50歳までプレーすると明言していることについても触れている。

■ルーカス氏が感銘を受けたイチローの人柄、「最も心を打たれたのは彼の謙虚さ」

 ルーカス氏は、イチローのメジャーデビュー時の衝撃を回顧。2001年に渡米した日本人野手は、リーグトップの打率.350、242安打、56盗塁をマークし、リーグMVPと新人王をダブル受賞。メジャー史上2人目となる快挙だった。さらに、シルバースラッガー賞とゴールドグラブ賞にも輝いた。ゴールドグラブ賞は2010年まで10年連続で獲得しており、イチローがメジャー史に残る名手として名前が刻まれることも間違いないだろう。

 そんなイチローの大きな功績の1つは、パワー全盛で、禁止薬物も蔓延していたと言われる時代に、一線を画したスタイルでメジャーを席巻した点だとルーカス氏は指摘。「彼のスレンダーな体型は、イチローが高いレベルで野球をプレーするために生まれてきた事実を偽って伝えている。彼はその小さな体格でありながら安打製造機であり、頼もしく有用だ。野球のPED時代に彼が対峙したメガサイズボディーと比較するとさらにいっそう小柄だ」としている。

 さらに、ルーカス氏はその人柄にも感銘を受けたという。「イチローについて最も私が心を打たれたのは、彼の謙虚さだ。特にポジティブな遺産を残すことになった時の。私が彼にどう人の記憶に残りたいか尋ねたとき、彼は言った」として、イチロー本人のコメントを紹介している。その内容は以下の通りだ。

「僕は人々、特に若い子たちに、筋肉質でも大きくもないと見られるのが嬉しいです。彼らは僕が標準的な体格だし、他のチームメートと比べると小柄だということに気づくんです。もし僕と同じような体格の人がチームの勝利に貢献するようなプレーをできるのであれば、他の人もできるということです。野球選手になることを夢見る子供たちは、人々から体格などをどう見られるか気にする必要はない。彼らは彼ら自身のゴールに向かって、目標を達成するために、努力するべきです。僕がそうしたように。それが僕をハッピーにしてくれます」

■ジーターはイチローの「国際的なキャリア」に「お墨付き」!?

 また、イチローの“ピート・ローズ超え”は日米通算の安打数であったため議論を呼んだが、ヤンキース時代にチームメートだったデレク・ジーター氏は「国際的なキャリア」に「お墨付き」を与えていると、ルーカス氏は紹介。歴代6位の3465安打を放ち、通算2014年限りで引退したレジェンドも、イチローに敬意を持つ人物の1人だ。

 イチローが2013年にヤンキースで日米通算4000安打を記録した際、伝説のキャプテンは「4000安打はとても印象的な記録だ。たとえそれがリトル・リーグでの4000安打であったとしても関係ないね。彼が自分のいた全ての場所でも一貫していたことを示している。短期間にどれだけ打ったか見るといい。難しいことだよ。イチローはこれまでこのゲームをプレイした誰よりも素晴らしい」と話したという。

「今年のチームからは脱落したにもかかわらず、イチロー・スズキは野球の史上オールスターの一人にとどまっている。いつか彼が最終的に試合にサヨナラを告げたら、彼は2つの文化の橋渡しをし、より多くの人に我らの国民的娯楽を提供することを手助けした典型的なロールモデルであり、大使となるだろう」

 ルーカス氏はこう綴った上で「それは翻訳不要の目覚ましい功績だ」と結論づけている。今年のオールスター出場はならなかったが、イチローが来季以降も変わらぬパフォーマンスを見せるようなことがあれば、毎年のように“待望論”が沸き起こることになりそうだ。