11月3・4日の2日間に渡り、名古屋市日本ガイシアリーナで開催された西日本選手権。全日本選手権への切符11枚をかけて行われた今大会は例年以上にレベルの高い争いとなった。早大からは女子に中塩美悠(人通4=広島・ノートルダム清心)が出場。熾烈…

 11月3・4日の2日間に渡り、名古屋市日本ガイシアリーナで開催された西日本選手権。全日本選手権への切符11枚をかけて行われた今大会は例年以上にレベルの高い争いとなった。早大からは女子に中塩美悠(人通4=広島・ノートルダム清心)が出場。熾烈な得点争いを勝ち抜き10位で現役最後となる全日本選手権出場を決めた。

3日に行われたショートプログラム(SP)。ラストシーズンを迎えた中塩は、現役生活への別れと新たな門出への希望を込めたTime To Say Goodbyeを演じた。 冒頭の連続ジャンプでは1つ目の3回転トウループで高さのある軽々としたものを決め、2つ目の3回転トウループに危なげなく繋げた。続く3回転サルコウも流れに乗って綺麗に決める。スピンでは速いスピードを維持したままスムーズにポジション変更が行い、全てのポジションで回転が充足したとしてレベルを認定された。その結果中四国九州選手権でもレベル4を獲得したチェンジコンビネーションスピンだけでなく、レイバックスピン、フライングキャメルスピンと全てのスピンでレベル4を獲得し、着実にポイントを重ねた。またレイバックスピンやつなぎの部分でも表現に工夫が見られ、曲調に合わせた腕の柔らかい動きがプログラムを一層魅力的に見せた。止まって表現するパートもプログラムの緩急を感じさせる見せ場として美しく舞った。一転ステップではツイズル等難しいターンを踏みながらもぐんぐん進んでいき、柔軟性の高い膝を使った高いスケーティング技術を見せた。「不安があった」という2回転アクセルだけは着氷後オーバーターンをするミスが出てしまったが、それでも1回転とノーバリューになってしまった中四国九州選手権大会からは一歩前進しここでも点数を伸ばした。 2シーズンにわたって磨いてきただけに最初から最後までひとつひとつの動きに意識を払う様子が見受けられ、完成度の高さを伺わせた。


笑顔が印象的な中塩

(記事 青柳香穂、写真 尾崎彩)

 4日に行われたフリースケーティング(FS)。全日本進出へのプレッシャーが重くのしかかる第3グループ、中塩は六番目に登場。「新たなステップへの船出」をテーマに、『タイタニック』の曲にのせた演技を披露した。冒頭のジャンプは、トリプルトーループ-トリプルトーループを予定していたが、セカンドジャンプを2回転に変更。「賭け」だと語ったトリプルフリップは、惜しくも回転が足りずに転倒となった。この後もサルコウが2回転になるなどジャンプのミスはあったが、伸びやかなステップや美しいスピンで存分に会場を魅了。今シーズンから基礎点が上がったコレオシークエンスでは、表情豊かに、情感たっぷりの表現を見せ、上位陣に負けない高いGOE評価を受ける。結果、SP・FS合計で147.72点を獲得、総合10位に入った。引退を意識して挑んだ今大会。目標であった全日本への切符を手にし、キスアンドクライでは安堵の涙を流した。それでも、今日の演技は「不完全燃焼」だと繰り返していた中塩。この悔しさを糧に、最後の大舞台では一層の輝きを見せてくれるだろう。


表情豊かに表現する中塩

(記事 小出萌々香、写真 尾崎彩)

結果

▽女子

中塩美悠 10位 147.72点(SP 56.53点 ・ FS 91.19点)

SPコメント

中塩美悠(人通4=広島・ノートルダム清心)

ーー今回の演技を振り返って

やっぱりジャンプ3本揃えたかったというのはあるので、アクセルを最後ワンターンしちゃったのはすごく心残りです

ーーアクセルを着氷したときどんな気持ちだったか

林(祐輔)コーチに、アクセルがすごい不安という話を最後にされ、もう他は大丈夫だからって言われて、多分そこを強調したかったんだと思うんですけど、不安というのがすごく残ってて、自分自身も不安になってたかなというのはあります

ーー6分間練習の際もコーチとたくさん話している印象を受けたが、それもアクセルについて話していたのか

そうではなくて、コーチは私がいつもパニックになっちゃうからなだめてくれるんです(笑)

ーー2シーズン目のSP、”Time to say goodbay”はどんな思いを込めて滑っているのか

言葉の通り引退なので、もう身を引くという意味だと思うんですけど、その他にもこの曲には意味があって、新たな門出に私は進むから、ここはもうさようならなんですよ、というポジティブな意味もあると、振り付け師のロヒーン先生は仰っていて、”ありがとう”と”さようなら”の意味を込めて滑りなさいって言われてます。自分のスケートに対する思いもその2つと一緒に込めて滑ってます

ーー足や股関節の故障はもう大丈夫か

やっぱり、以前故障したトウループをつく左足の甲が骨座礁になってて、ちょっともう弱くなってて、そんなにいっぱい(トウループは)できないので、試合1週間前に1日2本とか決めて練習してます

ーー今日のトウループは軽く跳んでいるように見え、綺麗だったが

このリンクは跳びやすいです

ーー明日のFSに向けた意気込みをお聞かせください

やっぱり、全日本に出ることが目標なので、それに繋がるような演技をしなくてはいけないので、でも通過、通過ばかり考えてたらまたパニックになっちゃうので(笑)楽しめるように。練習してきた自分を信じて、満足のいく演技ができるように、楽しみながら頑張りたいと思います

FSコメント

――全日本進出決定おめでとうございます。今の感想は

やっぱり、練習通りできなかったので、すごく不完全燃焼な気持ちが大きいです。

――転倒したフリップは6分間練習でも苦戦していた印象ですが、感覚はどうでしたか

フリップは、地元のリンクでの練習の時からちょっと不安が残ってたので、賭けかな、と思って、でも、最初に3回転―3回転が入らなかったから、ずっとどこかでトーループに変えようって思ってたんですけど、なんかそれはやっぱり逃げてるような気がして、構成通りやろうって思って、やりました

――FSの『タイタニック』は鈴木明子さんの振り付けですが、鈴木さんにはどのようなことを教わりましたか

この曲はタイタニックらしくないというか、タイタニックは沈没する悲劇の恋愛のお話だと思うんですけど、一番このプログラムで多い要素は出港する場面で、元気のいい、今から船出する、世紀の最大の船をお披露目して、出港するよって曲がすごく多いんですよ。だから、(鈴木)あっこさんも、編集してくださった方も、次のステップへの出港という意味で、沈没する悲しいタイタニックではなくて、船出するタイタニックを振り付けていただいたと思うので、それを思ってやってました

――昨日のSPの後、楽しんで滑りたいと仰っていましたが、楽しめましたか

ステップのところとかは楽しんで滑れたんですけど、やっぱり、要素が揃ってからの表現だと思うので、そこが揃わなかった分悔しい思いというか、焦りもあるし、不安もあるし、心から楽しむことはちょっとできなかったかなと思います

――SPではスピンで全てレベル4をとっていましたが、普段からスピンやステップの練習にも力を入れているのですか

林(祐輔)コーチのアシスタントコーチで、淀粧也香コーチがいらっしゃるんですけど、テクニカルをやられてて、東日本にも行って採点して来られてたので、今シーズンどういうところを注意したらいいかとかをタイムリーに知ってる方が林チームにいらっしゃるし、今回林先生はいらっしゃらないけど、淀先生がずっとついててくださったので、練習の時から淀先生にステップやスピンのレベルの取り方を細かく教えてもらってました

――全日本に向けての課題や目標、意気込みをお聞かせください

やっぱり、引退を決めてるので、不完全燃焼にならないように、今度こそ心から楽しめるように、自分の納得いく演技ができるように、笑顔で終われるように、それが目標なんですけど、今回早稲田大学は7級は3人とも通過して、皆で行けるのはすごく嬉しいんですけど、やっぱり、同期で同じ時期に引退を考えている東の選手たちも、出られないで悔しい思いをしている選手がたくさんいるので、彼女たちのぶんまで同期として戦いたいな、と思います