プレミアリーグ第11節のワトフォード戦でニューカッスル・ユナイテッドが1-0で勝利し、ようやく今シーズン初白星を挙げた。 8月10日のリーグ開幕から約3カ月で、やっと掴んだ初勝利。暫定ながら降格ゾーンから脱し、ホームのセント・ジェーム…

 プレミアリーグ第11節のワトフォード戦でニューカッスル・ユナイテッドが1-0で勝利し、ようやく今シーズン初白星を挙げた。

 8月10日のリーグ開幕から約3カ月で、やっと掴んだ初勝利。暫定ながら降格ゾーンから脱し、ホームのセント・ジェームズ・パークの住人たちも歓喜の渦に包まれた。勝利に気をよくしたのか、ラファエル・ベニテス監督はゴール裏のサポーターにガッツポーズし、ブラジル人MFのケネディもスタンドにユニフォームを投げ入れていたのが印象的だった。



2トップの一角として4試合連続でスタメンに名を連ねた武藤嘉紀

 一方、不完全燃焼に終わったのが、2トップの一角として4試合連続の先発出場を果たした武藤嘉紀だ。

 前線のターゲットマンとしてハイボールを収めるFWサロモン・ロンドンと、その周囲を走り回る武藤のコンビネーションが良好で、日本代表FWはドリブルなどで積極的に仕掛けた。

 ところが突然、ハプニングに見舞われる。左ふくらはぎに痛みを感じ、前半44分にベンチに向かって交代を求めると、結局、その3分後にピッチを退いた。

 痛めた左ふくらはぎは、前節のサウサンプトン戦で打撲を負った箇所だという。武藤は「打撲のシコリみたいなのが残っていて、試合前からかなり張っていた。そこの筋肉が引っ張られたのかな」と説明した。

 試合翌日に精密検査を受ける予定で、離脱期間については「どのくらいなのか、わからないです」と答えた。ただし、「(足を)伸ばせるので、そんなにひどくはない。次の試合も、行けたらいいんですけど」とし、第一印象としては重いケガではなさそうだと述べた。

 その武藤は治療のため、試合終了のホイッスルをドレッシングルームで聞いた。試合後のニューカッスル一行は喜びを爆発──と思いきや、第10節まで未勝利の重圧は想像以上に大きかったようで、控え室は安堵の空気に包まれていたという。

「みんながホッとした感じ(笑)。ホッとしすぎて、あまり喜んでなかったですね。もっと喜ぶのかなと思ったけど、みんなホッとしたのが先にきていた。僕もびっくりしました」と、武藤も思わず目を丸くしたほど。選手たちは肩の荷が下りた様子だったという。

 ここまで、ニューカッスルの雰囲気の悪さは記者席からも伝わってきた。相手に先制点を許すと一気に意気消沈し、チームからまったく覇気が感じられなくなったのは、そのひとつ。傍目から見ても、チームがひとつにまとまっているようには見えなかった。

 関係者によると、選手同士で互いに互いを責め合うことも少なくなかったようだ。FC東京とブンデスリーガのマインツを経由してきた武藤も、ここまで勝利に見放された状況に置かれたことはなかったと話す。

 ところが今回のワトフォード戦では、チーム全体に前向きな雰囲気が流れていたという。

「今日の試合は、すごいポジティブな声が多くて、誰かがミスをしても、みんな『やろう、やろう』って。だから、『いい結果が出ればいいな』と思ってましたけど。そのとおりになって、本当によかったなと思います。

 今回の勝利で、だいぶよくなると思います。次もホーム(ボーンマス戦)の試合なので。僕は(ケガなので)どうなるか、わからないですけど。とにかく、雰囲気はかなり変わる。練習の雰囲気から変わると思いますし、確実によくなっていく。この勝利は本当に大きい」

 それゆえ、前半に途中交代でピッチを退いたことにも、武藤は歯がゆさを感じていない。もちろん、FWとして自身のゴールで勝利に導くことが最良のシナリオではある。しかし、出口の見えないトンネルをさまよい続けたニューカッスルにとって、勝利こそが最高の良薬である。武藤も次のように語る。

「(歯がゆさ?)ないです。そういう気持ちもないぐらい、僕たちは追い込まれていたので。ほんと、うれしかったです。誰がゴールを決めてもいい。アジョセ(・ペレス)がライバルとか、そういうのも関係なく、まずは勝たなきゃいけなかった。この悪い雰囲気のなかでずっとやり続けることほど、きついことはない。だから、今日は本当によかったなと思いますね」

 気がかりなのが、日本代表への招集だ。11月の強化試合に向けて7日に日本代表メンバーが発表されるが、今回のケガでW杯ロシア大会以来となる代表入りが不透明になった。

 来年1月からアジアカップを戦う日本代表にとって、今回の代表戦が大会前の最後の強化試合となる。それだけに武藤も、「今こうなった(=ケガをした)からわからないけど、今回は(試合に出続けていて)しっかりと準備ができている。代表で戦うってことはやっぱりすばらしいことで、モチベーションにもなる」と意欲を見せている。しかし、ケガを理由に招集を見送られる可能性はありそうだ。

 ニューカッスルとしても、武藤の離脱は痛い。今回のワトフォード戦では武藤を含めて3選手が負傷し、交代枠はすべてケガ人の交代に使われた。もともと、ニューカッスルの選手層は厚くないだけに、早期復帰が望まれる。

 武藤も「こういう激しい戦いだと、どんどん選手が減っていき、総力戦になってくると思う。だから、ここで離脱しているわけにはいかない。とにかく、早くケガを治したい」と力を込めていた。