GPシリーズ・フィンランド大会SP首位発進の羽生結弦 11月3日のグランプリ(GP)シリーズ・フィンランド大会2日目の男子ショートプログラム(SP)。羽生結弦の最初のジャンプの4回転サルコウは、踏み切りで少し力が入っているように見えた。…



GPシリーズ・フィンランド大会SP首位発進の羽生結弦

 11月3日のグランプリ(GP)シリーズ・フィンランド大会2日目の男子ショートプログラム(SP)。羽生結弦の最初のジャンプの4回転サルコウは、踏み切りで少し力が入っているように見えた。

 羽生は、直前の6分間練習でトリプルアクセルと4回転トーループ+3回転トーループをきれいに決めていた。他の選手よりジャンプを跳ぶ本数も少なく、余裕を持った雰囲気で練習をしていたが、6分間の終盤になってから跳んだサルコウは2回転に。そして、終了時間ギリギリでもう1回挑んだサルコウは1回転になっていた。

「6分間の最初のジャンプがすごくきれいに決まっていましたが、そこからだんだん崩れ始めたなというのはありましたけど……。でも、自分では氷に上がってすぐのジャンプがよかったということもあったので、それを信じて跳び切れたかなと思います」

 こう話す羽生の4回転サルコウは、9人中8人のジャッジがGOE(出来栄え点)で+4点、5点を出し、加点は4.30点と高い評価を受けた。その後のトリプルアクセルもきれいに決めると、後半にした4回転トーループ+3回転トーループはセカンドの3回転が着氷で少し止まってしまう流れのないジャンプになり、加点を稼げなかった。

 羽生本人が「こだわりを持っている」と言う後半のパートでは、大きさと緩急をつけてダイナミックに滑ったステップこそレベル3に止まったが、3種類のスピンはすべてレベル4の評価を獲得。

 演技構成点もトランジションの9.39点からコンポジションの9.64点の間でまとめて2番手のミハイル・コリヤダ(ロシア)に4.35点差をつける47.60点を獲得。合計を新ルールでは世界最高の106.69点にし、2位のミハル・ブレジナ(チェコ)に13.38点差をつけてトップに立ったのだ。

「とりあえず100点を超えたのは大きいかなと思います。まずはそこが一番です。まだまだ自分のベストの点数ではないかもしれないけど、とにかく明日も残っているという気持ちも含めて、この点数からまた新たに身を引き締めて明日につなげられればと思います」

 SPのジャンプはすべてを手の内にしていると言ってもいいジャンプばかりだ。本人も「この構成でミスなんかしていられない」という気持ちでやっているという。だが、それだけで納得しないのが羽生である。

「ジャンプも安心してやるのであれば、たとえばイーグルを抜いたりツイズルを抜いたりとか、ダブルスリーを抜いたりとか、いろんなことができると思います。でもこのショートプログラムに関してはだいぶ滑り込めてきているとも思うし、何より自分がジャンプに入るにあたって『ジャンプを跳びますよ』というプログラムにはしたくないので。リスクをちょっと取りながらも、自分の中で安定して気持ちを入れられるようにと心がけています」

 ジャンプ以外の要素をすべて後半に入れ、観客の声援や盛り上がりにも後押しをしてもらうことも考えて作った構成は、「とくに今日はスピンのところでは自分の中ですごく気持ちも込められたと思うし、あとは自分のステップの部分も後半の曲の盛り上がりだけではなく会場の雰囲気もすごく盛り上がって後押しをしていただけるような雰囲気もあったので。そこはすごく自分自身も気持ちよくできたかなと思います」と話す。

 だが、そんな構成だからこそ、ジャンプを跳べないなどの大きなミスをしてしまうと点数が出にくいということを、初戦のオータムクラシックで感じたという。だからこそジャンプを大事にし、なおかつ自分がやりたいプログラムとしての完成度を高めるために、スローな曲調に合わせた柔らかなものにしようとしている。

 そんな意識を持って臨んだGP初戦のSPでの高得点。それは昨季より体力を消耗するうえに、終盤に難度の高いジャンプが続く構成のフリーに向けても大きな力になるものだ。