現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜でプレーし、2017年からヤクルトの2軍バッテリーコーチ、2018年から1軍バ…

 現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜でプレーし、2017年からヤクルトの2軍バッテリーコーチ、2018年から1軍バッテリーコーチを務めていた野口寿浩さんの退任が決定した。

1990年にプロ入りし、現役生活20年。球界ナンバー1捕手と言われた古田敦也選手と同期入団とあって表舞台に立つことは少なかったが、当時の野村克也監督に叩き込まれ、第二捕手として絶大な信頼を築いていた。日本ハム移籍後は正捕手としてオールスター出場、打率・盗塁阻止率キャリアハイを記録するなど、その能力の高さを示した。その後阪神では、2019年シーズン新監督に就任する矢野燿大選手、横浜では若手の控え捕手として役割を果たしてきた、不遇の名捕手だ。

 

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期待のエースの能力を引き出した苦労人

 

2017年シーズンは主力選手を怪我で欠き、球団ワーストの96敗で最下位を独走。一軍コーチ陣を刷新し挑んだ2018年シーズンは交流戦最高勝率、セリーグ2位でCS出場も果たしたヤクルトスワローズ。主力の復帰、若手の台頭・覚醒の他に、野口さんが注目する選手がいる。

「ドラフト1位で入団してきて期待されながらもイマイチ活躍できないできたのが原樹理(投手)。持っている球はすごくいいし、能力はすごくあるからこそ、活躍できないジレンマが本人にも周りの人達にもあった。そんな原樹理がいいピッチングをし始めたきっかけが、控え捕手だった井野卓とのバッテリー。原樹理が一回登録を抹消して中継ぎを経験して、なかなか結果が出ないなかで何かを変えようとなった時に、一番手っ取り早いのがキャッチャーを変えることでした。それで井野を使ったら、原樹理にフィットした。」

井野卓選手は楽天、巨人、ヤクルトと渡り歩いたプロ13年目の控えキャッチャー。楽天、巨人ともに一軍での目立った活躍はなく、2014年に戦力外通告受けてヤクルトにやってきた。ヤクルトでも主に二軍生活を送り、一軍出場機会は正捕手の中村選手や二番手捕手として期待されていた西田選手の負傷に伴うものがほとんどだった。

「西田は怪我をしていたので、使いたくても使えなかった。若手のキャッチャーもレベルの高いところにはいるけど、一軍で使えるところまでは達していない。引き出しが少なく、まだまだ試合経験を積む段階なので、一軍に置いておくより二軍で経験を積ませたかった。そもそも、シーズンが始まる時にチームの方針として中村を中心としてやって行こうということだったので、キャッチャーを変える事ありきではなかった。そういう事情もあって、一軍の控えキャッチャーは井野だった。」

そう、一軍バッテリーコーチだった野口さんが言うように、開幕当初は期待されて一軍に帯同していなかった。井野選手が出場しなくて済むことがチームにとって本来の方向性ではあったが、正捕手の中村選手が頭部死球を受けたことにより出場機会を掴むことになる。

「西武との交流戦、石川が投げていた試合で中村が危険球を受けて、途中から井野が出る事になった。ピッチャーが変わらない中でキャッチャーの途中出場ってすごく難しいんですよ。でも、あいつはよく試合見ているし、俺ならこうするという視点で見てくれている。だから井野を出すことに不安はなかったですね。実際、その試合は勝ち切ることができた。」

それ以降、井野選手の出場機会が着実に増えていった。

「いざ、原樹理と井野を組ませてみたら、好投して。井野は特別変わったリード、配球をしているわけではないんですが、構え方が原樹理には合った。それは井野が今まで持っていた良さなんですよね。中村が悪いわけでないですけど、井野は広く構えてくれて、カウントの取り方が上手かった。ストライク先行になれば、腕を振って思い切って投げられる。それで気持ち良く投げることができたんだと思います。」

「正捕手・中村を脅かすくらいの存在になって欲しい」

 井野選手とコンビを組み始めた原樹理選手は、以降のレギュラーシーズンを5勝1敗(シーズン6勝7敗)でローテションの主軸に。他にも、高卒3年目の高橋奎二投手をプロ初勝利へ導いたり、中村選手に次ぐ第二捕手として実績と信頼を重ねていった。

「正捕手の中村は間違いなくいいキャッチャー。キャプテンでキャッチャーという大変な仕事をしてもらっていると思っている。中村は性格的にも責任感が強い。だからこそ、打たれたくない、抑えたい。負けたくない、勝ちたいという気持ちが強すぎてから回ってしまうこともあると思う。ただ、中村の地肩の強さは球界でもトップクラス。ソフトバンクの甲斐、巨人の小林の次くらいじゃないかなと思う。スローイング技術はまだまだ伸びる余地があると思うから、さらなる成長に期待していますよ。そしてなんと言っても彼は体が強く、怪我に強い。それって一軍のキャッチャーにとってはとても大事な要素であって。例えば、これから先さらに成長していって古田さんみたいなキャッチャーになった時に、それだけの能力があるのに怪我が多くて試合に出られないとなったらチームにとっては大ダメージ。それが、彼はよっぽどのことがないと休むって言わない。体が痛いところなんてあるはずだけど、絶対に休みませんって言う、そういうタイプ。それはチームにとって必要な要素で、とてもありがたい。」

チームはシーズン途中から中村選手を休ませつつ、井野選手と併用することに。時を同じくして、打線や投手陣の整備も進み、最下位からリーグ2位にまで順位を上げていった。井野選手はプロ13年目にして一軍47試合に出場し、キャリアハイを記録した。

「井野の出場機会はまだまだ多くないけど、たまに出て行った時に自分を表現できる。はっきり言って、バッティングはピッチャーの方が打つってくらいのウイークポイントだけど(笑)。地肩が強い選手ではないけど、スローイングさえなんとかなれば、レギュラーとれるくらいまでなるかもしれない。今シーズン始まってから井野に『スローイングの特訓を若手並みにやるかもしれないけど、我慢してついてきてくれるか』と聞いたら『やります』と言ってくれて。そしたら、9月くらいに広島戦で、野間と田中広輔の盗塁を2つ刺してくれた。やっと成果が出てきた、やっと身に付いたなって嬉しかったね。あの盗塁を刺してから盗塁の企画数がグッと減った。成果として現れ出したのが終盤だったので、阻止率とかの数字的には上がらなかったけど、これからもっと伸びていくはず。35歳、地肩は今更そんなに強くならないけど、スローイングの技術的なことは鍛えることができるから。ヤクルトは毎年補強できるようなチームではないので、現有戦力の底上げというのが大事になってくるチームですしね。なので、俺の中でのMVPは井野にあげたい。大事なところで締めてくれた存在なので。」

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