今年も、この季節がやってきた。全国学生選手権(インカレ)は、学生相撲最高峰の大会。各大学の相撲部員たちは、この舞台のために稽古を積んできた。大会初日は、個人戦。早大からは8人が出場したが、いずれもベスト32の決勝トーナメントには残れず。選…

 今年も、この季節がやってきた。全国学生選手権(インカレ)は、学生相撲最高峰の大会。各大学の相撲部員たちは、この舞台のために稽古を積んできた。大会初日は、個人戦。早大からは8人が出場したが、いずれもベスト32の決勝トーナメントには残れず。選手たちは悔しさをにじませた。二日目は、1年間の集大成となる団体戦。大舞台で、強い『気持ち』を見せられるか。

 すっかりチームの柱となった長谷川聖記(スポ2=愛知・愛工大名電)。初戦、九州情報大選手を相手に、右四つから万全の寄りで勝利すると、2戦目は逆に左四つで右の上手を引き、寄り切りで白星を挙げる。しかし、さらなる勝ち上がりが期待された3戦目に、落とし穴が待っていた。相手は、動きのある専大の選手。長谷川は左で上手を取り、寄ったが、土俵際で相手が決死の内掛けを見せると、ほんのわずかの差で長谷川が先に土俵に落ちてしまった。長谷川はこの一番を振り返り、「自分が相手に技をかけさせてしまったのが反省点」と述べた。一方、10月の東日本学生リーグ戦(リーグ戦)で好調ぶりを見せていた橋本侑京(スポ3=東京・足立新田)も、上位進出が期待された。初戦は、阪大の選手を相手に難なく白星。2戦目は、日体大選手との対戦。動きの相撲を取る橋本にとって、相手と四つ身で胸を合わせることは避けたいところだったが、橋本が左を差すと、相手に右の上手を取られ、胸が合ってしまう。橋本は土俵際、左下手で投げを打ったが、相手の上手投げに屈し、悔しい敗退となった。


3回戦で敗れ、天を仰ぐ橋本

 唯一の4年生である若林魁主将(スポ4=岐阜農林)は、このインカレがワセダでの最後の土俵となる。初戦は、得意の突きが炸裂、白星を挙げたが、2戦目の内容は決して良いと言えるものではなかった。立ち合い、低く当たってきた相手に対し、思うように突きが出せない。左にまわり込もうとしたところで、相手を呼び込み、俵に詰まる。思い直して突いて出たが、逆に押し返され、最後は若林の左足が土俵を割ってしまった。若林は、立ち合いに迷いがあったと言い、「最悪の相撲だった」と悔しがった。若林は、団体戦では副将戦に入る。鋭い出足と回転の良い突き、チームを鼓舞する主将の姿を、国技館の土俵で見たいところだ。


土俵際で引いてしまい敗れた若林

二日目は勝負の団体戦。早大は、先鋒を橋本が務め、長谷川、新人の二見颯騎(スポ1=東京・足立新田)と続き、副将に若林、大将戦の土俵には佐藤太一(社3=大分・楊志館)が上がる予定だ。まず待ち受けるのは、Aクラス予選3試合。初戦のBクラス上位校との対戦で波に乗った上で、拓大、近大との戦いに臨みたい。「なんとか『気持ち』を出してもらいたい」(室伏監督)。「なんとしても勝つんだという『気持ち』をみんなが持てるように」(若林)。唯一の4年生としてチームを支えてきた若林が、最後の土俵で輝けるか。成長した後輩たちが、若林の花道を飾れるか。昨年は届かなかったベスト8、そしてさらなる高みへ。全ては、早大相撲部みんなの『気持ち』にかかっている。

(記事 元田蒼、写真 望月清香、吉岡拓哉)

結果

個人戦予選トーナメント

長谷川聖記参段(スポ2=愛知・愛工大名電)

一回戦 ○対吉本弐段(九州情報大)寄り切り

二回戦 ○対坂井田参段(愛知学院大)寄り切り

三回戦 ●対村山弐段(専大)内掛け



橋本侑京参段(スポ3=東京・足立新田)

二回戦 ○対平井(阪大)押し出し

三回戦 ●対西参段(日体大)上手投げ



若林魁参段(スポ4=岐阜農林)

一回戦 ○対長松(大歯大)押し出し

二回戦 ●対山市弐段(拓大)押し出し



浅田大介参段(社2=石川・金沢学院)

一回戦 ○対伊藤初段(広大)送り出し

二回戦 ●対廣尾参段(日大)押し出し



勝山烈(文構1=兵庫・葺合)

一回戦 ○対玉真(立大)寄り切り

二回戦 ●対篠田参段(明大)押し出し



佐藤太一初段(社3=大分・楊志館)

一回戦 ●対瀧参段(近大)押し出し



二見颯騎弐段(スポ1=東京・足立新田)

一回戦 ●対佐藤初段(明大)押し出し



浅井優太(教2=千葉・稲毛)

一回戦 ●対松田(金沢学院大)寄り切り


コメント

室伏渉監督(平7人卒=東京・明大中野)

――ついにインカレを迎えました。選手たちの気持ちの面はいかがですか

気持ちの面では、「やろう」というところはあると思います。ただ、今日は、のってないというか、そんな感じがありましたね。

――長谷川選手は惜しい相撲で敗れました。どうご覧になりましたか

聖記はね、チャンスは十分あったんですが、力が入りすぎちゃってるよね。平常心であれば、稽古場でやっても負けるような相手ではないんだけど、意識したんだろうなあ。それがありましたね。

――四つの安定感は見られました

そうですね、ただ負けた相手は足技があって、そのことを(長谷川に)言う前に送り出してしまいました。それは、私も責任を感じています。

――橋本選手については

侑京は、相手に左四つに組まれて右の上手を取られてしまいました。四つにならなければチャンスはあったんだけど、そもそも四つになってしまったのが負けた原因だよね。

――動きの中で、という形になってしまいましたか

そうですね。動きの中で、ということになってしまったのは、相手の相撲に合わせてしまっているというか、相手に相撲を取られてしまったということですね。

――若林主将については

若林は、正直、最悪でした。「なんであんな相撲を取ったんだ」と聞いたら、迷ってしまったと。結局、そういう風な相撲を取ってしまうと、みんなに影響するんだよね、主将だから。もっと激しく、負けてもいいから、もっともっと前に出て、やってもらいたいな、と。

――明日は団体戦になります。展望は

予選の通過は最低限の目標なので。そこに行きたいです。

――予選では3チームと戦います。どことの対戦がポイントになりますか

しょっぱなだね。しょっぱなの試合が一番大事です。Bクラス上位との対戦、そこで勝てば勢いにのるだろうし。昨年はそこで負けてしまったので、悔しい思いを本人たちが一番知っていると思います。なんとかしたいな、と。

――若林主将は最後の相撲になります。期待は

勝敗どうこうではなく、気持ちの面で、「自分たちはこうしたいんだ」というものを見せてもらいたい。それだけかな。

――相撲の面では

相撲もね、今さら技がうんぬんではなくて、気持ちで出てくると思うので。なんとか『気持ち』を出してもらいたい。それだけ。そこに尽きるね。

――その『気持ち』は、主将だけではなく全員に当てはまることでしょうか

そうだね。全員にも言える。その部分で自分でどうしたいかという。そうすると体も自然に動いてくるし。気持ちの面を全面的にみんなで出していくことで、結果がついてくるのでは、と思っています。

若林魁主将(スポ4=岐阜農林)

――まずインカレ初日は個人戦でしたけど、どんな気持ちで臨まれましたか

まずは目標としてベスト32が第1目標で、そこからはベスト8入ると全日本選手権に出られるので、そこを目指して臨んだんですけど、こういう結果(2回戦敗退)になってしまったので悔しいですね

――負けた相撲は、最初は行事軍配がこちらに上がる接戦でしたね

いやもう本当に最悪の相撲だったというのが感想で、本当に自分の悪いところが全部出ちゃった相撲の内容で、反省することばかりだなという感じですね。

――具体的にはどんな点ですか

立ち合いでちょっと迷ってしまって、立ち合いを迷ってしまった結果、自分の立ち合いができなくて、威力なく鋭さも欠けてしまって、そこから悪い癖である引きも出てしまって、本当に良いところがないメンタルの弱さが出てしまったというか。きょうは良い感じで土俵には上がれていたんですけど、相撲の内容は、あの迷ってしまったところで負けだったかなと思います。

――明日は団体戦ですが、きょう悪かった点をどう修正していきたいですか

もう本当に気持ちだけなんで、体は結構良い状態にはなっているんで、あと気持ちだけしっかり整えて、なんとしても勝つんだという気持ちをみんなが持てるように声掛けもして、ベスト4を目指して頑張りたいと思います。

――明日は若林さんが主将として、そして大学生として最後の大会ですが、そこにかける思いを最後に聞かせてください

もう本当に最後の試合になるので、悔いの残らないように、そしてこの仲間と最高の思い出がつくれるように、また応援してくださる親やサポーターズ倶楽部の方や監督やコーチに恩返しができるように、一戦一戦思い切って相撲を取りたいなと思います。

橋本侑京(スポ3=東京・足立新田)

――まず、初日の個人戦はどんな気持ちで臨まれましたか

12月のアマチュア選手権(全日本選手権)への出場がほぼ間違いない状況で、その前のインカレは個人戦としても大きな大会なので、自分の相撲を取って攻めていこうかなという気持ちで臨みました。

――実際、きょうの内容を振り返っていかがですか

やっぱり組み合わせを見たときから3回戦が山場だなと思っていて、相手は日体大の主将の人で、春先に日体大に出稽古に行ったときも、分が悪くて3:7くらいの割合だったかなと思うんですけど、でも自分の体勢になれば勝てないことはなかったので、一発狙いにいったんですけど、相手のかたちになってしまったのが敗因ですね。それだけです。

――その相撲も途中まではチャンスがあるように見えたんですが

そうですね。立ち合いは意識して、相手は前ミツを取ってくるんで、そこはしのぐことができたんですけど、2発目で綺麗に入られてしまって、そこがダメでしたね。

――明日は団体戦ですが、きょうの反省点も生かして、どんな相撲を取っていきたいですか

やっぱり、きょう負けたことは忘れてはいけないんだろうけどリセットして、自分は明日は先鋒なので、このチームに流れをつくれるように頑張っていきたいと思います。

――明日はこのチームで最後の大会ですが、団体戦にかける思いを聞かせてください

ことしのチームの特徴としては、やっぱり去年と比べると4年生の人数が少なくて、若林先輩ひとりに責任を負わせたり、負担も大きかったチームで苦労したと思うので、気持ちよく送り出せるように、しっかりみんなで3点取って、インカレ上位入賞を目標に頑張ってきたので、そこを目指して頑張っていきたいと思います。

長谷川聖記(スポ2=愛知・愛工大名電)

――今大会が今年度最後の個人戦となりましたが、この半年間を振り返っていかがでしたか。

個人的には怪我もあって、あまり練習もできてなくて負けることが多かったんですけど、その分課題も見つかりこれからの練習により一層力が入るなという感じはします。

――1回戦2回戦は安定感のある相撲に見えましたが振り返っていかがですか。

1回戦2回戦の相手は普通にいけば勝てる相手かなと思っていて、調子も良かったので、落ち着いていけてよかったと思います。

――3回戦では土俵際で逆転負けを喫すという非常に悔しい結果となりましたが、どのように受け止めておられますか。

非常に悔しい結果に終わってしまったんですけど、相手の技もあれしかないと分かっていて、自分が相手に技をかけさせてしまったので反省点かなと思います。

――明日はいよいよ団体戦です。どのような気持ちで臨みますか。

気持ちを切り替えて、調子も悪くはなかったので、明日はしっかり自分の相撲を取って、良い結果で終われればいいかなと思います。