【磨斧作針】

鮮烈なインパクトを与えた2時間5分50秒。路面は濡れ、後半は風も強く、レース環境は良くなかったシカゴマラソンで打ち立てた日本新記録でした。

身長170㎝、体重は53㎏の身体がリズミカルに弾むように推進力を強く保ち続けた42.195㎞。日本新記録を打ち立てるべくして打ち立てた…そんなふうにも見えた大迫選手の快走。しかし、そこには想像を絶する自己との闘いがありました。

ターゲットは日本新記録ではなく、世界トップを走る外国人ランナーに勝てるランナーとして生きること。その為に何をすればいいか、答えは大迫傑という人間と向き会うこと。

大学から一度、企業に属し競技を続けるも、すぐにプロランナーに転身し、アメリカに渡りました。その理由も、周囲を気にすることなくより自分と向き合える環境に身を置くため。

インタビュー中、彼の表現は他者と比べるのではなく、自分との比較でした。あの時、あの瞬間、あの場所でどんな自分がいたのか。自分の何を改善すべきだったのか。「答えは自分の中にあり、マラソン競技をより充実させたものにするには今の自分を超えていくこと」と語ってくれました。自己を分析する能力の凄まじき高さ、これこそが大迫傑の最大の魅力。

分析の結果、自己を磨けば、まだ記録は伸び、外国人ランナーに勝てる可能性があると言ってくれた大迫選手。

鉄の斧を磨き、強き針を作る…惜しむことなく努力を続ければいかなる困難も乗り越え、成就するという意味を持つ麿斧作針という言葉が頭に浮かんだ珠玉のインタビュー時間でした。

取材・文 / スポーツアンカー・田中大貴

写真協力/スタジオ・アウパ

大迫選手のインタビューの模様は、田中大貴氏がMCを務める無料スポーツアプリ「スポーツブル」内の動画「CRAZY ATHLETES」で、2018年11月9日(金)昼12時から初回ロール公開予定。