冬季スポーツのシーズンが今年も徐々に始まっている。10月26日から行なわれた「スピードスケート全日本距離別選手権」の2日目、女子1000mに出場し、2位にとどまった小平奈緒(相澤病院)は、「もっと悔しいかと思ったんですけど、意外にそう…

 冬季スポーツのシーズンが今年も徐々に始まっている。10月26日から行なわれた「スピードスケート全日本距離別選手権」の2日目、女子1000mに出場し、2位にとどまった小平奈緒(相澤病院)は、「もっと悔しいかと思ったんですけど、意外にそうでもなくて……。自分の状況をすごく冷静に見られているというのもあって、成長を感じています。自分の競技に対する考え方が他の人を対象にするのではなく、戦うべき相手は自分自身なんだと今までよりフォーカスできています」と前向きに試合を振り返った。



今シーズンもまだまだ進化したいと前を向く小平奈緒

 レースはスタートからコーナーにかけての距離が短く、インレーンスタートより加速しにくい不利なアウトスタート。それでも、小平は同走の佐藤綾乃(高崎健康福祉大)に最初の200mで0秒78差をつけて、そこからさらに加速すると、通常ならインレーンスタートの選手が先行する最初のクロッシングゾーンで先行してしまう展開になった。

「今日は本当に自分を試されているレースだと思いました。平昌五輪と同じアウトスタートで、バックストレートでは1回も前の選手を追える状況ではなかったので、自分でレースを組み立てるという意味では練習のようにできたと思います。あとは競っていない状況で、何を課題にしてレースを組み立てていくかということに集中できました」

 1週間前のジャパンカップでは、500mと1500mに出場し、37秒78と1分57秒66で優勝していた。指導する結城啓匡コーチは「いつものパターンですが、500mと1500mの練習をして、1000mは2レース、3レースやっていくうちに仕上がってくるという形でやっています。なので1000mに関してはまだ600m通過の練習も全然していない状態で、そういう意味では及第点だと思います」と語った。

 シーズンインへ向けては、9月に氷上練習である程度仕上げることを予定していたが、北海道胆振東部地震の影響で帯広のリンクが使えなくなったため、仕上げが1カ月ほど遅れてしまい、現時点では例年の9月末くらいの状態だという。

 そんなコンディションで滑った初日の500mは、2位の髙木美帆(日体大助手)に0秒68差をつけて37秒30で圧勝した。

「先週のジャパンカップから調子を上げたというより、上がってきた感じです。やっぱり体が準備できれば普通に滑れるなというのが今日わかりました。あとは、レースをやりながら『こうしたい』というのが何カ所かあったので、そこを修正できればいいかなと思います」

 コーナリングの感覚をまだ試合では掴めておらず、「五輪の時の滑りにまだ到達していない」と言う小平。だが、「一度つかんだ感覚は体の中に残っているはずで、これから体を作り上げていけば思い出してくると思う」とも言う。そしてそれが「シーズン後半にピタリと合ってくればいい」と落ち着いた表情で話す。

 また、1000mは今シーズン初レースということで、まだレース勘は戻っていなかった。200mを過ぎてから加速しようとした時に少し躓(つまず)いてしまったのが惜しかったと振り返る。

 結城コーチは「練習の時の氷が安定していなくて霜が乗ったり、今日のようにツルツルだったりしたので。たぶん今日はブレードがちょっと氷を嚙みすぎたと思うんです。そのへんは微妙なところですが、これから精度が上がって戻ってくると思います」と説明する。

 同じアウトスタートでリンク記録(1分14秒58)を出した昨年の五輪選考会の時は、最初の200mを17秒88で滑って、そこからの400mは27秒18だった。今回は200mまでは17秒78とタイムを伸ばしたものの、次の400mは27秒41と遅れ、ラスト1周も0秒39遅い29秒91と伸びなかった。

「リズムがはまり切っていなかったのですが、こればっかりは氷の上で感覚を見つけていかないと身につかないので、そこはこれからの楽しみです。1000mは余裕がある分、ちょっとヤンチャな部分が出てしまうけど、今はメンタルコントロールができているので、1000mにも生かされるかなと思います」(小平)

 結城コーチも「今回の1000mは、狙えるような手ごたえを持って臨んではいなかったので、一発目のレースとしてはこんなものだと思います。去年のこの大会ではゴール前で転倒したんですが、その時のスピード分析をすると1分15秒1くらいの滑りで、今回もそれにほぼ匹敵する結果かなと思っています」と楽観視する。

 小平自身も今シーズンの成長を楽しみにしている。

「他の人を見て、うまいなと思う部分がなければ自分自身も成長できないと思うので。その点では髙木選手もそうなんですけど、男子の選手を見ても参考にしたいなと思う選手が多いです」

 大会記録(1分14秒86)で優勝した髙木の存在や、上位3人が国内最高記録で滑り、優勝記録はリンク記録に迫る1分08秒62だった男子の進化は、小平にとっていい刺激になっている。

 そんな状況を冷静に受け止めて分析し、自分の進化につなげようとする小平。11月16日から行なわれるW杯帯広大会が、彼女にとって本格的なシーズン開幕になりそうだ。