第8週に慶大が最終戦を戦うのは早大だ。開幕の法大戦こそ落としたが、その後は勝ち点を積み重ね、早慶戦を前に勝ち点は3。連勝すれば優勝の可能性を残している。対する慶大は勝ち点を取り、勝ち点5の完全優勝を成し遂げるほか優勝はない。早大の中心と言え…

第8週に慶大が最終戦を戦うのは早大だ。開幕の法大戦こそ落としたが、その後は勝ち点を積み重ね、早慶戦を前に勝ち点は3。連勝すれば優勝の可能性を残している。対する慶大は勝ち点を取り、勝ち点5の完全優勝を成し遂げるほか優勝はない。早大の中心と言えばエース兼主将の小島和哉(スポ4・浦和学院)。勝利のためには点をもぎ取らなければならない小島を多角的な目線で分析した。

1.絶対的エース小島

今季ここまでリーグトップの防御率1.53を誇る小島。開幕の法大戦こそつまずいたが、以降は安定した活躍を披露している。

小島スタッツ①
 防御率被打率被長打率BB%
通算1.53.223.2778.55
法大戦5.27.339.4756.25
法大戦以降0.40.177.1979.41

※BB%は四死球数/打席数。

法大戦では3試合で13と2/3回で被安打20。向山と中山に本塁打を許した。なお、この2本塁打以降小島は今季を浴びていない。法大3回戦では3点リードの8回に一挙4失点を許すなど精彩を欠いた投球だった。

しかし空き週を挟んだ立大戦以降は5試合に登板して全試合で9回完投。失点はわずかに2で許した長打も二塁打3本のみと完璧な結果だ。四死球もやや高い印象を受けるが、明大1回戦で7つ与えるという不安定さがあったためだ。いずれにしても1試合で3つほどしか与えていない。内野手も失策はわずか2つ。チャンスを与えてくれるということはないだろう。

小島スタッツ②
 被打率被長打率BB%
通算.223.2778.55
対右打者.183.2659.82
対左打者.259.2877.38

意外にも対左打者の被打率が悪かった。これは法大の小林や川口凌、宇草、明大の渡辺佳、立大の種田など左の巧打者が多かったことが挙げられる。立大戦では左打者が多かったとはいえ、打たれたヒット10本のうち8本が左打者と極端な結果が表れた。一方で右打者の被長打率が悪化しているのは先ほど述べたように中山と向山に一発を浴びたことが原因だ。

最後に早慶戦での成績を確認する。

小島スタッツ③
 結果被安打失点奪三振与四死球追記
1春2回戦先発○11初先発初勝利
1秋1回戦先発○81/3 
2春3回戦先発○13初完投
2秋1回戦先発●61/3 
2秋3回戦中継ぎ最優秀防御率確定
3春1回戦先発52/3清水翔満塁弾
3春2回戦中継ぎ立大優勝決定
3春3回戦中継ぎ 
3秋1回戦先発● 
3秋2回戦中継ぎ0/3慶大優勝決定
4春1回戦先発●完投
4春2回戦先発○先発で連投
早慶戦通算12登板8先発 4勝3敗 防御率2.60 被打率.206
62回1/3 46被安打 18失点 56奪三振 33四死球 被OPS.633

早慶戦という舞台の仕業か、やはり印象的な試合がそろう。意外にも先発した試合ではイニング以上にランナーを出すことに成功している。今季もそうとはいかないのは確かだが、必ず好機は現れる。それを逃さずに点につなげたい。

2.両校の歩みを振り返る


小島から何点もぎ取れるか

早大は第1カードが法大戦。エース小島の不調もあり、初戦は新戦力・瀧澤虎太朗(スポ2・山梨学院)の初本塁打が飛び出すも、ルーキー三浦に初完投を献上する不穏な幕開け。2回戦3回戦と2度の延長戦を戦い、2回戦は制したものの3回戦は惜しくも及ばず、開幕カードを落としてしまった。しかし、続く春2位の立大戦では小島が立ち直り、打線も相手エース田中誠也を打ち崩し1回戦を取った。2回戦も今西拓弥(スポ2・広陵)、早川隆久(スポ2・木更津総合)とつなぐも打線が零封され、最後はサヨナラ弾を浴びた。3回戦では打撃不振の加藤雅樹(社3・早稲田実業)がついにスタメン落ちした。打線には苦労したが、中1日の小島はどこ吹く風。1回戦以上の快投を見せ、今季初の完封勝利を収めた。東大戦は1回戦を小島が中4日もなんのその、難なく完封すると、2回戦は西垣雅矢(スポ1・報徳学園)も続いて3試合連続完封勝利を収めた。明大戦でも投手陣の好調さは変わらず、1回戦こそ引き分けに終わったが、2回戦で粘り勝ちを収めると、3回戦は加藤が今季初本塁打を放ち先制すると、小島も完ぺきな投球を披露し、8―0と理想的な形で勝利をおさめ、早慶戦を迎えようとしている。

慶大は東大戦で打ち勝ったものの、投手陣が2試合連続4失点と不安の残る立ち上がり。続く明大戦では髙橋佑樹(環3・川越東)の好投と嶋田翔(環2・樹徳)の本塁打が要所で飛び出して勝ち点を獲得。そして法大戦。1回戦は小原和樹(環3・盛岡三)の初本塁打が飛び出して勝利したが、2回戦は明大戦と同じく投手陣が打ち込まれて敗戦した。3回戦では死闘の末、大平亮(環4・鎌倉学園)、植田清太(総4・慶應)、長谷川晴哉(政4・八代)ら4年がここ一番で仕事をこなし、最高の試合を勝利で収めた。立大戦は髙橋佑が1回戦で1失点でリーグ戦初完投、2回戦は惜しくも落としたが、3回戦では初完封を飾り、無傷で勝ち点4まで到達した。


髙橋佑は小島に投げ勝たねばならない

重なるところを見ていくと、早大は法大から勝ち点を落とし、慶大も法大に最後の最後まで苦しめられた。強打の相手に得点を奪われる中で、延長に突入する試合もあった。その中で早大は粘り切れず敗戦。慶大はなんとか食らいついて勝利を収めたことが現在の順位に繋がっていると言っても過言ではない。しかし、早大が勝ち点を獲れば勝率差で慶大の順位を早大が上回ることになる。これは2回戦が理由だ。早大は明大戦で1回戦を引き分けたのち連勝を収めて勝ち点を獲得した。一方慶大は東大戦を除く3カードで1回戦勝利、2回戦敗北、3回戦勝利を続けている。2回戦の内容を比較すると、慶大は投手が打ち込まれて早々に情勢が決まってしまった試合が多い一方、早大は法大戦こそ6失点したが以降は1失点、無失点、1失点と試合は壊れていない。法大戦以降に限ると1失点4試合、無失点4試合とチーム防御率は驚異の0.50を誇る。この鉄壁の投手陣から少ないチャンスを逃さないことがなによりも大切だ。

3.早大対策は

やはり小島から点を取らないことには話が始まらない。だが、長打も連打も法大戦以降はほとんど許していない。出塁したランナーをなんとか返さなければならない。チャンスを広げるという意味で上位の中村健人(環3・中京大中京)、渡部遼人(環1・桐光学園)が出塁し、盗塁を仕掛けたい。クリーンアップはなによりチャンスでの一本が重要。1年秋に小島から本塁打を放った郡司裕也(環3・仙台育英)の打撃に期待がかかる。下位打線も好調の中村に繋ぐという点でなんとか出塁したい。送りバントをきっちり決めてミスを出さないことも流れを渡さないうえで大事なポイントだ。そして慶大の特徴である粘り強さもキーになる。小島は球数を重ねてもクオリティが落ちる投手ではないが、少しずつプレッシャーをかけてチャンスをうかがっていきたい。小島が被弾した2本を振り返ると、中山には高めの半速球、向山は真ん中のチェンジアップといずれも失投を狙い打ったものだった。小島の失投は簡単に狙えるものではないが、流れを変える嶋田と中村の一発には期待せずにいられない。中継ぎでの登板が予定される左の早川や今西は勢いがあり、西垣も制球力に長けている。それぞれ打つべきボールを決めて早いカウントで捉えたい。

早大打者は上位打線に注意だ。トップバッター起用が続いている福岡高輝(スポ3・川越東)、好調を買われて3番に昇格した檜村篤史(スポ3・木更津総合)、復調が見える加藤、どっしり構える岸本朋也(スポ4・関大北陽)と昨季以上に層は厚くなった。上位の選手は打率だけでなくパワーも兼ね備えており、長打で流れを変えられてしまうという展開には気を付けたい。春季は送りバントが目立ったが、要所でエンドランを仕掛けてくることも多くなった。盗塁させない投手のけん制、阻止する郡司の肩にも注目だ。慶大投手陣はやはり髙橋佑、髙橋亮吾(総3・慶應湘南藤沢)のW髙橋を中心に守っていく形になる。両投手とも低めに集めてゴロで打ち取る本来のペースに持ち込んでいきたい。


1年越しにこの風景が見たい

無傷の勝ち点4で臨む早慶戦。これは春と同じ状況だ。春は勝ち点を落としたが、もう慶大が止まることはないだろう。春を「超越」し、栄冠をつかむその日はもうすぐだ。

(記事:尾崎 崚登)

対戦成績(第7週終了時点)
 慶大立大明大早大法大東大
慶大 ○4―1

○2-1
●4-7
○7-4
第8週○2-1
●2-8
○9x-8
○6―4
○10―4
立大●○● ●●●○●●●○○
明大●○●○○ △●●△●●○△○
早大第8週○●○△○○ ●○●○○
法大●○●○○△○○○●○ ○○
東大●●●●●△●●●●● 
順位表(第7週終了時点)
順位大学勝ち点試合勝率
法大130.750
慶大110.727
早大110.700
明大140.455
立大120.333
東大11100.000
優勝の行方
慶大2勝慶大2勝1敗慶大1勝2敗慶大2敗
慶大優勝慶大優勝法大優勝法優勝決定戦