日本代表の世代交代の象徴として、早くも森保ジャパンの”顔”となりつつある南野拓実だが、代表に選ばれ続けることで生じる「壁」にぶつかっているのかもしれない。 パナマ戦、ウルグアイ戦を終えてザルツブルクに戻った先週末のオーストリアリーグ・イン…

 日本代表の世代交代の象徴として、早くも森保ジャパンの”顔”となりつつある南野拓実だが、代表に選ばれ続けることで生じる「壁」にぶつかっているのかもしれない。

 パナマ戦、ウルグアイ戦を終えてザルツブルクに戻った先週末のオーストリアリーグ・インスブルック戦はベンチ外だった。そして10月25日、ターンオーバーを考えれば先発でもおかしくなかったヨーロッパリーグ(EL)のローゼンボリ戦はベンチスタートとなり、出場わずか10分で終わった(結果は3-0でザルツブルクの勝利)。



ヨーロッパリーグ・ローゼンボリ戦には後半37分から出場した南野拓実(ザルツブルク)

「疲労を考慮した」とされるインスブルック戦はまだしも、ローゼンボリ戦は「フォワードのフレドリック・グルブランドセンはノルウェー人で、自国クラブとの対戦にモチベーションが高いから」起用したというのが、マルコ・ローゼ監督の説明だった。試合前に監督と1対1で話をした際、ベンチスタートの理由としてそう告げられたと南野は言う。

「それを言われたら何も言えない」と言う南野の表情は、とうてい納得しているとは言いがたかった。指揮官の言葉どおりだとすれば、今週末のリーグ戦では先発に復帰するはずだが……。

 南野はローゼンボリ戦に80分から出場した。すでに3-0でリードしており、追加点を狙うよりも試合をしめくくる時間帯での、3枚目の交代枠での出場だった。ピッチに飛び出した直後、南野は中盤でボールを受けると、一気にゴール前まで運び、そのままペナルティアーク付近からシュートを放った。GKが正面で弾く、強烈な一撃だった。

「出場は10分だけでしたけど、絶対に爪あとを残してやろうと思っていました。だからそこで決められなかったのが、僕としては悔しいですね。(3-0という状況は)僕からしたらまったく関係ない。今日の試合でも絶対にゴールに絡んでやると思って入っていたし、もちろんそういう(試合を終わらせる)雰囲気というのは見て取れましたけど、僕からしたら相手が間延びしていてチャンス。そういうところを突いてやろうと思っていました」

 日本代表で見せたのと同じように、強気で意欲的だった。

 日本代表にコンスタントに招集されるのは、もちろんいいことだ。クラブとは違う国際経験を積むこともプラスになる。だが同時に、コンディション調整は難しくなるし、単純にチームとともにいる時間はなくなる。東アジアから長旅を終えた選手をその週末の試合で使わないのも、ある意味で当然なのだろう。

「疲労感はもちろん少しはありますけど、たぶん、ヨーロッパでプレーしている日本人の選手は絶対に避けては通れないところだと思う。疲れているなりに、少しでも回復する術っていうのを、自分で意識してやっていかないといけないと思います」

 南野のように、クラブ内でもうワンランク信頼度を上げる必要がある選手の場合、やはり代表との頻繁な行き来はなかなか難しいというのが率直な感想である。せっかく代表で見せた得点力、勢いを生かそうとオーストリアに戻ってきても、そのチャンスから遠のいてしまうというジレンマだ。

「絶対的な選手だったら、もしかしたらこういう状況じゃないかもしれないという思いはある。そういう選手になってやろうっていう思いだけですね。結果を出し続ければ、もしかしたらちょっとずつ何か変わってくるかもしれない。出場時間が増えるとか……」

 ザルツブルクは戦力が不足しているというわけではなく、オーストリア国内では常に優位に立つ存在。とくにリーグ戦では選手に無理をさせる必要がないという事情もある。

 とはいえ、南野はこの「壁」を乗り越えなくてはならない。それは日本代表の欧州組の先輩たちが、みな乗り越えてきたことでもある。