チャンピオンズリーグ(CL)は、グループリーグ第3節が終了。全チームがひととおり対戦し、2018-19シーズンの輪郭がおぼろげながら見えてきた。ホームでユベントスに敗れたマンチェスター・ユナイテッドのジョセ・モウリーニョ監督 レアル・…
チャンピオンズリーグ(CL)は、グループリーグ第3節が終了。全チームがひととおり対戦し、2018-19シーズンの輪郭がおぼろげながら見えてきた。
ホームでユベントスに敗れたマンチェスター・ユナイテッドのジョセ・モウリーニョ監督
レアル・マドリードの4連覇なるか。今季の最大のテーマはこれになる。監督がジネディーヌ・ジダンからフレン・フレン・ロペテギに交代。クリスティアーノ・ロナウドはユベントスへ移籍した。ロナウドに代わる大物を獲得したわけでもないので、ある程度の戦力ダウンはやむを得ない。それがどの程度で収まるのか。冬の移籍でどこまで回復するか。国内リーグの成績は現在7位。その前に監督が更迭されてしまう可能性もある、なんとも言えない状況だ。
4シーズン前(2014-15)の覇者・バルセロナは、今季獲得したアルトゥールがチームに馴染み、右肩下がりの傾向に歯止めが掛かったように見えるが、優勝候補の本命というほど絶対的な強さを感じない。リオネル・メッシ、ルイス・スアレスに依存する体質に変化はない。
その前の2013-14シーズンの覇者はレアル・マドリードなので、過去5シーズン、優勝チームはスペインから出ていることになる。その間、アトレティコ・マドリードも2度準優勝に輝いている。スペインはまさに時代を謳歌してきたが、翳りが見えていることも事実。その流れは進行していくのか。今季の見どころはそこになる。そしてそのスペインに取って代わるのはどこなのか。
スペインがUEFAランキングで首位に立ったのは2013年で、それ以前の5年間はイングランドの時代だった(このランキングは過去5シーズンの集計なので、多少のタイムラグがある)。さらにその前はスペインだったので、流れはスペイン→イングランド→スペインだった。
この流れがまだ続いているとすれば、次の時代を制するのはドイツでもイタリアでもなく、再びイングランドということになる。
マンチェスター・ユナイテッド(マンU)、チェルシー、アーセナル、リバプール。前回のイングランド時代に強かったのはこの4チームだ。優勝候補には毎シーズン、イングランドの4強+バルサが挙げられていた。現在のイングランドとは少々顔ぶれが違う。チェルシー、アーセナルに代わり、マンチェスター・シティ(マンC)、トットナム・ホットスパー(スパーズ)がそこに加わっている。
問われているのは、全体のレベルもさることながら、欧州一になる突出した力を備えたチームがあるかどうかだ。レアル・マドリード、バルサに殴り勝てるチームが現れないと、再びプレミアの時代が到来したとはいえない。
一時期のマンUにはそれができていた。殴り負けることもあったが、殴り勝つこともあった。正面から撃ち合う力を備えていた。だが、現在のマンUにその面影はない。
オールド・トラッフォードにユベントスを迎えて戦ったグループHの第3節は0-1の敗戦。相手にゲームをコントロールされる、スコア以上の完敗劇を喫してしまった。プレミアリーグの成績も現在10位。首位をいくマンCに9ポイントもの差をつけられ、ジョゼ・モウリーニョ監督の解任がまことしやかに囁かれている。
まさに隔世の感だ。マンUが最後にプレミアを制したのは2012-13シーズン。いまから6シーズン前の話だ。CLで最後に決勝戦に進出したのは8シーズン前で、以降は凋落の一途を辿っている。UEFAランキングは現在12位。第2のミランになりつつあるといっても言い過ぎではない。
ジョゼ・モウリーニョがその監督の座に就いたのは2016-17シーズンだが、状態は悪くなるばかり。そのカリスマ性はすっかり低下している。レアル・マドリードの監督を辞め、安住の地を求めて古巣のチェルシーに戻ったもののあえなく解任。そして欧州のトップチームではなくなったマンU監督の座さえ、危うくなっている。飛ぶ鳥を落とす勢いだったかつても、今や昔だ。
大袈裟に言えば、「勝つことがすべての監督」だ。哲学はない。「いいサッカーをしても勝たなければどうしようもない」と言い切るようなサッカーをしていた監督が、勝てなくなると、そこには何も残らなくなる。
そしていま、その状態に陥りつつある。現在55歳。第一線から退く年齢でもない。マンUの今後も心配だが、モウリーニョの今後も心配だ。
現在、かつてのマンUのような華々しさを感じるのはリバプールだ。昨季はあれよあれよという間に決勝に進出。キエフで行なわれたレアル・マドリードとの一戦では、モハメド・サラーをケガで失う不運に見舞われ1-3で敗れたが、その勢いは今季も失われていない。
パリ・サンジェルマン(PSG)、ナポリ、レッドスター・ベオグラードと戦うグループCは最大の激戦区と言われたが、そこで現在まで2勝1敗。ホームでPSGに打ち勝ち、ナポリにアウェーで惜敗。ズベズダにホームで大勝し、僅差ながらナポリ、PSGを抑え、首位に立っている。
PSGとのホーム戦は、まさに撃ち合いの好ゲームだった。そこで打ち勝ったことで、チームは自信を深めている様子だ。前の3人(サラー、サディオ・マネ、ロベルト・フィルミーノ)は相変わらず好調で、パンチ力という点でもPSGの3人(ネイマール、エディンソン・カバーニ、キリアン・ムバッペ)に少しも見劣りしなかった。
強力FW3人を活かしたリバプールの縦に速いサッカーは、国内リーグ戦よりCLに向いていそうだ。レアル・マドリード、バルサを向こうに回した決勝トーナメントの一発勝負に、打ち勝ちそうな勢いを感じる。真の安定感より爆発力。スペインの2大チームにとって嫌なのは、ジョゼップ・グアルディオラ率いるマンCよりこちらではないか。
マンCは緒戦でリヨンに惜敗。心配させたが、その後、ホッヘンハイム、シャフタール相手に難なく2連勝を飾り、グループFで首位の座に就いた。ケガで戦列を離れていたケビン・デブライネも復帰し、これからも堅調に推移していきそうだ。
モウリーニョとグアルディオラは正反対の監督だ。グアルディオラには「勝てば官軍」的な志向は一切ない。哲学や理念がある。敗れても何かが残るサッカーだ。その反面、バカになり切れないところがある。最近のリバプールと比較するとそう思う。理屈っぽいが故に勢いに乗りにくい。レアル・マドリード、バルサにとって、やりやすいのはマンC。そんな気がする。
想起するのはかつてのアーセナル。当時のプレミア4強の中で、もっとも品のあるサッカーを展開したが、結局このチームだけ、欧州一の座に就けなかった。
さらに個人的な感想では、トップが弱い気がする。センターフォワードのガブリエル・ジェズスだ。好選手かもしれないが、CL優勝を狙うチームのストライカーとしてはいささか弱い。安定感はあるが、チームとしてパンチ力に問題ありだと見る。CLの決勝トーナメントも進んでいくと、打ち負けそうなサッカーに見えて仕方がない。
もう1チームのスパーズは、グループCで最下位と元気がない。悪くはないのだけれど、入った組(他はバルサ、インテル、PSV)が悪かった。誤算はPSVが予想以上に好チームだったこと。UEFAランキングで首位スペインとの差を詰めようとするなら、最下位に甘んじていてはダメだ。最低でも3着に入り、ヨーロッパリーグに回る権利を得たいところだ。
スペインとイングランド。それ以外にもうひとつの勢力として存在するイタリア勢(ユベントス、ナポリ、ローマ)も、今季は好調だ。
レアル・マドリードの4連覇は絶対に阻止してほしい――とは、第三者的な意見である。どこが勝つかわからない混沌とした展開になるほど、CLは面白いのである。