夏季合宿9日目。練習最終日となるこの日は、吹奏楽団による定期演奏会に向けた練習の成果発表と、応援部全体としての集大成ともいえる総合練習が行われた。朝から晩まで必死に練習を続けた9日間。その全てを出し切った総合練習は、幹部が口をそろえて「良…

 夏季合宿9日目。練習最終日となるこの日は、吹奏楽団による定期演奏会に向けた練習の成果発表と、応援部全体としての集大成ともいえる総合練習が行われた。朝から晩まで必死に練習を続けた9日間。その全てを出し切った総合練習は、幹部が口をそろえて「良かった」というほどのできを見せ、大成功を収めた。

 朝食時、チアリーダーズはみなエンジの『BIG BEARS』と書かれたTシャツを着ていた。しかし実は、これは新人たちに対するカモフラージュ。会場である氷見市ふれあいスポーツセンターへの移動の前、この日までがむしゃらに練習をしてきた新人たちにどのパートも、名前の入った黒のTシャツを渡した。総合練習は、この黒のTシャツを着て行われるのだ。Tシャツの後ろには、『平成30年度 新人』の文字。4年生のTシャツには『平成27年度 新人』の文字。それは3年前、この夏季合宿で貰ったものだ。どの学年も、新人時代に先輩から貰ったTシャツを着て総合練習に挑む。その光景は、今は立派に応援をこなす上級生たちにも、新人時代があったのだということを改めて感じられるものだった。

 総合練習の前に、吹奏楽団による成果発表が行われた。これはこの合宿で重点的に練習した、定期演奏会で行うドリルステージの成果を発表するものだ。迫力のある曲から、繊細な曲、定番の応援曲メドレーなど6曲を発表。カラーガードを用いた華やかなドリルは、まだ9月だというのに立派な仕上がりであった。「こんなに早いペースで進めることが出来たのは初めて」と若松佑副将・吹奏楽団責任者(教4=埼玉・川越)は話す。12月の定期演奏会は、大きな期待を寄せても全く問題はなさそうだ。


5回に披露するバンド曲を踊るチアリーダーズ

 成果発表が終わり、いよいよ総合練習が始まる。この総合練習とは、野球の東京六大学秋季リーグ戦(秋季リーグ戦)を想定し、全て本番と同じように行うものだ。校歌斉唱、エール交換が終わると、いよいよ試合が始まる。1回表、ワセダは守備だ。「頑張れ小島!」と、野球部の小島和哉主将(スポ4=埼玉・浦和学院)が先発という想定で、部員はそれぞれ声を上げ始めた。会場には、野球部も、応援席に座るお客さんも、相手校もいない。しかしながら、そこはちゃんと神宮球場で、秋季リーグ戦であった。笑顔で踊るチアリーダーズ、観客を鼓舞するリーダー、全力で吹き続ける吹奏楽団の姿があった。1回から始まり、やがて9回裏を迎える。この9回裏だけは、本番の想定とは異なる点があった。それは、4年生と3年生以下が向き合うようなかたちになり、誰もが納得するまで何度も繰り替えし続けるエンドレス『コンバットマーチ』と、エンドレス『紺碧の空』を行うところだ。「今まで(の合宿の中)で一番長かったんじゃないかというくらいやった」と渡邊友希代表委員主将(政経4=静岡・沼津東)が話すように、『コンバットマーチ』と『紺碧の空』を合わせて20回ほどはやっただろう。しかし、部員はつらそうな顔は一切見せず、むしろワセダの大逆転劇を喜び楽しんでいるようであった。「全体の気持ちを感じる総合演習になった」と柳澤遼輝副将・リーダー練習責任者(人4=埼玉・春日部)は話す。開幕戦に向けて一切不安を感じさせない仕上がりに、幹部たちは満足げな表情を見せた。


コールをしながら演奏する吹奏楽団

 総合練習が終わったのち、屋外には集まるリーダーの姿があった。前日の『地獄巡り』が予期せず中止になってしまい、本来そこで歌うはずだった『新人哀歌』を、この総合練習後のすがすがしい空の下、海の見える場所で歌うことになったのだ。円になり、歌が始まる。『新人哀歌』の歌詞には、厳しい練習や環境に耐える新人の、つらい日々がつづられている。心を打つものがあるのだろう。涙を流しながら歌う新人の姿がそこにはあった。渡邊と小川駿也新人監督(教4=東京・早稲田)は、その円の中で新人に1人ずつ声を掛けていく。応援部という、厳しい世界。そこに飛び込み、必死になって付いてきた部員たち。『新人哀歌』は「オレもいつかは早大の 華の幹部になってやる」という歌詞で締めくくられる。新人たちにとって、幹部への道のりはまだまだ長い。しかしこの夏季合宿を乗り越えたことは、大きな一歩となったことだろう。


『新人哀歌』を歌うリーダー

 いよいよ秋季リーグ戦が開幕する。春は明大と同率3位となり、またも優勝を逃す悔しい結果となってしまった。しかし秋には、この夏季合宿を乗り越えさらにパワーアップした応援部がついている。一人一人全身全霊の応援で、今度こそは優勝パレードを。戦いの秋は、すぐそこだ。

(記事 今山和々子、写真 平松史帆)

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