『女王ワセダ』の凱旋(がいせん)だ。全日本大学選手権(インカレ)も最終日を迎え、2年ぶりの総合優勝に燃える女子部からは2艇が順位決定戦、3艇が決勝に出場した。舵手付きフォアはメダルを逃したものの、シングルスカルと舵手付きクォドルプルは堂々…

 『女王ワセダ』の凱旋(がいせん)だ。全日本大学選手権(インカレ)も最終日を迎え、2年ぶりの総合優勝に燃える女子部からは2艇が順位決定戦、3艇が決勝に出場した。舵手付きフォアはメダルを逃したものの、シングルスカルと舵手付きクォドルプルは堂々の金メダルを獲得。見事総合優勝を果たし、大学女王の座を奪還したのだった。

 女子部でこの日最初のレースとなったのは、舵手なしペアの順位決定戦だ。中盤安定したコンスタントでトップに躍り出ると、艇の伸びをそのままに組1位でゴール。同じく順位決定戦に回ったダブルスカルは、熊本大と筑波大のトップ争いに終始絡めず、組3着でインカレを終えた。ダブルスカルに主力を投入する大学が多い中でのこの成績は、全体のレベルが上がっていることの証明となっただろう。

 「自分が勝たなきゃ始まらない」(米川志保女子主将、スポ4=愛知・旭丘)。決勝戦の一番手としてシングルスカルに出漕した米川は、必ず流れを作ると息巻いた。その決意に違わず序盤から首位に立つと、力強い漕ぎで後続との差をどんどん広げていく。最終的には2着の坂井理夏(日体大)と約7秒もの大差をつけてフィニッシュ。右手を高く掲げ、喜びをあらわにした。 続いて出漕したのは、今年から新たにインカレに追加された舵手付きフォア。初代女王の座をかけたレースだったが、スタートから調子を上げられないままコンスタントに突入してしまう。「自分たちのローイングが出せなかった」(北村綾香、スポ4=滋賀・膳所)と予選のタイムでは上回っていた日体大にも敗れ、4位でゴール。メダルには手が届かず、クルーは一斉に肩を落とした。


決勝レースで圧勝し、主将として貫禄を見せた米川

 そしてこの日一番の大接戦を繰り広げたのは女子競技の花形・舵手付きクォドルプルだ。スタート直後には中大に、第2クォーターからは明大にそれぞれ先行されるも、「出られてしまうのは予選や準決勝のタイムから想定していた」(澤田夏実、スポ4=東京・小松川)と冷静にミドルスパートを増やして対処。強みのコンスタントでじりじりと差を縮める。しかし昨年女王・明大の意地は並ではなかった。中盤に長いスパートを入れたにも関わらず、第4クォーターに至っても差し切れず。ラスト200メートルでは一漕ぎごとに早大と明大の順位が入れ替わるほどの大接戦に。最後の決め手となったのは「勝ちたいという気持ち」だったと澤田は振り返る。「あの差なら一本でも多く漕いだ方が前に出るだろうと思った」(澤田)とさらにレートを上げるよう指示すると、極度の疲労にあるはずの4人がさらに加速、トップボールをゴールに叩き込んだ。わずか0.41秒の差で激戦を制した選手たちは、一斉に喜びを爆発させた。


明大との熱戦を制し、歓喜に沸く舵手付きクォドルプル

 「やっぱり自分たちの代で勝ちたかったので、それができてすごく嬉しい」。米川は自身最後のインカレで総合優勝を果たし、こう振り返った。昨年インカレ9連覇を逃し、涙を飲んだ早大。悔しさが生んだ勝ちたいという気持ちが、早大を女王の座に返り咲かせた。さぁ、ここから日本一へ最後の挑戦だ。帰ってきた『女王ワセダ』は、まだ勝利に飢えている。

(記事 坂巻晃乃介、写真 山口日奈子、金澤麻由)


女子シングルスカル


女子舵手付きクォドルプル

結果

【決勝】

【舵手付きクォドルプル】

C:澤田夏実(スポ4=東京・小松川)
S:安井咲智(スポ2=東京・小松川)
3:松井友理乃(スポ2=愛媛・今治西)
2:宇野聡恵(スポ1=大分・日田)
B:藤田彩也香(スポ2=東京・小松川)

7分24秒30 【1着 優勝】

【舵手付きフォア】

C:奈良岡寛子(教2=青森)
S:木下弥桜(スポ3=和歌山北)
3:三浦彩朱佳(文2=青森)
2:青木華弥(教4=東京・本所)
B:北村綾香(スポ4=滋賀・膳所)

7分58秒69 【4着 総合4位】

【シングルスカル】

米川志保女子主将(スポ4=愛知・旭丘)

8分04秒92 【1着 優勝】

【順位決定戦】

【舵手なしペア】

S:宇都宮沙紀(商2=愛媛・今治西)
B:尾嶋歩美(スポ2=埼玉・南稜)

7分58秒27 【1着 総合5位】

【ダブルスカル】

S:大崎未稀(スポ1=福井・美方)
B:南菜月(教3=新潟南)

7分33秒72 【3着 総合7位】

コメント

【舵手付きクォドルプル】

C:澤田夏実(スポ4=東京・小松川)

――女子部としては2年ぶりの総合優勝となりますが、今のお気持ちは

率直にほっとしているというか。やりきったなという思いでいっぱいです。

――ご自身の舵手付きクォドルプルも金メダルを獲得しましたが、決勝戦を振り返っていかがですか

明大と中大にスタート出られてしまうというのは予選や準決勝のタイムから想定していたことだったんですが、第1クォーターから思っていたより強風で、思ったより出られてしまって。風にあおられてしまってその差を埋められずという感じでした。ただずっと並んではいたので、最後は本当に気合いというか、勝ちたいという気持ちで最後レートを上げて、あの差だったら一本でも多く漕いだ方が前に出るだろうと思ったので、皆にもレートを上げようという指示を出して、それに皆しっかりと付いてきてくれて、差し切れてよかったかなと思います。

――事前に考えていたレースプランはどのようなものだったのですか

事前に考えていたものとしては、私たちはコンスタントが強いクルーだったので、中大と明大に最初出られてしまっても1000メートルくらいでしっかり差そうというプランでした。中大にはうまくそれがはまったかなという振り返りがあるんですけど、やっぱり明大には向こうにも意地があって、最後の最後まで差せなかったのでそこは切り替えてやりました。最後は差したんですけど、プラン通りにはいかせてもらえなかったですね。

――中盤明大がスパートをかけてくる場面がありましたが、コックスとしてはどのような駆け引きをされましたか

向こうがスパートをかけてきたことはわかっていました。こっちは抜かせなくても離されてはいけないなと思ったので、そこで私たちもスパートをプランよりも多めにいれて、そこでしっかりついていけたので、そこは間違っていなかったかなと思います。

――終盤は明大と大接戦でしたが、その時は何を考えていましたか

あそこでほとんど並んでいたので、これは絶対差せるなという風には感じて。そこは今までの練習で、あのクルーの気持ちの強さはわかっていたので、回転数を上げれば絶対に差せるなと思ったので、ずっと回転数を意識するコールを叫びまくって(笑)。そしたら皆2000メートルしんどかったはずなのにすごい上げてくれて、そこは皆が頑張ってくれたお陰だなと思います。

――明大と0.41秒差で勝ち切りましたが、ゴールした瞬間は何を思いましたか

頭真っ白になりました(笑)。本当にレース中は終始明大と駆け引きをしているという感じだったので、レース中ずっとマイクを持ってる手が震えてて。私がゴールしたのが最初にわかるポジションなので、ゴールした瞬間叫びました(笑)。その後はほっとした気持ちが大きかったです。

――漕手は4人中3人が2年生、1人は1年生と若いクルー編成でしたが、どのような点を強化しましたか

技術面では、今の2年生は3人とも高校でも実力があって結果を残してきている子たちだったので、そこは漕力にも信頼があって。この冬しっかり漕ぎこんでワセダの漕ぎも身に付いてきていたので、1年生の宇野(聡恵、スポ1=大分・日田)をどうレベルアップさせていくかというところをしっかり考えていました。宇野もすごく吸収してくれる子だったので、何を言ってもすぐ改善してくれて。技術的には最後の最後に狙っていたものがちゃんと出せたかなと思います。メンタル的には、私が最上級生としてぐいぐい引っ張っていくだけでなくて、下級生にしっかり考えてもらって、下級生の意見を私がまとめるというか。私だけが発信する立場じゃないようにというのは心掛けました。

――漕手4人とも気持ちが強いと仰いましたが、きょうの勝負の決め手となった点もそこにあるのでしょうか

そうですね。それがやっぱり大きいかなと思います。練習中から2年生の3人、特にストペアの安井(咲智、スポ2=東京・小松川)と松井(友理乃、スポ2=愛媛・今治西)は練習中から勝ちたいという気持ちを前面に出してくれるタイプだったので、それが宇野の触発材料にもなったかなと。全員で強い気持ちで強くいけたのは、それがあるかなという感じがします。

――次の全日本選手権が澤田選手にとって最後の大会となりますが、意気込みをお願いします

このまま順調にいけば多分エイトに乗らせて頂くことになるかなと思うのですが、多分そのエイトは今回スイープに乗ったフォアのメンバーとかが中心になるという予想はあります。今回フォアのメンバーは悔しい思いをしているので、次に私がエイトに乗ることができたら、そのメンバーたちともう一回一から(クルーを)作り上げて、今度は全員で金メダルを取ります。最後なんですけど、しっかり後輩たちにたくさんいいものを残せるようにということも忘れずにやりたいかなと思います。

【舵手付きフォア】

2:北村綾香(スポ4=滋賀・膳所)

――予選と敗者復活戦を受けてのきょうのレースプランを教えて下さい

予選も敗復(敗者復活戦)もスタートはいいものが決まっていたのですが、コンスタントに入った時に、少し距離が縮まったり抜かされていたので、決勝では、格上、予選でだいぶ早かったクルーと一緒だったので、離されないために、しっかりとスタートスパートの勢いのままコンスタントに入っていこう、というレースプランを立てていました。並んでいる時もしっかりとコックスのコールに対して反応して、離されないように、ということをプランとしてしっかりと組んで臨みました。

――クルーのポジション変更がありましたが

そうですね、クルーが決まってから1週間後くらいにバウと2番の私を入れ替えて、今のイタリアンという形にして、そこからずっと練習していました。

――どういった理由で変更されたのでしょうか

力のバランスとクルーのそれぞれの特性を考えて変えました。

――風の影響でスタートが遅れることもありましたが、風の影響はありましたか

風がない時にはいいリズム、いいスピードにも乗っていたのですが、きょうはスタートで少しもたついてしまい、そのままバタバタした状態でコンスタントに入ってしまったので、自分たちのローイングが出せなかったのかな、と思います。

――決勝で他艇に差を付けられてしまった原因は何だったのでしょうか

やはり、今言ったようにスタートで焦ってしまい、いいリズム、いいスピードの1本1本を漕げなかったことが原因かな、と思っています。

――負けてしまったワセダと上位3艇との差は何であったとお考えでしょうか

予選のタイムでは勝っていたところにも負けてしまったので、そこは自分たちが風の中で自分たちの漕ぎを出すことができなかったということが駄目だった点で、それに対して他の3艇は風の中でも1本を強く進めていたところが違ったのかな、と思います。

――インカレ総合優勝の座を女子は取り戻しましたが、それを受けていかがですか

自分達が優勝してクォード(クォドルプル)につなげないと(総合)優勝が危ないのではないか、と思っていました。実際に(自分たちは)4位で1点しかプラスできなかったので、悔しい思いはたくさんあるのですが、米川とクォードがしっかり優勝してくれて、女子全員でつかんだ優勝だと思うので、それは本当にうれしいです。

――最後に次の全日本選手権に向けて意気込みをお願いします

全日本では、クォードとエイトは部の目標として優勝を掲げていますので、それに向けて今回の悔しさを晴らすべく、1カ月半がんばって練習していきたいな、と思います。

【シングルスカル】

米川志保女子主将(スポ4=愛知・旭丘)

――まずは優勝おめでとうございます。ご自身がゴールした瞬間はどんなお気持ちでしたか

やっぱりなんとしても勝ちたいレースだったので、あまり内容は良くなかったんですけど結果として勝てて、ワセダの総合優勝に貢献できたということで、嬉しいというかはほっとした気分でした。

――予選と準決勝の2レースを振り返っていかがでしたか

予選も準決勝も他の選手と結構差があったので、自分のレースをしようということで、予選は特に一番理想のレースができたのかなと思います。タイムもなかなかよくて、あれをこれからベースに頑張っていきたいなと思います。準決勝は次の決勝に備えてちょっと力を抜いてしまった感じがありました。

――きょうの決勝では500メートルあたりまで5レーンの坂井選手(日体大)がかなり食らいついていました、意識はしていましたか

絶対スタートが速い選手だとはわかっていたので、もしそこで出られても絶対後から出られるので、焦らず自分の漕ぎをすることだけに集中していました。いるなとは思ったんですけど、特に気にせずにやりました。

――精神的に影響もなかったですか

今までだったら結構スタートとかで出られないと焦ってしまう部分があったんですが、きょうはそんなに感じず淡々と漕いでいました。

――世界選手権、アジア大会をこなしてからの全日本大学選手権(インカレ)でしたが、ハードなスケジュールは影響はありませんでしたか

U23(世界選手権)が終わって、アジア大会が終わって、インカレでまた別の種目になりしかも2週間と練習の期間もなかったので少し不安はあったんですけど、コンディション自体、自分の気持ち的にもやっぱりインカレで勝ちたいという気持ちはあったので、気持ちは切らさずにやることができました。

――女子部としては2年ぶりに総合優勝されましたけども、率直な感想をお願いします

やっぱりインカレで勝ちたい、ワセダで勝ちたいというのはどの学年でもあるんですけど、やっぱり自分たちの代で勝ちたいというのがあったので、それができてすごく嬉しいなと思います。あとはやっぱり去年(総合優勝のタイトルを)取れなくて、何年も他の大学に渡すわけにはいかないので、1年で取り戻すことができたのは自信にもなったのではないかなと思います。

――各クルーのレースを振り返っていただきたいのですが、まず舵手付きクォドルプルは熱戦を制しての優勝でしたね

勝ってくれるだろうという気持ちはあったので、最後まで信じていたんですけどちょっとヒヤヒヤしました。でもやっぱり最後はみんなが総合優勝したいというその気持ちでまとまれていたので、気持ちが現れたレースだったのではないかなと思います。

――新種目の舵手付きフォアは残念な結果でしたが、どうご覧になりましたか

私にとってもまさかの結果になってしまったんですけど、でも組み始めから成長はできていたとメンバーも言っていて、成長の幅は大きかったのではないかと思うので、全日本(全日本選手権)にもつながるレースだったのではないかと思います。

――2人乗りのクルーが2つ順位決定戦に臨みましたが

比較的若いクルーなので、他の大学が結構ダブル(スカル)に対校を持ってきていたのもあって難しいレースではあったと思います。悔しい結果にはなってしまったと思いますが、いいレースをしたなと思います。特に今朝の(舵手なし)ペアのレースとか、ダブルもきのうの準決勝で最後まで食らいついていて、どのクルーもいいところはあったのではないかと思います。

――ペアとダブルに対校を置いていたのはどのあたりの大学だったんですか

ペアが優勝した中大や法大で、ダブルだと明大がトップクルーを組んでいたりしたので、正直難しいところではあったんですけどよく食らいついてくれたと思うので、全体的なレベルは上がっている証だと思います。

――インカレが最後になりましたが、4回のインカレを振り返っていかがでしたか

インカレが終わってしまって少し寂しさはあります。1年生の時はシングル(スカル)で女子部の全種目優勝がかかっていてプレッシャーもあったんですけど、今年ほどではなかった…うーん…でも結構半端なくて、大学の中とは言え勝つのは難しいなと思いましたね。2年目はクォードで、自分が乗りたかった種目で楽しく漕がせてもらいました。去年は同期とのダブルで負けてしまったんですけど、結構今まで色んな種目に乗ってきて。

――今年またシングルに戻られたんですね

そうですね。やっぱりシングルって100%自分の力が試されるので、負けられないなという気持ちと、シングルでもクォードでも点数は一緒なので、絶対自分が勝って総合優勝に貢献するんだという気持ちは強かったですね。自分が勝たなきゃ始まんないぞ!という感じでした。

――次は全日本になりますが、この結果を受けてどう戦っていきますか

全日本の目標が、舵手なしクォドルプルとエイトで優勝なので、しっかり優勝していくことと、やっぱり今回のインカレを通して思ったのは、去年悔しい思いをして勝ちたいという気持ちが大事だなと思ったので、ワセダでひとつにまとまって目標を達成できるように頑張りたいです。