ドイツ・ブンデスリーグでの10年間の武者修行に終止符を打ちTリーグへの参戦を決めた森薗政崇(岡山リベッツ)。卓球プロリーグを知り尽くした森薗は、国内新リーグ開幕を前に何を想うのか。Tリーグ開幕を翌日に控えた10月23日、その心のうちを語って…

ドイツ・ブンデスリーグでの10年間の武者修行に終止符を打ちTリーグへの参戦を決めた森薗政崇(岡山リベッツ)。卓球プロリーグを知り尽くした森薗は、国内新リーグ開幕を前に何を想うのか。Tリーグ開幕を翌日に控えた10月23日、その心のうちを語ってくれた。
(インタビュー・写真:川嶋弘文/ラリーズ編集長)

ーーいよいよTリーグ開幕ですね。岡山リベッツの初戦は3日後(26日の琉球アスティーダ戦)ですが、そこまでどう過ごしますか?
森薗:チームメイトの上田(仁)さん、吉田(雅己)さんと最終調整のための練習を予定してます。国技館の開幕戦も観る予定ですね。

ーー10年間ドイツのブンデスリーグでプレーをされ、昨年はブンデス1部で最多勝でした。ブンデスの複数のチームが森薗選手を欲しがっていたと聞きます。その中でなぜTリーグへの挑戦を決めたのですか?
森薗:去年の最多勝により、沢山のトップチームから多くのオファーをいただきました。そんな中で10年間の経験を認めてもらえたことが嬉しかったというのはあります。 ただ、Tリーグがこのタイミングにはじまるのは分かっていました。

日本のファンの皆さんの前でプレーをしたいという気持ちが強く、迷うことなくTリーグ参戦を決めました。

ーーTリーグが出来ることによって選手にもたらされるメリットは?
森薗:移動時間の短縮ですね。ドイツリーグでは試合のたびに移動で1日潰れ、直後の半日はいい練習が出来ない。つまり移動で毎回1日半、無駄になってしまうんですね。これだと精神的にも技術的にも体力的にもキツくなってしまう。国内での移動で済むうえ、レベルが高いリーグが出来るというのは本当に選手にとってはありがたいと思ってます。

ーー国内にTリーグという素晴らしい環境が出来る中、今後、後輩の卓球アスリートたちには海外リーグで経験を積むことを推奨しますか?
森薗:当然、意味のあることだと思います。ブンデスとTには根本的な違いがあります。

Tリーグは、色んな人や組織を巻き込んだ大きなリーグというイメージ。逆にブンデスリーグは地元に根付いていて、一つ一つのチームの規模は小さいんですけど、コアな人たちが集まって成り立っている。コアファンに囲まれて試合を経験するのはプラスになる。

今の若い選手は国際大会に出る基準が厳しく、国際経験が積みにくいので、嫌らしいプレースタイルの選手が沢山いるブンデスでやる、異国の地で試合するのは大きな経験になります。

日本のTリーグは4チームしかなく、本当に日本のトップ選手しか出られない中で、そこに出られるかどうかというレベルの選手が経験を積むためにブンデスリーグに行くのはアリだなと。

今後Tリーグに2部3部と出来てきて、チームも増えてきたら僕の意見も変わると思うんですけど、現時点ではそうです。

ーーブンデスとTリーグとの違いは他にもありますか?
森薗:選手の拘束時間ですかね。アジア選手というのもあり、ドイツでは試合以外の拘束時間はほぼ無かった。Tリーグは初年度ということもあり、多くのイベントに参加させていただきました。2~3年経ったら、比べられると思いますが、現時点ではまだちょっとわからないです。

ーーTリーグは団体戦方式です。森薗選手は団体戦やダブルスが得意じゃないですか。Tリーグは森薗選手にとって有利な条件が揃っているようにも見えますが、ずばり、勝算は?
森薗:ワールドツアー、国内大会、ブンデスリーグと各カテゴリーで試合を経験してきたんですけど、結果を見ると各カテゴリーごとで強い選手、弱い選手がいます。

雰囲気、プレッシャー、1台進行か多台進行かなど、同じ卓球でも条件が全然変わってくるので。

Tリーグはまだ始まっていないので、そういう意味で自分が戦いやすい場なのかがまだ分からないというのが本音です。

僕もブンデス1部では出だしで負け越しスタートだった。そこから色んなことを掴んでいって、積み重ねた結果が2年連続最多勝利だったので、今回のTリーグでも仮に出だしが悪かったとしても色んなことを勉強しながらうまく適応していきたいと思っています。

ーー開幕のアスティーダ戦で特に誰と対戦したいというのはありますか?
森薗:Tリーグはレベルが高いので誰とやっても一緒。自分が誰とやっても平常心でやれるかだと思っています。ブンデスでもそうでした。

ーー開幕から3月までのシーズンは6カ月あります。シーズン中の過ごし方についてはどう考えていますか?
森薗:(ワールドツアーや1月の全日本選手権などもあり)休みがほとんど無いので、一番大事なのは体調管理や体のケアだと思っています。そのうえでパフォーマンスを上げるための練習もしなきゃいけない。

ーー森薗選手は色んな選手のいいところを柔軟に取り入れるタイプ。今年1月のインタビューでは平野美宇選手(日本生命レッドエルフ)を研究したおかげで全日本で勝てたというコメントもありました。最近は意識しているプレーヤーなどいますか?
森薗:今の僕の中でのトレンドは林昀儒(リンユンジュ・台湾)ですね。

ーーラリーズでも「台湾の張本」と称して注目している16歳の若手左腕ですね。特にどこが参考になるのですか?
森薗:バックハンドです。コンパクトなバックスイングなのに威力がある。バックハンドを打つ時に毎回上体を沈めない。それなのに威力が出る打ち方をしている。そんな発想は自分になかった。美宇ちゃん研究の時もそうでしたが、自分の発想に無いことをやっている選手のプレーを取り入れると強くなれると思っています。

<参考:林昀儒(リンユンジュ・台湾)vs サムソノフ(ベラルーシ)>

ーー開幕を控え、リベッツの雰囲気は?
森薗:雰囲気はとてもいいですよ。青森山田時代から一緒にやってきている人が多いので遠慮がいらない。僕は練習をやりこみたいタイプなので上田さんもそれを知って「もうちょっとやるか?」と聞いてくれたり、吉田さんにも「もうちょっと練習したい」と言いやすい。これはとても大事です。

ーーチームの課題は?
森薗:他のチームに比べると選手層が薄いこと。誰かがケガしたら厳しくなるので、さっきも言いましたが、みんなで体のケアをしっかり行いたいと思っています。

ーー名古屋での初戦楽しみにしてます。
森薗:僕も全力で楽しみます!