目前に迫った”2018ドラフト”。今年は、根尾昂や藤原恭大(ともに大阪桐蔭)、吉田輝星(金足農)といった甲子園のスター選手に注目が集まっているが、”1位”の12人がなかなか揃わず、「1位…

 目前に迫った”2018ドラフト”。今年は、根尾昂や藤原恭大(ともに大阪桐蔭)、吉田輝星(金足農)といった甲子園のスター選手に注目が集まっているが、”1位”の12人がなかなか揃わず、「1位指名は誰にするのか」「入札を外した時は誰にいくのか」と、各球団とも当日まで頭を悩ますことになりそうだ。

 現時点で1位指名と噂されているのが、以下の9人である。

根尾昂(大阪桐蔭/投手・野手/右投左打)

藤原恭大(大阪桐蔭/外野手/左投左打)

吉田輝星(金足農/投手/右投右打)

小園海斗(報徳学園/内野手/右投左打)

上茶谷大河(東洋大学/投手/右投右打)

甲斐野央(東洋大/投手/右投右打)

梅津晃大(東洋大/投手/右投右打)

松本航(日本体育大/投手/右投右打)

辰己涼介(立命館大/外野手/右投左打)

 おそらく、この9人は「1位指名候補」として12球団が共通認識しているだろうが、残りの3人については球団によって顔ぶれが大きく異なるはずだ。まさに”未知”の要素を多く抱えたドラフトだけに、2位以下の指名に注目している。

 全国的には無名でも、確かな実力を備えた選手はいっぱいいる。そういった選手を何位で指名するのか、スカウトの腕の見せどころである。

 そこで、今回のドラフトで私が密かに注目している5人の”隠れた実力者”を紹介したい。



リーグ戦で3季連続防御率0点台という圧巻の成績を残した東日本国際大の粟津凱士

 筆頭は、東日本国際大の粟津凱士(あわつ・がいと/投手/右投右打)だ。プロ級の球威と打ちにくさを兼備したサイドハンド投手で、リーグ戦では3シーズン連続して防御率0点台という圧巻の成績を残した。今年6月に開催された大学選手権でも1完封を含む、12回2/3を無失点と全国の舞台でも実力を証明してみせた。

 ゆっくり踏み込んできて猛烈なスピードで腕を振る。そのフォームの緩急が、打者のタイミングを難しくする。140キロ前後のスピードでも、指にかかった時のストレートの威力は十分。カットボール、ツーシームでも腕の振りが緩まず、両サイドに投げ分ける制球力を持つ。持ち球のレベルは、今でも十分に一軍レベル。球筋は、かつての高津臣吾(元ヤクルトなど)や、今なら又吉克樹(中日)だ。

 次に紹介したいのが、なかなか結果を出せずにいるが、「まだまだこんなもんじゃないはず」と期待しているのが法政大の森田駿哉(投手/左投左打)だ。富山商時代から有名な投手で、もし高校時にプロ志望届を出していれば”1位指名”だってあったかもしれないという”大器”である。

 183センチの大型ながら、ボディバランスは抜群で、フォームにぎこちなさがまったくない。140キロ前後のストレートにタテのスライダー。将来の絶対的エース……そんな期待も込められていたのだろう。入学直後、1年春のリーグ戦でいきなり”開幕投手”の大役を担った。

 だが、それから苦しんだ。肩を痛め、回復にかなりの時間を要した。ようやくベンチに戻ってきたのが今年の春。しかし、”森田復活”の声は聞こえてこない。

 ただ、明るい話題は大竹耕太郎(ソフトバンク)の健闘だ。早稲田大1、2年時にはエースとして全国制覇に貢献しながら、その後は停滞を続け、それでも”育成枠”としてプロに進んだ。

 1年目の今季、ファームで8勝0敗の快投を見せると、7月に支配下登録を勝ち取り、シーズン後半には一軍で3勝をマーク。CSでも登板するなど、日本シリーズ進出に貢献した。このように心強い前例もできた。森田に不退転の決意があれば、十分復活も期待できるはずだ。

 名城大・栗林良吏(りょうじ/投手/右投右打)は、大学ラストシーズンを25季ぶりのリーグ制覇で締めくくった。

 140キロ台後半のストレートとタテのスライダーは、すでにプロで使える球種だ。それに今年は、必殺のフォークが加わった。これは名城大OBでもあり、元中日の右腕・山内壮馬コーチが「狙って三振を奪えるボール」として栗林に伝授したものだ。

 じつは、栗林のボールを受ける機会があった。ナイター練習の薄暗いブルペンだったため、さすがに全力投球とはいかず立ち投げだけにとどまったが、それでも球質はわかる。久しぶりに”石”を受けているような重さと力強さがあった。回転が強烈な証拠だ。トラックマンの計測でも、全国トップクラスの回転数を計時したそうだ。これだけのストレートと切り札となる変化球があるのは大きな強み。

 イメージは山崎康晃(DeNA)。セットアッパーなのか、クローザーなのかわからないが、いずれにしても”勝利の方程式”のひとりに抜擢し、実戦経験を積ませると、こちらの想像をはるかに超える貴重な戦力になれる人材と見ている。

 ドラフトでは、「2位以内」の指名でなければ社会人の強豪チームに進むことになっている。果たして、腹をくくれる球団があるのか注目したい。

 今年夏の甲子園で一躍注目の的となった金足農の吉田だが、昨年夏の秋田大会決勝でその吉田を破って甲子園に進んだのが明桜の山口航輝(投手/右投右打)だった。だが、私が評価しているのは、山口のバッティング。右打ちの高校生打者では、早稲田実業の野村大樹(捕手・内野手/右投右打)と並び、ナンバーワンの評価である。

 残念ながら、その決勝戦でヘッドスライディングした際に右肩を脱臼。この夏も全力投球できるまでには至らず、打者としての将来性に賭けることになった。

 強烈なスイングスピードと、バットを振れる体力。さらにその意欲。近い将来、プロでクリーンアップを打てる素材と見ている。

 最後に社会人から取っておきの内野手を紹介したい。三菱自動車岡崎の山野辺翔(内野手/右投右打)だ。桜美林大でセカンドを守っていた頃から、地味ながら「いい野球」をする選手だった。

 驚くのは”実戦力”だ。たとえば、ランナー一、二塁で遊撃手の弾いたボールを拾って三塁で刺す。打撃でも、追い込まれながら相手のベストボールであるスライダーに食らいつきライト前に運ぶ。またランナーでは、初球から完璧なスタートを切って悠々セーフ。

 今夏の都市対抗ではトヨタ自動車の”補強選手”として出場したが、堂々としたプレーを披露。すっかり社会人二塁手の”第一人者”へと上り詰めた。こういう選手を使えるチームは強い。

 1965年にドラフト制度が導入され、すでに50年以上の月日が経った。毎年のように”ドラマ”が生まれるドラフトだが、果たして今年はどんなシナリオが用意されているのだろうか。運命の日はまもなくやってくる。