*写真は上田仁(左)とカリスマ経営者として知られる米山久氏(エー・ピーカンパニー代表取締役)塚田農場など260店舗をグローバルに展開する大手飲食チェーンのエー・ピーカンパニー(代表取締役社長 米山久)が10月、塚田農場赤羽店にて業界関係者、…

*写真は上田仁(左)とカリスマ経営者として知られる米山久氏(エー・ピーカンパニー代表取締役)

塚田農場など260店舗をグローバルに展開する大手飲食チェーンのエー・ピーカンパニー(代表取締役社長 米山久)が10月、塚田農場赤羽店にて業界関係者、メディア関係者を集め、上田仁(プロ卓球選手・岡山リベッツ)のスポンサー契約発表会を開催した。

東証一部上場の大手飲食チェーンが卓球選手をスポンサーするケースは珍しいが、その裏にはビジネス上の戦略が見え隠れする。

塚田農場が上田仁とのスポンサー契約を皮切りに狙う「卓球×外食」のコラボレーションの可能性を考察する。

Tリーグ開幕で盛り上がる卓球業界は外食産業の参入余地あり

全国500万人のプレー人口がいるとも言われる卓球は、東京五輪でのメダル獲得の期待感に加え、10月24日のTリーグ開幕を控え、過去に無い盛り上がりを見せている。

野球やサッカーなどのメジャープロスポーツは、観戦をして楽しむファンが圧倒的に多いが、卓球の場合はファン自身が現役プレーヤーであるケースがほとんどだ。3歳から90歳までプレーできる卓球は年代別、レベル別の大会が全国各地で多数開催されており、そこに参加するプレーヤー人口が多いのだ。

卓球の練習や試合の後の生ビールを楽しみにプレーを続けるホビープレーヤーが全国各地に存在する。これまで卓球場や試合会場の近くの居酒屋に向かっていた客足を、全国で一気に獲りに行くのが塚田農場が卓球選手へのスポンサーを行った狙いの一つだ。

塚田農場がスポンサードする上田仁は、確かな実力とその実直な人柄から卓球トップ選手からの信頼が厚く、玄人ファンの間でも好感度が高い。塚田農場はそんな上田とのコラボ企画「上田メシ」や卓球ファン向けの来店特典など「卓球ファンが塚田農場に集まりたくなるような企画を検討中」(エー・ピーカンパニー広報担当者)だという。

プロ野球は球団毎に熱狂的なファンが集まる飲食店が各地にあり、サッカーは日本代表戦をスポーツバーで観戦する文化がある。世界卓球やTリーグなどの試合の時にファンが塚田農場で観戦をするような「全国の卓球ファンが集まる飲食店」のポジションも塚田農場は狙う。

卓球選手引退後のセカンドキャリアとしての飲食店経営はアリか?

今回のスポンサー契約発表会では、塚田農場の店舗内にミニ卓球台が登場し、上田と米山社長がラリーを楽しむ一幕があった。



ミニ卓球台でラリーを楽しむ上田仁(奥)と米山久氏(エー・ピーカンパニー代表取締役)

飲食店と卓球の相性の良さは、全国で卓球バーや卓球カフェの出店が多くなされていることからも実証済みだ。塚田農場も卓球をコンセプトにした新業態についても可能性を感じているという。

また、他のプロスポーツでは選手引退後のセカンドキャリアとして飲食店を経営するケースは多いが、卓球選手のセカンドキャリアについては未開拓分野だ。これまでは実業団で活躍した卓球選手がそのまま会社に残ってサラリーマンを続けるか、卓球メーカーへの就職や、自身で卓球場を経営する、プロコーチになるなどのセカンドキャリアが一般的だった。今後はTリーグ開幕により、各球団のスタッフやコーチのポジションは増えるがそれでもポストは限定的だ。

エー・ピーカンパニーの米山社長は「卓球選手の引退後についても安心いただきたい。塚田農場が守ります」とスポンサー発表会見を締めくくり、卓球選手引退後に塚田農場のスタッフとしての雇用やフランチャイズ経営を含めた様々なセカンドキャリアの可能性を示唆した。現役から引退後までのサポートを見据えた新たなアスリート支援の形が実現するかもしれない。今後も卓球選手とスポンサー企業の関係づくりに注目していきたい。

取材・文:川嶋弘文(ラリーズ編集長)
写真提供:FPC